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福子さんの第二の人生  作者: つぐつぐ
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「 」を会話文

( )を心の声で書いてます。

 昨日はやりすぎた。5歳の子供が、あんなの出来る訳がないやん。

 今まではちょっと助言的な事を言うだけだったのに、やらかした…浮かれてた自覚はある。もっと慎重に行動すべきだった……。ショーンも興奮してたから昨日は気づかなかっただけで、一晩経てばおかしいって気づいたに違いない。

 行きたくないよぅ…、絶対変な目で見られるよ…。トボトボと足取り重く歩いていると、人にぶつかってしまった。


「あら?」

 頭上の声に顔を上げると、昨日ぶつかったお姉さんが立っていた。


「昨日の子よね?フフッ、今日もぶつかっちゃったわね」

「あ…ごめんなさい。まえみてなかった、」

「どうしたの?何だか元気がなさそうに見えるわ、私あそこの洋品店で働いてるから少し休んでいく?」

「ううん、だいじょうぶ。しんぱいしてくれて、ありがとう。」

「そう?いつでも来ていいからね」

「ありがとう」


 手を振って店に戻って行く彼女を見送り、工房へ向かう。扉の前に立ち、頬を叩いて気合を入れ、いざ行かんと、扉に手をかけようとする前に扉が開き、親方がさっさと入れと呆れ顔で促した。


 見られてた恥ずかしさに内心身悶えながら、中に入ると、工房の作業場の一角が整理されてて、子供用の椅子が置かれていた。

 ひょいと抱きかかえて子供用の椅子に座らせると、「もうちっとしたら、あいつもかえってくるから、ここで待っとけ」と言い残し、工房の奥へ引っ込んで行った。

 誰も居ない部屋で、手持ち無沙汰に待ってると、


「もどりましたー!」と袋を抱えたショーンが戻って来て、目が合うと、もう来てたのか、またせたなと足取り軽く近づいて、

「ちょうど出来立てで、ラッキーだったぜ」袋を破り広げると、たまご位のドーナツが顔を見せる。美味しそうな匂いに、うわ〜と声を上げると、「うまそうだろ、これ親方が買ってこいって」

 楽しそうに話すショーンの後から「何言ってやがる」

 だまっとれと悪態をつきながら片手に乗せていたお盆を机に置き座り、「ほれ、食え」とドーナツを差し出して来た。「ありがと」と言ってかじると、ふんわり軽い食感と、生地そのものの美味しさに、周りにまぶされた砂糖の優しい甘さが口一杯に広がり、思わず「おいしい…」と口に出していた。


「うめーよな」と大きな一口でばくばく食べ進めるショーンに、オメェは食いすぎだと、呆れ顔で親方も食べる。ショーンに食い尽くされる前にお前も食えと、すすめられるが、お腹いっぱいで食べられないと伝えると、少し寂しそうに「そうか…」と親方が呟くので、兄に持って帰っていいか聞くと、「好きにせぇ」と声はぶっきらぼうだが、頬を緩めながら席を立ち、奥から紙袋を持って来て、残りを詰めてくれた。(うわ〜紛うことなきツンデレだ)


「ドーナツすごくおいしかった」とお礼を伝えると、「フン、さっさと用事終わらせな」と言い残し、去って行ったが赤い耳はバッチリ見えていた。


(照れてる…)

「親方、照れてるな…」ボソリと呟くショーンに応えるように頷き、二人で顔を見合わせて笑った。


「さて、腹ごしらえも出来たし、作業すっか」

 ちょっと待ってろよと、席を立ち作業に必要な道具を準備して戻ってくる。

 二人黙々と作業してると


「なぁフク、俺、思ったんだけどよ」

「……なに?(えっ、今?…)」

「実は昨日の時点で気づいてたというか…」

「……うん(何言われるんだろう)」

「考えたんだけど、この花…」

「……う、うん(変な目で見られるのは嫌だな…)」

「ちゃんと生地から選んだ方がよくねーか」

「……え(ん?)」

「ロナルド様達への贈り物だしな、こだわらねーと」

「……。」


 贈り物だしな、フクもそう思わねーか?とキリリとした表情で聞かれ、思わず、そっちかぁ…てっきり気味悪がられてると思ったとポツリと呟くと、眉間に皺寄せ、


「はぁ?何言ってんだ、お前のどこが気持ち悪いんだ」

「だって…」口ごもりながら思ってる事を、伝えると、「考えすぎだ」と一蹴。



「おもいつくの、へんじゃない?」

「あ?誰かに言われたのか?」

「いわれてない」

「ほれみろ、先走って変な事考えるな、誰かに言われたら俺が相手してやるから」


 分かったなとわしゃわしゃと頭をなでると、それよりリボン買いに行くぞと、いつもと変わらない態度で接してくれるショーンに、感謝を伝えた。


(自分で自分の首絞めてたか…私の悪い癖だな…)


 親方に材料を買いに行って来ますと声をかけ、ショーンは私を抱き上げ店を出ていく。歩けるから降ろしてと声をかけても、「うっせ、いいから甘えとけ」ふっと目をそらしてぶつぶつ言う姿が、親方と重なって何だか笑えてしまった。


 何笑ってんだと呆れ声で言いながらも、優しい顔で笑うショーンに胸が締め付けられ、おもわず抱きつけば、「そうそう、そうやって甘えとけ、で何処の店でもらったんだ?」という声に、あっちと指差しながら店に向かった。





読んでくださり、ありがとうございます。

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