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福子さんの第二の人生  作者: つぐつぐ
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「 」を会話文

( )を心の声で書いてます。

 ロミは別れた翌日に、商売になると確信したのか店の人を引き連れ、親方に事業提携を持ちかけると工房の一角を作業場にしてしまい、なおかつ今度の王都への荷運びの滞在を延ばして、売り込みをかけようと商品を量産しているが、普段の仕事の合間や休みを返上して作業していて思うように作業が進まないと、ショーンから話を聞いてつい、限定生産にすればいいのにと呟けば、すっと抱えられ気づけば殺気立った空気を纏ったロミ達の目の前に降ろされた。


 重々しい空気に耐えながら、限定販売にして特別感を出したり、見本作って受注販売にしたらとアドバイスすると、血走った目に涙を浮かべ、熱い抱擁をされ窒息一歩手前を経験するはめになった。(二度とごめんだ……)

 説明もしたし、後はお任せしたはずなのに、ほぼ毎日相談と言う拉致で工房へお邪魔している。

 特に何をするでもなくただ居るだけでいいと言われても、申し訳なくてせめて出来る事をと、木くずやごみを片付けてたら、いつの間にか私でも扱いやすい箒を親方が用意していた。(いつから私は工房へ勤め出したっけ?)

 なんだかんだで王都への荷詰めも終わり、王都へ向かうショーン達を、親方と見送ると、「しばらくあいつらはいねぇが、好きな時に来いよ」と頭を撫でながら言われた。


(このままフェードアウトでいいんだけど)

 親方の寂しそうな顔を見たら行かない訳にもなぁ…と、週に一回遊び?に行くルーティンが出来てしまった。


 拉致られる日々も終わり、ようやく平穏な日々を取り戻し、何も考えず散歩に出かけると、いつの間にか街外れまで来ていた。(ありゃ、いつの間にかこんなとこまで来てた)

 この先はワットの家があるくらいだし、引き返して広場で日向ぼっこでもしようかと考えながら歩いてると、仕立てのいい馬車がワットの家の前に止まってるのが見えた。身を隠しながら近づくと、ワットと仕立てのいいタキシードのような服を着た、いかにも執事の雰囲気のおじさまが話し込んでいた。

(セバスチャンって感じのイケオジだわ)


「………こちら奥様からです」

「確かに受け取りました」

「次回のご要望はございますか」

「いえ、特にないです」

「…左様でございますか、では私はこれで」


 そう言うと、足早に馬車に乗り込み走り去って行った。

「けっ、毎度嫌がらせご苦労さん」睨みつけながら悪態をつくワットが私に気づいたのか「あ…見てたのか」とバツが悪そうに声をかけてきたので、ごめん見ちゃったと謝ると変なもん見せて悪かったなと謝られた。


「さっきの人…」

「あぁ本邸の執事だよ。俺……実は、良いとこの坊っちゃんなんだぜ」

「そうなの?」

「そうなんだ。けど妾の子だから奥様達に嫌われてる。けど、スペアとしての存在意義はあるみたいで、ここで飼い殺しにされてんだよ、さっきの奴は奥様からの施しを持って来るんだ」


 なんてフクには難しい話だよな〜とおちゃらけてるけど、どこが寂しそうな声に、かける言葉が見つからなくて頷く事しか出来なかった。


「貴族の世界なんて関わらない方がいいさ、今回だって、あいつらから施しのゴミを押し付けられたんだぜ」

 ほらこんな大量にと荷物見せてもらうと、どう見てもイガ栗にしか見えない。鑑定してみても食用の栗で、なかなかに品質もいいみたい(ブランド栗だ)

 これがなんでゴミなのか聞くと、トゲや厚い皮を剥くのが大変な割にえぐ味があるし、虫がいたり腹を壊す事もあるから、よっぽどの事がない限り食べる人は居ないらしい。


 生で美味しくないなら焼いたりしないのか聞くと、焼くと弾け飛ぶから危ないんだぞと注意された。

(そりゃ切込み入れずに焼けば弾けるよ…虫も水につけると大体分かるんだけどなぁ)


 栗が好きで秋になると生栗買って料理してたから、下処理は分かるけど、今の私じゃそれを伝えるツテがないのがもどかしい。好物を目の前に悶々としてると、


「まさかフクはこいつの食べ方知ってるのか?」との問いかけに思わず「しってる」と答えてしまい、慌てて知らないと言うより先に、「ヘェ~」とニヤリと笑ったかと思うと、じゃあ教えてくれと手を引き家の中に連れ込まわれた。


 突然家の中に連れ込まわれあわあわしてると、

「なぁ、フクはどこでそんな事知ったんだ?」

「……」

「言えないか」

「……うん(言えないし、言っても信じない)」

「俺、言いふらしたりしないぞ」

「…でも…」

「信じられないなら、俺の秘密を教えてやる」

「…ほんとにいわない?」


 真剣な眼差しに、からかいや嘘は感じられないから信じてみてもいいのかもしれないけど、転生とかはさすがに言えない。


「ないしょね、ゆめでしったの」

「夢…?」

「うん、ほしにくもゆめでみた」

「まじで?」

「そうだよ」

「まじで……まじかよ…」


 口をあけたまま固まるワットに、夢はさすがに通用しないかと肩を落としていると、ずいっと顔を寄せ「すげぇよ、オマエ」と肩をバシバシ叩かれた。

 わしゃわしゃと頭を撫でたと思えば、はっと真顔になり、「夢の事は周りに話したりするなよ」フクを狙うやつが出てくるかもしれないからなと忠告を受けた。


あっさり信じてくれた事に拍子抜けしながらも、よかったと胸を撫で下ろしていると、夢でみた知識を教えてくれと懇願され、栗の下処理を教える。

 栗の表面に穴があるやつをはじき、軽く洗い水につけて一晩置いて、浮いてきた栗は虫がいる可能性があるのではじく事を教えると、魔法で時間を進め、あっと言う間に下処理が終わった。

 作業中に、俺の秘密は時間を操る事が出来ることだな、ばれると家を継がなきゃならなくなるので、黙っといてくれと世間話をするように教えてくれた。

 

誰にも言う気もないけど、秘密をそんな簡単に暴露しちゃだめだよと怒っても、フクの秘密を知ったからお相子だし、また夢で得た知識を教えてもらうためなら安いもんだと軽くあしらわれた。


 下処理をした栗のいくつかに切り込みを入れてから焼き栗を作る。始めは栗が弾けるとおっかなびっくりなワットだったけど、切り込みを入れると大丈夫なこ事に気づいてからは前のめりに栗が焼ける所を見ていた。


 出来上がった焼き栗は切れ込みのおかげで剥きやすく、食感もホクホクして甘みもあり、記憶と変わらぬ味に泣きそうになりながら味わった。

 ワットも口にあったのか、試作品を黙々と食べ進めていた。


「おいしいね」と思わず口に出せば、こんなに上手かったのかとしみじみ呟き食べていく。


 つい調子に乗って、甘露煮やマロングラッセの作り方も教えると魔法を駆使してあっと言う間に完成させた。

 結構な量があった栗もワットのおかげで、次々処理し、嫌がらせで送られた栗は美味しいおやつになり、ホクホク顔をしたワットにこれでもかと感謝された。


「また夢見たら教えてくれ」の言葉とお土産をもらい、帰路につく。

 お土産を渡すと、みんな訝しげに見ていたが、食べてもらうと「美味しい」と喜んでくれた。



読んでくださり、ありがとうございます。

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