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うざいくらい慎重すぎる暗殺者  作者: 総督琉
第四章『悪魔が目覚める日』
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第六十話『クラスメート』

 午後三時半。

 鬼灯は図書館を連れ、冬待の街に到着した。

 小型船を岸に止める。

 防犯カメラの映像を傍受し、空を飛んでいるヘリの映像は確認していたため、ヘリが向かっている方角を目指す。


 だが、鬼灯は足を止めた。

 彼の到来を待っていたかのように、立ち塞がる男がいた。


「久しぶりだな。鬼灯」


「お前は……眼帯」


 鬼灯の前に立ち塞がったのは眼帯だった。

 反射的に鬼灯は脅える。


「その男は誰だ」


 眼帯の視線は鬼灯の後ろに立つ図書館へ向けられる。

 全身を黒いローブで覆っているが、わずかに見える部分からは機械仕掛けの身体が分かる。


「お前こそ何だ」


 鬼灯がやけくそに返答する。

 眼帯はため息を吐き、鬼灯を見下すような目つきで見る。


「俺様はお前だけは生きていると思った。だからこうして迎えに来てやったんだ」


「私はまだあの事件のこと、根に持ってるからな」


「俺様が九期全員を殺したことか? だがお前は生きているだろ。いつまでも昔のことを気にするな」


「ふっざけるな。お前のせいで私の友達は……全員死んだんだぞ」


 鬼灯は怒鳴り、眼帯に殺意をぶつける。


「甘いんだよ。友達友達ってよ」


 眼帯は一歩一歩近づき、鋭い眼光で鬼灯を睨みつける。

 鬼灯は全身を震わし、足をすくめ、しりもちをついた。

 見上げる鬼灯を眼帯は見下し、髪を掴む。


「ここは暗殺学園だぞ。弱者は生き残れないそういう場所だ。お前みたいな奴はここにはいらないんだよ」


 眼帯はスタンガンを取り出し、鬼灯の額に当てる。


「これで死ななかったら生かしてやるよ」


「いや、いやああああああ」


「バイバイ。鬼灯」


 笑顔で言い残し、スタンガンのスイッチをオンにした。

 鬼灯の額には電流が駆け抜け、たちまち意識はシャットアウトした。

 魂が抜けた人形のようにガクッと地面に倒れる。


「さてと」


 眼帯は鬼灯の髪を掴んで転がし、図書館のもとまで歩み寄る。


「あなたはどうしますか?」


 眼帯はスタンガンを図書館の胸もとに当てる。


「大人しくついてくるのであれば手荒な真似はしません」


「分かりました。大人しく付き従いましょう」


「それでいい」


 図書館は逆らわない。

 無惨に倒れる鬼灯を見て、図書館は何を思っているのか。



 ♤



 午後四時。

 速水碧は宮園を旅館まで戻り、宮園の部屋まで送り届けると、速水は自分の部屋に一人で籠る。

 鏡に向き合い、自分の目を凝視する。


「速水碧、君はこれからどうしたい」

(私が願いを言ったとして、お前は私の願いを叶えてくれるのか)


「当然だ。あくまでも私は君の身体を貸してもらっている立場だ。もし君に反抗されれば身体の制御は不安定になる」

(時々あなたの記憶が私に流れてくる。確かにあなたは優しい人だ。でも、それ以上に残酷だ)


「私は暗殺者。願いは暗殺を利用して叶えてきた」

(私もそうだ。暗殺者だから、守りたい人のために暗殺をこなす)


「君は人を殺すことを悪だと思うか」

(悪だ。だから私は地獄で裁かれるだろう)


「では人を生かすことは必ずしも善か」

(それは──)


 扉がノックされる。


(出ていいよ)


 扉を開けると、外には白草が立っていた。

 彼女は十三期Bクラス担任だ。

 速水とはあまり接点はない。


(まともに話すのは初対面だ。あまり彼女の情報はない)


 速水の肉体が心の中で呟く。


「何か用ですか?」


「速水碧、私情に耳を傾ける気はありますか」


 速水は一呼吸置き、白草を凝視する。


「いいでしょう。では部屋の中へ入ってください」


 速水は白草を部屋へ案内し、即席で紅茶を淹れ、白草に差し出す。

 白草は紅茶も飲まず、今すぐ本題に入りたい様子だった。

 それを速水は察する。


「私情の内容は何ですか」


「暗殺学園九期生、その一人、眼帯。君は一度極秘に彼と戦っているね」


「はい」


「彼は九期生全員を暗殺し、九期たった一人の卒業生となった」


「なるほど。そうでしたか」


 速水はその話を斑鳩から聞いていたが、話を円滑に進ませるためにあえて知らないふりをした。


「だが私はある生徒を死亡扱いにし、極秘に他国へ逃がしていた」


「……その生徒とは誰ですか」


「鬼灯という生徒だ。そして今、鬼灯は眼帯によって囚われている。君には鬼灯を救いだしてほしい」


 速水は沈黙し、白草を見つめる。


「一つ教えてください。ただの生徒をそこまでして庇う理由が思い当たらない。あなたと鬼灯の関係は一体何ですか?」


 速水はそこに並々ならぬ秘密があることを感じていた。

 白草は躊躇うも、ゆっくりと口を開いた。


「鬼灯は──」


 白草は偽りなく答えた。


「──私の娘だ」

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