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福子さんの第二の人生  作者: つぐつぐ
9/18

「 」を会話文

( )を心の声で書いてます。

 ロナルド達が旅立ってから一月後、ショーンが帰って来た。

 御者席にいるショーンに大きなゲガはなさそうで、(疲れは溜まってそう…)胸をなでおろしてると、ふと目が合い、誇らしげな表情で親指を立てた。上手く行ったんだと嬉しくなり、私も親指を立て返す。

 それを見たショーンはニカッと笑い、そのまま工房へ帰って行った。


 この一月の間に、オババがデーツを冒険者や商人に売り込んで、今彼らの間で密かなブームになっている。

 旅の時の甘いものは、めったに食べられず、あって道中の木の実だけ、そんな中保存ができ、栄養豊富で甘くて美味しいデーツは、たちまち噂を呼び、わざわざこの街に買いに来る冒険者もいるくらいだ。(甘味は正義だよね)


 オババの予想以上に噂が広まり、人手も商品を作る時間も足りないので、ギルドを巻き込んで、干しデーツ職人が誕生し、ようやくオババの店も落ち着きを取り戻した。


 私はと言うと、オババが私の発言がきっかけだったと話したのか、お使いに行くと、前以上に話しかけられるようになった。


 中でも肉屋のニック(名付けのセンス…)は父親の店で修行中で、店に行くたび何かいいアイデアないのかと聞いてくる。(いや、5歳児に聞くことではないよね)


 なので肉屋のお使いはなるべく兄に押し付けてるが、今日は学校に行ってて、必然的に私一人でお使いに…、母に「一緒に行こう」と誘っても、一人で行けるでしょ?(ニコニコ笑ってるけど、早く行ってこいと幻聴が聞こえる……)


 店の中をそっと覗くと、ニックが居なかったので一安心。さっさと買い物終わらそうと店に入り、おじさんに頼まれた物を伝えて買い終わり、さぁ早く帰ろうと店を出た所で、


「おっ、フク見ーっけ!」

「……」

「なんだ、買い物帰りか?おれ、送っててやるよ」

「……いい」

「遠慮すんなよ、あぁ〜買い物終わったら、ちょっとオレの話聞いてくれよ」

「……やだ」

「そんな冷たい事言うなよ、オレとフクの仲じゃん」

「なかよくない」


「あー聞こえない、さぁ帰るぞ!」


 さっと荷物を人質に取られ、取り返そうと藻掻くも、頭上高くに掲げられた荷物に届かない…

 背の低さを呪い、肩を落としてニックの後を付いていく。途中、近所のおばちゃんに、

「あら、フクちゃんお兄ちゃん増えたわね〜」

 なんてからかわれたけど

「ちが……」

「そうなんすよ、オレとフク仲良しなんすよ、なっ、それより今日、パイソンのいいのが入ったんで、夕飯にオススメっすよ〜」


 否定する間を与えず、流れるように宣伝までしたニックは敵ながら天晴だ。

 もう反抗する気力もなく、されるがままに着いていく。

 家に帰り、母に出かけてくると伝えて、ニックに連れられ歩く。(ドナドナが頭の中を駆け巡る)

 近くの広場の木の下に座るとおもむろに、


「強引に連れてきて悪かったな。」

「うん(ほんとだよ)」


「…オババの店が繁盛して、街に人が増えて、どこの店も稼ぎ時なんだよな…けど肉屋は旅人には見向きもされやしない、そりゃあ、宿屋なんかに卸す分は増えたから、まるっきり恩恵を受けてないわけじゃないんだけどな…っとフクには難しいか」


「……うん(確かに直接はなぁ…)」

「そんな時、オババから今回のきっかけがお前だって聞いてさ、お前と話せばオレもいいアイデアが浮かぶかと思ってな…強引だったよな」

「……うん(かなり)」

「親父の店、売上は上がんねーし、店もボロくて修復もしなくちゃ行けないしよ、せっかく人の増えた好機を逃しちゃ行けねぇってあせってよ」

「……うん(気持ちはわからんでもない)」

「ここに来るまで、お前の気持ち二の次にしちまってたな…」

「……うん(反省して)」

「悪いと思ってんだけど、やっぱあきらめきれねぇから、なんかねぇか?」

「……え?」

(そこは悪かったからの解散の流れでは?)


 さっきまでのしおらしさは何処へやら、ほらこれ相談料と干し肉を渡され、呆気にとられてると


「なぁ、なんか浮かんだか?オババの時はどうだったんだ?」

「……」

「冒険者向けに何か考えてくれよ〜、なぁ〜」

「……」


 ニックの態度に腹が立って、無言で干し肉にかじりつく、


「オレが作った干し肉なんだぜ、どうだ?うまいだろ」

「……(獣くさい)」

「ん?うますぎて言葉もないか」


 やっぱオレって天才かも〜なんて自画自賛しているニックを余所目に、早く帰りたい一心で考える。

 肉屋といえばコロッケやメンチカツ揚げ物が思い浮かぶか、これは冒険者というより、主婦向けの商品な気がする。(食べたいけど)冒険者といえば、干し肉が思い浮かぶけど既にあるし、それにしても獣くさい、(地球のジャーキーはスパイシーでビールに最高だったよな〜)

 そうよ!これよ!


 バッと急に立ち上がった私に驚くニックを余所に


「ほしにく、ほかのあじは?」

「あ?」

「もっと、けものくさくないやつとか、ぴりりとするやつは」

「いや、干し肉の作り方なんてどれも同じだぜ?」

「じゃあ、あたらしくつくれば?」

「は?新しく作る…」


「ニックしかつくれないのはすごいことでしょ?」

「確かに…でもオレ一人じゃ…」

「じゃあ、いっしょにつくってくれるひとさがすの」

「いっしょに……」


 考え込むニックの横で、言われた通りアイデア出したし、このまま帰ったら駄目かなと割とゲスい事を考えてると、


「よし!いっちょやってみるか!言い出しっぺのお前も仲間に入れてやるから、明日の朝ここに集合な」

「なかまちがう」

「遠慮すんなって、それにフクのアイデアだしな」

「あいであ、だせって…」

「そうだけどよ、お前の思いつきだし、最後まで付き合ってくれよな、フクこのとおり」


 しばらく「やだ」、「頼む」の攻防が続いたが、ニックには勝てず、仲間入りが決定した。(どうしてこうなった)


読んでくださり、ありがとうございます。

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