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うざいくらい慎重すぎる暗殺者  作者: 総督琉
第一章『第Ⅵクラス落とし』
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第九話『偽りの宮園』

 転入初日、既に宮園潮は眼帯の罠にかかっていた。

 二日目にして、眼帯は宮園を利用して速水をある場所へ誘き出していた。


 場所は特級学園から車で三時間かけてようやくたどり着く場所。ここはかつて大都市と呼ばれるほど栄えていたが、十三日の金曜日、世界中で起きた暗殺事件に巻き込まれて滅んだ。

 速水は宮園と一緒に黒塗りの車に乗せられ、廃墟となった街へ来ていた。


「宮園、こんなところに人なんているの?」


「…………」


 宮園は黙秘を続けていた。

 速水は不審に思いつつも、深追いはしなかった。


「では、私についてきてください」


 とでも言うような背中に従い、宮園の後ろを歩く速水。二人の距離は一定に保たれている。不規則なペースの宮園に歩幅を合わせ、一定距離を意図的に保っている。

 既に速水は勘づいていた。宮園の不審さの理由、これから起こることについて。

 それでも速水は宮園の後ろをつけた。


 歩き続けること二十分、あるビルの中に入る。

 ガラス張りの壁はほとんどが割れ、床にはガラス片が散らばっている。

 二階は突き抜けになっており、二階へ続くエスカレーターはなぜか動いている。


「なぜここに?」


 もちろん宮園は答えない。

 黙秘し続ける宮園に我慢できなかったのか、拳銃を取り出し、宮園の後頭部に向ける。上半身だけが動き、下半身は軸を保って微動だにしない。

 宮園は声も出さず、突き抜けの二階部分から自分を隠すように立っている。


「こんなところで暗殺か? 一体誰を暗殺するつもりだ」


 宮園は答えない。

 これ以上の問答は無用。そう判断し、速水が引き金を引こうとした瞬間ーー


「作戦開始」


 その一声がかかった瞬間、突き抜けの二階から三人の暗殺者が一斉に姿を現した。

 一人は機関銃を担いだ大男、一人はナイフを複数装備し、一人は両手に短機関銃(サブマシンガン)を持っている。


 速水が一瞬の思考停止をしている刹那、全員の武器が速水へ向けられる。


「ーーまずいっ」


 宮園が三人の包囲を抜けた直後。

 響き渡る銃声、飛び散る弾丸、散らばる薬莢、投擲される短刀、視界を覆うほどの煙、充満する鉄のにおい。

 速水に集中砲火が浴びせられた。回避不能の奇襲攻撃。慎重である速水にとって、奇襲へ講じる術はない。


 全員が速水を撃ち取ったと確信し、一階へ飛び降りる。


「さて、死んでいるかの確認だけでもしねえとな。さすがにあの弾幕で生き残れるはずないが」


 大笑いをしつつ、機関銃を抱えながら死体へ近づく大男。その後ろでは二人の暗殺者が機嫌よく会話していた。


「お前らも手伝えよ。そこの女を拘束しとけ」


「はいはい。分かってますって」


 二人が宮園の確保に動く傍ら、大男は血まみれの死体に手を伸ばす。ーーが、そこで気付く。


「人形……!?」


 血のにおいはしない。人肌の温もりもない。その時点で大男は速水が生きていることに勘づき、二人へ伝えようと振り向いた。

 直後、額を撃ち抜く一発の銃弾。死に際、男は振り返っていたが、その光景を見て言葉も出なかった。


 宮園を捕らえようと向かったはずの二人は既に首を切られて死んでいた。

 そこに立つのは宮園潮。


「どういう……ことだ……っ!?」


 男は自分が見た光景を理解できなかった。

 二人の暗殺者は宮園では到底太刀打ちできない相手。だが事実、二人は殺された。


「冥土の土産に教えてやるよ。私、宮園潮は宮園潮ではない」


 変装が解けていく。

 肩まで伸びた金髪のかつらがずり落ち、黒髪が露となる。


「私は速水碧だよ」

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