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福子さんの第二の人生  作者: つぐつぐ
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「 」を会話文

( )を心の声で書いてます。

 栗料理は広める事なく、自分たちだけで楽しむ事になった。栗以外にも時々嫌がらせが送られてくるが、正直役に立つものばかりで驚いた。

 ヘチマやアロエ、アボカド…こんな役に立つものばかり贈って、本当に家族は嫌がらせなのつもりで贈ってるのかワットに聞くと、間違いなく嫌がらせだと声を大にして力説されたので、この世界では有効活用されてないみたいだ。


 ならば活用しなきゃ損だと、ヘチマたわしの作り方を検索し(自然乾燥が一番楽そう)アロエは庭の片隅に植えて、アボカドは実と皮からオイルが採れる事が分かったので、実は美味しく食べて皮をオイルにした。ワットから好きにしていいと言われ、今や広い庭はそこらかしこに植物(実のなるやつ)を植え、家の一室が実験室に様変わりした。


 ワットに時間を進める魔法を植物にかけてもらいながら、今さらすぎるがここまで勝手してよかったのか尋ねると、「この家は自分の持ち物だからいいんだよ」と、楽しくてしょうがない子どものように目をキラキラさせ、つぎの嫌がらせの贈り物が楽しみだと笑うワットに同意し、庭を手入れしていく。


 母のお使いを終え、今日もワットの家に向かっていると途中馬車とすれ違った。もしかして荷物が届いたのかと、急いで向かうとちょうど家に荷物を運ぶワットの姿が見えた。

 向こうも気づいてくれたのか、荷物を置いて手を振ってくれる。「フク、ナイスタイミングだ」


 ハァハァ言いながら近づき、何をくれたのか尋ねると、まだ見てないけど、楽しみだなと荷物を抱え直し家に入って行く。その後に続いて家に入り、実験室に運び入れた荷物をいそいそと開けていく、


「あ…今回は珍しくまともだ…」

 少しがっかりしながら、中身を取り出して手渡してくれる。

「これなに?」

「これはシアの実だよ。ほんのり甘い果物だな、お貴族様は食べないけど、庶民には普通に流通してる」

「ふ~ん」

「ちぇっ、どんな嫌がらせか楽しみにしてたのに…」

 樽二つ分のシアの実を見つめながら、ニック達にやるかぁ…フクも持って帰れよと分けてくれる。

 初めて見る、すももくらいの大きさの緑の実を手に乗せ、鑑定してみると、ワットが言った通り、実はほんのり甘く、種はシアバターの原料で食用油や保湿に優れてるので化粧品の材料になると…。(シアバターってお高いボディクリームに配合してるやつだ)


「ねぇ、たねはどうするの?」

「ん?捨てるな」

「すてるの?」

「そうだが?」

「たねのなかみはとらないの?」

「聞いた事ないな…種からなんか取れるのか?」


 大きく何度も頷くと、それはどういう物だと聞かれ、食用油や化粧品の材料になると教えると、どうやって作るんだと、目を閉じ、思い出すフリをしながら検索してワットに伝えていく。


 種を天日で乾燥させ、乾燥した種を炒る。

 炒った種を砕き、ペースト状にしたら、水を加えてホイップ状にする。

 そして、水を蒸発させ、ろ過して冷ます。


(結構めんどいのね…だから高いのか)作り方を教えると、早速作ろうと、シアの実から種を取り出していく、今日のおやつが決定した。


 実を取り出す手が止まらないので、最初だから少量で作ろうと説得し作っていく、魔法で乾燥の時間を短縮し、作り上げていく。現物を見た事がないので、出来上がった物が成功なのか鑑定してみると、ちゃんとシアバターと名称がでたので成功したみたい。


 二人、手に取り塗ってみても、もともと潤ってる幼女と、オイリー肌で悩む年頃の青年…。どちらも保湿が必須じゃない。とりあえず出来上がった物を分けてもらい、お互い使ってみることにして、今日の実験は終了。

 お土産のシアの実を手に(種は捨てずに回収する事を約束し)家路についてると、前方に兄の姿が見えた。


「にいちゃ〜ん」と駆け寄ると、立ち止まってくれ、私の荷物に気づくと、スッと持ってくれる。(さすが兄ちゃん)


「どうしたんだこれ?」

「ワットさんがくれたの」

「ヘェ~、最近はワットさんと遊んでるのか?」

「あそんでないよ、おてつだいしてるの」

「ふ~ん、ほんとかぁ?」

「ほんとだからね」

「はいはい」


 ほらと手をつなぎ、歩きだす。こうやって兄と帰るのも久しぶりで、つい足取りがはずむ。何笑ってんだよと揶揄われながら、兄と帰るの久しぶりだなと思ったと答えると、そうだなと、最近は魔法の基礎を勉強したり、これから街の外へ出る事も増えるから、こうやって帰るのも少なくなるな、なんて言うから、少し淋しくなった。


 母にシアの実を渡し、種は捨てないでとお願いし、持ち帰ったシアバターを寝る前にこっそり塗ってたら、母にばれたので、母にも塗ってもらったら、効果的面だったみたいで、どこでもらったのかしつこく聞かれ、ワットにもらったと教えると、よろしく伝えてねと手土産付きで見送られた。(いつも以上ににこやかな母さんだった)


 ワットに手土産とシアの種を渡し、母にばれた事を謝ると、「気にすんな、それよりどうだった」と聞かれたので、すっごく気にいってて、持ち帰った分は母の物になってる事を伝えると、ガッツポーズで喜んでいた。


「なぁフク、今まで作ったやつ登録していいか?」

「とうろく?」

「登録すると、レシピになって作りたいやつが作り方を買うんだ」

「ふ~ん」(特許みたいなもんか)

「それを、俺とフクの名前で出したいんだ」

「わたしも?」

「フクがいなけりゃ出来なかったからな」


 照れくさそうに鼻の頭をを掻きながらも、いいだろと同意を求めてくるワットに、困る事もないし、いいよと頷くと、「ありがとな」とニカッと笑って自室に戻ると、鞄を手に持ち「じゃあ、行くか」と抱き上げ、ギルドに向かった。


 そこからはあっと言う間に、手続きを終え(こんな、あっさりでいいの)この年でレシピ持ちになった。

 なんでこんなスムーズなのか尋ねると、親子で取る場合もあって、子供でもレシピ持ちはちらほらいるらしい。


 何にせよ登録されたので、レシピを買ってくれる人が現れる事を願う。私としては母の分が確保出来ればそれでいい。ワットも今は商売出来る立場じゃないので庭の植物を世話し、自分達が処理出来る分だけ作る。レシピがどれだけ売れたのかは分からないが、この間工房へ行った時、ショーンから王都ではフラワーボックスとシアバターが女性への贈り物で人気なんだぜと教えてくれ、レシピ広まってるんだと嬉しくなった。


 そんな平穏に過ぎていく朝、起きてきた兄の声が、別人になっていた。

読んでくださり、ありがとうございます。

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