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「 」を会話文
( )を心の声で書いてます。
いよいよ明日、ロナルド達が王都に出発する。
あれから二人に会いに行ってないし、私に出来る事もないけど、無事に王都に着けばいいと思う。
もどかしさを感じつつ、母とオババの店に買い物に行く。
オババの店は色んな商品を扱ってるから楽しい。
口は悪いけど、物知りでみんなに頼りにされてて、子ども好きなのか、買い物に行くと「また来たのかい」と憎まれ口を言いつつおまけをくれたりするから、オババはツンデレだと思う。
「「こんにちはー」」
広くない店の奥から足音がゆっくり近づいてきて、
オババが店内にやって来た。
「なんだい、お前さんたちかい…今日は何が必要なんだい」
母が商品を探す傍で、気になる商品を見ていく、オババお手製の軟膏や石鹸といった生活用品や、水飴や干し果物等のお菓子、見てるだけでも楽しいが(母さんにおねだりしたら買ってくれないかな〜)ふと、干し果物の一つが淡く光ってる。(優しい光に心地よさを感じる)
『鑑定』してみると、
『干しデーツ』 栄養価の高いデーツを干した物
(それだけかい…他にもっとこうないの?)スキルのポンコツさに落ち込んでると、オババが
「なんだい、何か気になるもんでもあるのかい」
「これ…なに?」
「あぁ…これは干しデーツだよ、気になるなら食べてみな…ほれお前さんも」
「オババ、ありがと」
「私まで?ありがとうございます」
もらったデーツのねっとりとした食感と砂糖並の甘さに目を丸くしてオババを見ると
「甘くておいしいだろう?」
「すごくあまくてびっくりした、おさとうたべたみたい」
「本当に砂糖を食べたみたいだわ……」
イタズラが成功したかのように笑って
「砂糖は使ってないよ」
「…信じられない」
「…こんなにあまいのに?」
「そうさ、それに甘いだけじゃなく、こいつは体にもいいのさ」
「おいしくて、からだにいいのすごいね」
「何で、今まで知らなかったのかしら…」
「見た目が良くないからなのか、知られてないからか売れ行きは今ひとつで…とお前さんらに言う事じゃないね…」
ふと、甘くて、栄養価も高く干し果物ならある程度日持ちもするなら、旅のお供にいいのでは?そうするとある程度の量は欲しいけど、それを母に頼むのは……こういう時、子供なのが辛いなぁ……
「欲しいなら、母ちゃんに頼みな、少しならまけてやるよ」
「フク欲しいの?おやつに少し買ってもいいわよ」
「………」
「何だい、言いたいことは、はっきり言いな」
「……すこしじゃなくて、たくさんほしい」
「たくさんは、駄目よ、また次の時に買ってあげるから今日は少しにしましょう」
オババが覗き込みながら
「何でたくさん欲しいんだい」
「あげたいひとがいるから……」
「誰にあげたいのさ?」
「…ショーンさんたち」
「どうしてだい?」
「あしたから、ばしゃでおうとにいくから…あまくてからだにいいならたびのおともにいいなって」
「…確かに干しデーツなら、持ち運びに日持ち、味も甘けりゃ栄養もある、旅のお供に最適だろうさ…何で今まで気づかなかったんだろうさ…」
ブツブツと独り言をつぶやき出したかと思うと、次の瞬間バッと私の肩をつかむと
「お前さんのおかげで、活路が見えたよ、その礼にここにあるデーツをやるから持ってきな。」
「…いいの?」
「そんな、いただけませんよ」
「あたしがいいって言ってるんだから持ってきな、それに悩みが一つなくなった報酬だと思っとくれ」
「……わかりました。それなら遠慮なく……フクもお礼ちゃんと言いなさい。」
「オババ、ありがとう」
「その変わり、ショーン達にしっかり宣伝しといとくれよ」
「オババのこと、ちゃんとせんでんしとくね」
「あたしじゃなくてデーツの事だよ」
買い物を終えた帰り道
「オババなんでデーツぜんぶくれたのかな?」
「報酬って言ってたけど、フクの優しさに絆されたのよきっと、でもこういう事はあり得ない事なの。頼めばもらえると思っちゃ駄目よ」
「うん、ごめんなさい、もういわない。」
「フクの優しい心はとっても素敵だけど、できない事もある事を覚えていてね」
「うん。おぼえとく」
母の優しさに心がぽかぽかしながら家に帰り、昼食を済ませ、オババからもらったデーツを手に病院へ一人向かう、既に退院してるかもしれないが、その時はショーンの工房に行って渡そうと計画し、病院に着いて中に入ると、タイミングよく先生が診察室から出て来たので、アリー達が病院にいるか聞くと、まだ入院していて部屋も同じですよと教えてくれてので、お礼言い、病室へ向かう。
ドアの前に立つと、急に緊張してきて震える手でノックして、入室の許可を待っていると、ガチャりとドアが開き、中からショーンが出てきた。
「あ?フクじゃねーか、どうしたんだ?」
「せんべつもってきた」
「お前だけか?」
「ひとりできた」
さっと廊下を見渡し、ショーンが中に入れてくれる。
「誰が来たんだ?」
「フクが一人餞別を持ってきたと」
「まぁ、一人で?」
ショーンの後から顔を出すと、この間より顔色が良くなったアリーとロナルドが部屋に備え付けの椅子に座って何か作業をしていた手を止め、
「それで、お前はなぜ餞別を?我らと関わりがないではないか」
「ロナルドそんな言い方…」
「…アリーさんとあかちゃん、しんぱいだったし、なにもできないけど…オババのみせで、デーツみつけてあまくてからだにいいから、ばしゃでたべるのにいいとおもってもってきた」
「「………」」
「干しデーツか!」
「ショーンさんしってるの?」
「子供の頃よく食べてたよ、ここいらじゃ見かけなかったが、オババの店にあったのか…」
「オババあんまりうれないから、ショーンさんたちにせんでんよろしくって」
はいこれとデーツを渡すと、袋から一つ取り出し懐かしそうに眺め、口に入れた。
「こりゃうめーや、」
「なんでたべちゃうの?ばしゃのなかでたべるぶんだよ」
「わりぃ、わりぃ、フクもオババもそんな事しないと思うが、万が一があるから先にな、悪いな…」
「…ううん。(毒殺の疑いかぁ…)…やさしいひかりが…」(心地よさを感じたし、実際良いものだったしなぁ〜)
「優しい光?このデーツが光って見えるのか?」
ロナルドが私の目をガッと凝視する迫力に飲まれ、思わず頷くと、
「そう言えば、アリーの時も光ってたと言っていたな…」
ジッと探る様に見つめられ、居心地悪く感じてると、急にふっと笑い
「お前、面白いな」
ニヤリと笑いながら、本来は体が耐えうるまでスキルや魔力は眠っていて、だいたい10歳を境に覚醒していくらしい。私の場合、半目開けて寝てる状態で、無意識に危険や安全を鑑定して光として見えていたと。
「まぁそのおかげで、アリーは助かったんだかな」
「……(むぅ)」
「優しい光が見えたデーツは安全のだろうな、憂いなく食べられるものは有り難い…」
「……ふくざつだけど、やくにたったならそれでいいや
」
「あぁ、十二分に役に立たぞ、無事亡命が叶った暁には、お前に褒美を渡しに来るとしよう」
「えぇ、私もフクにお礼を言いに来ますわ」
「ふたりともきをつけてね、ショーンさんも」
読んでくださり、ありがとうございます。