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「 」を会話文
( )を心の声で書いてます。
誤字脱字のご指摘があったので、修正しました。ご指摘くださりありがとうございます。
宝くじで大金を手に入れた人が、隠そうとしてバレてしまう話を、何で上手く誤魔化さないのか、私ならバレないように上手くやれるのにと思っていたけど、前言撤回…金貨一枚で無理だわ。
そんな事無いと分かっているのに、すれ違う人が金貨を持ってる事を知ってるんじゃないかと、疑いの目で見てしまう。
早足に、時々周りを確認しつつ家に帰り、挨拶もそこそこに寝室に駆け込みベットの下に金貨を隠し、一息つく。
神経をすり減らしていたのか、布団に入ったと思ったら気付けば朝だった。
母から頼まれたおつかいに行き、道中手元に金貨がない安心感に、このまましばらく隠してから返そうかなとも思ったけど、留守中に盗まれたり、母が掃除をした時に気付かれる可能性に気付き、隠しておくのは辞めよう。どうしたものかと途方に暮れながら、何気なく目に留まった足元の石を拾い、これなら気にせず持ち運べるのになぁと考えてると、
「あら、フクちゃんこんにちは」
「…あ、ロミさんこんにちは」
「何してるの?」と手元を覗き込むロミに、これくらいの大きさの物を持ち歩くにはどうすればいいのか悩んでると打ちあけると、石を手に取ると、この大きさならいいのがあるからついてきてと、ロミの働く服屋に連れてかれた。
店に入ると、ちょっと待っててねと裏に引っ込む。お客さんの邪魔にならないように隅っこで待ってると、ロミが戻って来て「これはどう?」と私の握りこぶし位の小さな巾着を手渡してくれた。
綺麗な青色の布で作られた巾着は欲しいけど、お金ないから買えないよと呟くと、これは裁断を失敗した物で売り物じゃないから遠慮せず貰ってとロミがくれたので、お礼を言って店を出る。
母に巾着を貰った事を伝え、首にかけられるように紐を長くしてもらって、金貨を入れれば、肌見離さず持ち運ぶ準備も万端だ。
隣街へ行く日は、いつもより早起きして、乗合馬車の停留所に向かう。朝が早いせいか、人はまばらで隣街へ行く人達はうちの家族を除くと若夫婦だけだった。
父が御者の人にお金を払い乗り込む。馬車の中は木箱が積まれてるスペースと、人が座るスペースに別れていて、人が座るスペースが思ったより狭い。思わず顔をしかめると父が、朝一の荷運びがあるから狭いんだと言いながら、よっこいせと私を膝の上に座らせる。一人で座れるから降ろしてと父に訴えても、揺れてお尻痛くなるから父さんの膝に座っとけと却下され、そうこうしてると、御者の出発しますの掛け声と共に動き出す。二時間程馬車に揺られ隣街に到着した。
降りる頃には、兄も私もグッタリで、出来れば二度と乗りたくない。そんな私達に、今日の御者は運転が上手で揺れは少ない方だったぞと父が教えてくれるが、出来れば知りたくなかった。(誰かゴムとスプリングの開発を早急に頼む……)
隣街を探検したいが、まずは目的地の教会に向かう。隣街の教会は街の中心地の一番大きい建物で、城のような外観に、思わずポカンと見渡してると名前を呼ばれ慌てて着いていく。中も豪華絢爛で(もはやお城やん)椅子の装飾一つとっても繊細で触れるのを躊躇ってしまう。装飾に触れないように縮こまりながら父達の後を着いていく。
兄が司祭様に連れられ別室に案内されるのを見送り、三人で壁画や燭台等の装飾を見て回る。きれいだねと言いあいながら過ごしてると、勢いよく扉が開き、騎士の格好をした人達が入ってきたと思ったら、
「只今より、ルーベンス・ロッリ様の魔力開放の儀式を行う。よってここに居る者達は、直ちにこの場から立ち去れ」
騎士達が教会に居る人達を追い出していく、私達の所にも来て、直ちに立ち去れと捲し立てられ、なすがままに追い出された。
「ルークは大丈夫かしら…」顔を青ざめながら呟く母を宥める父と教会の門の外で待っていると、騎士に連れられ十数人がやって来た。半ば強引に門から押し出すと、騎士は門を閉じ教会の中へと戻って行った。
「あっ、とうさん、かあさん。にいちゃんあそこにいる」
「ルーク…ぶじでよかった」
「にいちゃーん」
「フク!、父さんも母さんも!」
「何事もなくて、よかった」
「なかなか来なくて心配したのよ。まだ胸がドキドキしてるわ」
父と母が兄の無事を確かめ合ってる横で兄に、中で何があったのか尋ねると、案内された部屋で待ってると急に騎士が入って来て、ルーベンス様が儀式をなされるから、お前達は出ていけと、部屋を追い出され門まで連行される途中、ルーベンスご本人様とすれ違ったから通り過ぎるのを頭を下げて待ってたんだよと、何それおかしいと地団駄踏んでると父に抱き上げられ、ここから離れようと歩き出す。
気まずい空気が漂う中、空気を読まない私のお腹が鳴ったせいで、誰ともなくご飯にしようかと言い出し、近くにあった食堂に入った。
昼前なのに食堂は混んでいたが、ちらほらと空いてる席もありすぐに座る事が出来た。
メニューは1種類のみで、肉の塩焼だった。父が大盛りを頼み、母と兄は普通で、私は父と一緒。
料理を待つ間に気になってた事を聞いてみる。
「とうさん、にいちゃんは、きぞくさまがおわってからぎしきするの?」
「う〜ん、今日はもう誰も出来ない」
「なんで?」
「何それ?どういう事?」
「貴族の方々は我々と同列に扱われる事を嫌がるから、貴族が儀式をする日は、同じ教会で我々は儀式を受けられない」
「えー、何だよそれ……」
「へんなきまり」
「…ほんとだよ…」
「理不尽だけど、こればかりは仕方ない。今日は運がなかったと諦めるしかないなぁ…」
「おまちどうさま、これお嬢ちゃんのお皿にどうぞ〜」
「まぁ、ありがとうごさいます、ほらフクもお礼」
「おねぇちゃん、ありがと」
「いいえ〜どういたしまして、ごゆっくり〜」
持って来たお皿には、こんがりきつね色に焼かれた、一枚肉に(見た目はトリの肉)付け合せのじゃがいも、コンソメスープに硬いパンが母と兄には一つ、父のには二つ。
美味しそうな匂いに、一旦おしゃべりは終了して、父が切り分けてくれた肉を食べる。皮はパリパリで肉はしっとりしていて美味しい、この店は当たりだ。「このお肉美味しいねぇ」とパクパク食べ進める。
この世界のお肉は肉自体の味がしっかりしてるので、塩だけの味付けで食べごたえはあるが、贅沢を言うなら照り焼きや、生姜焼き、焼肉のたれとか食べたい……。誰か作ってくれないかなぁ……(あるあるだと極東とかジパングの国や地域で扱ってて販路を広げる為に国を越えて売りに来てくれるんだけどなぁ……)
現実逃避のついでに、神様へ。
美味しいご飯のおかげで少し気分が回復したけど、兄ちゃん達を乱暴に追い出したの許せないから、今日儀式を受ける、顔も知らないお貴族様の魔力やスキルが残念でありますように、願っておきますね。
読んでくださり、ありがとうございます。