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福子さんの第二の人生  作者: つぐつぐ
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「 」を会話文

( )を心の声で書いてます。

「よりによって、ここかよ…」

 店の前で立ちすくむ青年と、青年に抱っこされてる幼女の組み合わせに、通行人から白い目を向けらても、一歩が踏み出さない。

 ショーンいわく、ここは女性の洋服と下着を取り扱っている店だから俺には敷居が高い。

 確かに店内を覗くと女性がほとんどで、男性は母親に連れられた私より小さな男の子が居るくらい。


「フク、別の店にしないか…」耳をぺしょりと倒し、居たたまれなさそうに囁く。

 その姿が、可哀想で「いいよ」と同意し別の店に向かっていると、


「あら!また会ったわね」

「あ、おねえさん」

 前方から洋品店のお姉さんが歩いて来た。ショーンと私を見てふんわり笑うと「お兄さんとお出掛け?」と尋ねてきた。リボン買いに行く所だと言うと、うちの店に…と言いかけて、チラリとショーンを見て、男性は入りにくいですよねと苦笑しながら話す。


「いえ、俺は大丈夫なんすが、こいつが気を使ったのか別の店にしようって…」

「えっ…(いやあんたが敷居が高いって言うたやん)」


「そうなんですか?うちの店、男性も入店出来ますから気にされないならぜひ」

「は、はい、行きます」

「……」


 フクも変な気使わなくていいんだぜ〜、なんて小突きながら笑うショーンを、冷ややかに見つめていると、

「あなたフクちゃんってお名前なのね、私はロミよ、よろしくね」

 フフッと笑って手を差し出したので、握手しようとすると、それより早くショーンが彼女の手を握り「俺ショーンって言います」

 耳をピンと立て頬を染めながら、ロミと話すショーンを、ジト目で睨み、(いや、ロミさんおっとり美人だかな〜、わかりやす……)店に戻る。


「いらっしゃいませ〜」の声と共に店内に入ると、店内に居た人達に一瞥されだけで何もなく、ショーンも肩の力が抜けたのか、ロミの案内に足取り軽くついて行く、色とりどりの洋服と小物が並べられ、衝立で隠された一角もあり(あそこが下着売り場だな)ちょうど衝立の反対側の棚にリボンが並べられていた。


「ここに置いてある以外に裏にあるので取って来ますね〜」ごゆっくり〜と店の裏に行くロミを、デレデレ顔で見送るショーンの肩を叩き、床に降ろしてもらいリボンを見ていく。


 ショーンからの贈り物なので、どんな色を送りたいのか聞くと、顔に手を当て唸りながら、「分からん」とフクは何色がいいと思うかと逆に問われ、(赤は恋人へ送るイメージが強いし、ピンクも可愛いけど変に誤解を与えそうで怖いしな~)なんとなく、暖色が似合いそうだからオレンジはどうかと提案してみる。


「いいな」と同意され、オレンジのリボンを探していく。これなんかどうだ?と手渡されたリボンは、黄色味が強いオレンジで、私が思う色ではない。でもショーンからの贈り物だから、これにしようと決め、ロミが戻って来るのを待ってると、「お待たせしました」と両手で箱を抱え足早に戻って来た。


 手に持ってるリボンに気づくと「あら?もう決まっちゃいました?」と少し残念そうに呟くも、「こちらは先週買付たばかりの新作だから、見るだけでも…」と勧めてくれ、箱を覗くとこちらは寒色系が多く、あまりピンとくる色のリボンはなかった。


 選んだリボンの必要な長さを伝え、値段を確認すると許容範囲だったのかスムーズに買い物が進む。結構な長さを買うので、何を作るのか聞かれ、ショーンが「これだよ」とポケットから切れ端で作ったバラを(持ち歩いてたの?)ロミの手に乗せると、目を瞬かせて、「えっ?これ…この前あげた切れ端で?」くるくると様々な角度から観察し、「これ…どうやって作るんですか?」ショーンに詰め寄ると矢継ぎ早に質問していく、あまりの勢いにたじたじになりながら答えるが、二人のやり取りが周りから注目を浴びてる事に気づいたショーンが、ロミの両肩を掴むと、


