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「 」を会話文
( )を心の声で書いてます。
男の怒鳴り声に、思わずショーンの後ろに隠れ服を掴んで縮こまる。
「オマエこそいきなり何だ!、俺たちは倒れてた人なら運んだが、アリーなんてやつは知らん…知ってたとしてもオマエのような奴に言うわけ無いだろ!」
「貴様……黙って聞いてれば……」
殴り合いが始まりそうな、ピリピリとした雰囲気の中、
パンパンと手を叩き、
「お二方とも、ここは病院ですのでお静かに、それでも騒ぐと言うのならわかりますね?」
笑顔でこめかみをひくつかせる先生を見て固まる二人は、謝罪を口にすると借りてきた猫のように大人しくなった。
「…分かればよろしい、ショーンが運んてきた患者は
衰弱が激しく、一刻を争う状況でした。」
「そんな…アリーは…子どもは無事なのか?」
「貴方がお探しのアリーさんかは分かりませんが、幸い処置が間に合い母子ともに無事です。」
「…運ばれた女は黒髪で赤い石の腕輪をしてたか…」
「ええ、黒髪で赤い石の腕輪をつけた女性ですよ」
「そうか……」
フードの男が息を吐く音が辺りにに響く、
先生が患者の顔を見て確認してくれと、フードの男を病室に案内する後ろを、ショーンと二人付いていく。
処置室の簡素な寝台に寝ている女に近づくと、男は存在を確かめるように頬に触れ撫でる。
「この方は貴方がお探しのアリーさんで間違いありませんか?」
「あぁ…アリーだ。」
こちらに向き直ると、静かに頭を下げ
「……すまない、恩人に牙を向ける所だった。」
「いや、わかってくれりゃいいし、オレは運んだだけだしな、恩人って言うならこの子だぜ」
ひょいと私を、フード男の目の前に抱き上げた。
「お前も、疑って悪かったな、アリーを助けてくれて感謝する」
「ううん。みんながたすけたんだよ」
「おっ、いい事いうじゃねぇか、確かにみんなのおかげだな、なぁ先生」
「そうね、アリーさんも頑張ったから助かったのよ」
「そりゃそうだ」
「……そうだな、あなた達のおかげだ、改めて感謝を」
再度頭を下げた男のフードが外れ、燃え盛る炎のような赤髪と金の目をした、美丈夫の顔が表れた。
「オマエ……いや貴方様は…」
「すまないが、詮索しないでくれ」
「……わかりました。」
急にショーンがかしこまる空気の中、先生がアリーさんは二、三日の入院が必要な事を伝えると、男はそのまま付き添う事になり、これ以上私達が出来る事もないから、病院を後にする。
ショーンに抱えられたまま、帰路に着き、家に着く頃にはすっかり日が暮れていて、家の前にお怒りの母の姿が見え、腕の中でガクブルしてる私に変わって説明してくれ、説教は無事回避された。
ショーンと別れて、家の中に入ると兄に、「手に持ってる荷物何?」と聞かれ、荷物持ったままだった事に気づいたけど、もちろん今から外出が許される訳もなく、明日の予定が決まった。