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「 」を会話に
( )を心の声にしています。
「フク、具合はどうだ?」
学校から帰って来た兄が、心配そうな顔で私に聞いてくる。
「もうへーき」
ぼんやりする頭で、そう答えると兄は一安心したのか笑った。
「ならいいけど、まだ無理せず寝てろよな」
布団をかけ直し、頭を撫でると兄は、部屋を出て行く。
「はぁ……」
ベッドに寝ながら、思わず大きなため息がこぼれた。
転生あるあるの高熱で前世の記憶を呼び覚まし、混乱しながらも受け入れてると、カチャリと音をたててドアが開いた。
「フク、起きてる?」
優しい声でゆっくりと近づいてくる母の方へ顔を向ければ、そっと額に触れてくる。
「良かった。熱もだいぶ下がってる。」
安心したように、話す母の声に、なぜか前世の母の声が重なり、思わず涙が溢れ目の前の母に抱きついた。
「あらあら、もう5歳なのに、フクはまだまだ甘えん坊ね」
優しく笑いながら抱きしめてくれる母の肩に顔をうずめ心を落ち着かせる。
「大丈夫……大丈夫……」と背中を撫でてくれる腕の中でこの人は私の母だと、私は福子の記憶を持って生まれ変わったフクなんだとようやく受け入れられた。
母のおかげで、落ちつけた私は抱き着いて泣いた事が恥ずかしくなり、慌てて母から離れる。
「あら、もういいの?」
「……うん。もういい…」
小声で答えながら俯いていると、トタトタと軽やかな足音が近づいて、バタンと大きな音を立てて兄がやって来た。
「フクー!イチゴ採ってきたぞ」
かご一杯のイチゴを誇らしげに抱えた兄が入って来る。
「ルーク、ドアは静かに開けなさい」
母が居ることに気づいてなかったのか、兄は驚きながらも謝った。
「ごめん…母さん、フクに早く見せたくて…」
「気持ちはわかるけど、それとこれは別よ。次は気をつけなさいよ」
「……は〜い」
「返事は伸ばさない、大体あなたは普段から…………」
母と兄のやり取りを見ながら、今までのフクを思い出していく。
フクは両親と5つ離れた兄との4人家族の末っ子で、女の子だからか、家族の愛情をしっかり受けて育った甘えただった。抱きついたりもいつもの事だから、さっきの行動も変じゃない。(でも、徐々に甘えを減らさないとなぁ…)
そんな事を考えてると、兄が心配そうに覗き込んで来る。
「フクどうした?まだ辛いのか?」
「…つらくない……兄ちゃんフクにイチゴとってきてくれたの?」
「あぁ!フクはイチゴ好きだろう、いっぱい食べて早く元気になれよ…」
「兄ちゃんありがと」
兄の優しさが嬉しくて、ぎゅっと抱きつく。フクは甘えただなぁと笑いながら兄も抱きしめ返してくれる。そんな私達を微笑ましそうに、見つめながら母が言う。
「夜ごはんの時にイチゴ食べましょうね。フクも食べられそう?」
「うん。イチゴ食べる」
「じゃあ、お母さん夜ごはん作りに行くわ。ルーク手伝ってちょうだい」
「……わかった」
不貞腐れながら兄が母と共に部屋から出ていく。
ベッドに横たわって家族の事やこれからの事を考えてるといつの間にか眠りに落ちていった…
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