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うざいくらい慎重すぎる暗殺者  作者: 総督琉
第二章『VS第Ⅴクラス』
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第十八話『決着の先で』

 体力測定は終了した。

 赤羽は完全な敗北を喫した。

 暗殺の後処理をするべく、旧校舎に仕掛けたスナイパーライフルを回収していた。その足取りは重く、暗い表情だった。


「あれ……?」


 六つ目を回収し終えたところで、赤羽は気付く。

 最後のスナイパーライフルが仕掛けた場所から消えていることに。


「一体誰が……」


 赤羽は即座にとある女子生徒が犯人ではないかと疑う。

 推測はするが、彼女に接触することを拒む意思が自然と働く。

 どうすべきか悩んでいると、赤羽のいる三階の教室に足音が近づく。スナイパーライフルを扉に向かって構える。


 足音は扉の直前で止まる。


(気付いた? 透視能力じゃあるまいし、オレの動きを読むなんて……、読む!?)


 自分の行動を読める人物を赤羽は知っている。

 まさか、と思っていると、正体は口を開く。


「赤羽クロウ。あと六日残っているわけですが、策はありますか」


 予想通りの人物が接触してきた。扉一枚越しに伝わってくる彼女の殺気。

 スナイパーライフルにかけていた指が震える。


「あるさ。殺す策なら十分持ってる」


「あなたは見栄っ張りですね。それではいつまでも速水碧を殺せませんよ」


「お節介やいてくれるじゃん。お前の目的は何なの」


「速水を殺すこと。それが私の目的だ」


「オレの力を借りなきゃ駄目だったのかな」


「違いますよ。どうせあなたでも無理なことは分かっていました。ただ、今回は彼女とあなたにどれほどの差があるか分かってほしかったんですよ」


 普段の赤羽であれば腹を立てるだろう。しかし殺気に圧される赤羽には、そんな感情を抱く余裕もない。

 この場から一秒でも早く逃げたいと、心が叫んでいる。


「今回は、ってことはこれからもオレを利用するつもりか」


「はい。たとえあなたであっても、私のバックアップがあれば速水碧を殺すことは可能です」


「だから実力の差を分からせたかったわけか」


「察しがよくて助かります」


 彼女の殺気が少し弱まる。


「あなたが本気で速水碧を殺したければ、私が協力してあげましょうか?」


「……断る、なんてさせないくせに」


「はい。もし断ればあなたの全身に無数の風穴が空くでしょう」


「物騒だな。それは、最悪だ」


「どうしますか? 決めるのはあなたですよ」


 与えられた選択肢は二つ。一見そう見えるものの、実のところ赤羽が選べる道は決まっている。

 赤羽はスナイパーライフルの引き金から指を離す。


「分かった。お前の指示に従う」


「賢明な判断です」


 この結果に行き着くことは確定事項だった。


「では赤羽クロウ。私から助っ人を授けましょう」


「助っ人……?」



 ♤



 放課後、第Ⅵクラスの教室へぞろぞろと第Ⅴクラスの生徒が集結する。

 その光景を見ていた四人の特待Aクラス生徒。


「おいおい戦争でも始めるつもりか」

 氷夜は隣に侍らせた女子生徒とともにその光景を見つめ、今後の展開に冷や汗をかく。


「神々の大戦級に面白いこと起きないかな」

 神巫は期待に胸を膨らませ、これから起きることを待ち遠しく思う。


「どうせ全員死ぬんだから。無駄に戦っても意味ないのに」

 不死はすぐに視線を逸らし、眠りにつく。


「さて、始めてください。潰し合いを」

 鳳はその状況を望んでいた。だからこそ微笑みを浮かべる。


 第Ⅴクラスは八神を先頭に速水を囲む。

 八神に従う生徒は全員が暗殺者ではなく、一般生徒が多く混じっている。

 宮園は止めに入ろうとするが、円を組む生徒に阻まれる。


「八神だったか。何の用だ?」


 速水は冷静に問う。


「先生から許可が下った」


「何の?」


「第Ⅴクラスと第Ⅵクラスの潰し合い」


「つまり?」


「これから第Ⅴクラスと第Ⅵクラスで殺し合いを始める」


 宣戦布告だった。

 宮園は疑問に思う。ここにいる全ての生徒が暗殺者ではない。一般生徒も混じっている。

 なぜ八神がそのような発言をするのか、不思議だった。


「殺し合い?」


「言い出したのは俺じゃない。彼だよ」


 第Ⅴクラスの生徒の群衆をかき分け、彼が姿を現した。

 宮園はわずかに見えた彼の姿を見て、ただ驚いた。


「赤羽……!?」


 まるで第Ⅴクラスの仲間のように、赤羽クロウは八神の隣に立った。


「速水碧。オレがあんたを殺しに来た」

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