「少し落ち着いてくれ」

「あっ…ごめんなさい、私ったら興奮しちゃって…お客様に対して失礼な態度だったわ…」

 うなだれるロミに

「そんなに気になるなら教えるぞ」

「えっ…」

「知りたくないのか?あんな勢いで聞いてきて」

「…いやでも…」

「俺も職人の端くれだから、知りたい気持ちはわかるしな」

「ショーンさん…」


(いい感じのとこ悪いけど、アイデア出したの私やから、許可出すの私と違う?まぁ目立ちたくないし、構わんけどさ〜)見つめ合う二人を横目に無の境地で佇んでると、周りの視線に気づいた二人がさっと離れ、ロミが頬を染めながら、「こちらへ」と会計の所へ誘導し、尾を揺らしながらついて行く、その後に着いていく(こりゃ、私の存在忘れてるな)会計が終わったショーンのズボンを引っ張ると「あっ」と目を見張り、バツが悪そうに頬を掻きながら謝った。


 店を出てロミを待っていると、眉をハの字に下げ、耳をぺしょりとつけたショーンが、勝手に決めて悪かったと申し訳無さそうに謝ってくるので、教えるのも構わないし、何なら考えついたのもショーンで構わないよと言うと、「それは駄目だ」「いいのに」と軽く言い合いしてると、「おまたせしました」と小走りでかけ寄って来た。

「じゃあ行くか」と私をひょいと抱き上げ、ロミを工房へ案内する。

 工房へ到着し、扉の前で「ここって…」と呟くロミの声をかき消す勢いで、「親方、戻りました」と扉を開き、さぁどうぞとロミを中に案内する。


 奥から、「おめぇら遅い」と声を荒げながら親方がこちらに近づいてくると


「お父さん」

「あ、なんでお前がここに居るんだ?」

「「え?」」

「あ、あの…お父さんって…」

「あぁ、この人私の父親なんです。父は皆さんにご迷惑かけてませんか?」

「おい、ロミっ」

「いや、いや、いや…むしろ迷惑かけてるの俺たちの方だしよ…」

「ロミ!オメェ余計な事言うな、そもそも何しに来たんだ」

「これの作り方教えてもらいに来たのよ」


 バックからバラを取出し親方に渡す。それを手に取り、じっくり眺め、ポツリと「あいつらがこそこそやってるのはこれか」と呟き、ロミにバラを返すと「フンッ、さっさと教わって、帰れよ」と言い残し、奥に引っ込む。


「親方、ロミさんにもあんな感じなん、すか?」

「えぇ、大体あんな感じですね。口は悪いけど優しいところもあるんですよ」

「親方の口の悪さは照れ隠しだって、ここのやつらはみんな知ってるよ」


 二人顔を見合わせ、こっちだと作業場に連れていく。


「じゃあ、一緒に作ってみるか」と説明しながら作っていく、手順も簡単だし飲み込みが早いのかすぐにコツを覚え作っていく、(なんならショーンより上手だ)


「こんなに簡単な工程で、ここまで華やかになるなんて…色の組み合わせも……」花を手に取り独り言を言ってたかと思えば、ショーンの手を取り、

「これ、うちの店で売り出しません?いえ是非とも取り扱わせてください、お願いします」


「あー、俺の一存「いいけど、まだだめ」じゃ…」

「…おいフク、何言ってんだ」

「これだいじなひとへのおくりものだから、わたしてからならいいよ」

「贈り物…」

「あぁ…王都に住む大切な方々への出産祝いなんだ…」


 再来月に王都へ行くからそれ以降なら、販売も構わないぜ、お許しも出たしな、こちらをチラ見してロミに許可を出すと、顔を紅潮させ感謝を伝えると慌ただしく店に戻って行った。


「……俺等も作業に戻るか」

「うん…」


 数日かけて贈り物を完成させ、やっとお役御免だと内心喜んでいたが、ショーンとロミの二人に相談と言う名目で度々拉致られるとは思ってもみなかった。




読んでくださり、ありがとうございます。

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