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「 」を会話文
( )を心の声で書いてます。
あれからニックとワットは、さらに改良を重ね干し肉を売り出した。
最初は通常の干し肉より値段が高いので、売れ行きが今ひとつだったが、一度買うと皆リピーターになり、冒険者はもちろんの事、のんべえ達にも支持を受け、(父さんもハマった…)ニック達だけでは生産が追いつかなくなり、またまたギルドを巻き込んで、干し肉専用の作業工房が建てられた。
(最近こういう流れが多いなぁ)
会うたびにやつれていく二人に、大丈夫か聞いても、「作れば作るだけ売れるのが、楽しくてしょうがない」と、とてもいい笑顔で言われたので、休むのも大事だよと伝え、工房へ戻る二人にそっと手を合わせ見送る事しか出来なかった。(目がイッてて私の声は届いてないな…ありゃ)
大変な二人とは裏腹に、今日は何しようかなと、一人散策していると、ショーンがかけ寄って来た。
「フク良い所で会えた」
「どしたの?」
「今、手伝いの最中か?」
「ちがうよ、あそびにいくとこ」
「なら今から俺とギルドに行こうぜ」
「…なんで?」
「俺とフクに手紙が届いたんだとよ」
「?」
ひょいと抱き上げ耳元で「ロナルド様からだ」と囁きそのまま歩きだす。
ギルドに到着し中に入ると、ちらほらと冒険者たちが居て、もう少し混んでるのかと思っていたら、声に出てたのか、朝一と夕方が混み合って、今はちょうど空いてる時間帯だと教えてくれた。
子供連れが珍しいのか、チラチラ見られながら、受付嬢に要件を伝えると、一通の手紙を渡された。
お礼を伝えギルドを後にする。
(なんか、空気がピリピリしてて緊張した)
広場のベンチに座り、ショーンが手紙を読み聞かせてくれる、
親愛なるショーン、フク
君たちのおかげで、無事に出来た。
古くからの友人にも再開出来た。
元気な子にも会えた
そちらに行く事は叶わないが、
いずれ会いに行く。
R
「…これだけ?(何だこの文章…)」
「手紙を検閲される可能性があるから…こういう書き方になったんだろう」
「そっか、ショーンさんはわかった?」
「おそらく、部下と再開できて、アリー様も無事出産されたんだろうな」
「よかったね」
「あぁ…無事に出産されたようで、本当に良かった」
「じゃあ、おいわいしなきゃだね」
「俺達がお祝い?」
(もしかしてこの世界出産祝いしないの?)
「あかちゃん、おめでとうのおいわい」
「それいいな、再来月王都に行くから、それまでに用意しなきゃだな〜」
「フクは何がいいと思う?」
「……わかんない(前は商品券渡してたけど)」
「そうか、でもフクならいい贈り物思い付くさ」
「なんで?」
「デーツも干し肉もフクのアイデアなんだろ?」
「……ちがうよ(本当に違う〜)」
「オババもニック達もフクのおかげだって言ってたぞ」
「……(ひぃ〜、やめて)」
「フクが言い出しっぺだし、期待してるな!」
「……(私のあほ〜〜)」
そう言うと、じゃあ今日は帰るかと、抱き上げて帰路につく。
(今すぐ引っ越しできないかな…無理だろうけど)
読んでくださり、ありがとうございます。