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福子さんの第二の人生  作者: つぐつぐ
10/18

「 」を会話文

( )を心の声で書いてます。

 成り行きとはいえ、仲間になってしまった以上やるしかないけど、干し肉の作り方なんて知らない。母に聞いても「たしか塩につけて乾燥させるのよ」と曖昧な答えで困った…。

 ここまで考えて、わからないならもういいかなと思うけど、別れ際のニックの顔がちらついて、投げ出すのもな…。

 考える事に疲れて、ベッドに横になり目を閉じると、まぶたの裏に文字が浮かんでくる。


『ジャーキーの漬け込み液』


 ソミュール液

 4~20%濃度の食塩水をソミュール液と称します。


 ピックル液

 ソミュール液に各種スパイス、香辛料を加え一度沸騰させた物をピックル液と称します。



(うわぁぁなにコレ)

 目を見開き、辺りを見渡しても文字は浮かばない。

(ソミュール?ピックル?)もう一度目を閉じると、続きが浮かんでくる。


 ソミュール液は、塩分濃度4~20%程度で…後は、好みの(スパイスやハーブ)で味付けをした液体です。



 …もしやこれはスキルの『ネット検索』では?(今まで忘れてたよ)目を閉じると浮かぶの?(発動条件が微妙じゃない?)使い所をを考えないと、怪しい奴になりそうなスキルだけど、今回は結果オーライだ。


 他にどんなやり方があるが、目を閉じ検索してみると、味を染み込ませた後、乾燥させる時に、燻製したり、味付けに醤油やワインを使うレシピも出てきて

 美味しそう……と考えてるうちにいつの間にか寝ていた。


 朝ごはんを食べ、待ち合わせの広場へ向かう。具体的な時間の待ち合わせじゃないので、早めに家を出たつもりだが、既にニックがいた。


「おぅ、おはよう!早いな」

「おはよう。ニックもはやいね」

「昨日、時間決めてなかったのに気づいてな、待たせちゃ悪ぃからな」

「……(そんな気遣いはできるのね)」


「ちょっと、早いけどあいつの所に行くか」

「あいつ?」

「干し肉作りの協力者のワットのとこだよ」


 街外れにある広い庭の一軒家にニックはズカズカと入っていく。

「おーい、ちょっと早いけど、来たぞー」

「……ちょっと待て」


 ドタドタと音を立てながら、こちらへやって来た男はボサボサの髪で寝間着のままで、まさに今起きましたと言わんばかりの姿だった。


「なんだ、今起きたのか?朝から行くって言ってただろ」

「…そうだけど…それにしても来るの早いよ…」

「来ちまったもんは仕方ねぇだろ、ほら着替えて来るの待ってるから、早く支度してこいよ」

「…わかったよ」


 ため息をつきながら、支度をしに行くワットを見送り、

「あいつ、普段はあんなだけど、魔法の腕は確かだからさ」

「まほうつかうの?」

「おぉ、普通に作るのは時間かかるから、短縮出来る所は短縮しねーとな、今日は親父に無理言って休みもらったしな」

「そうなんだ」

「こう見えて、俺だって考えてんだぜ」

「…(見えないけどね)」


 そうこうしてると、支度を終えたワットが戻って来た。


「ニックおまたせ、…所でもう一人のお仲間は?」

「「……。」」

「いや、ここにいるだろうが」

「えっ……あっ、あ、あの、ごめんね…」

「お前、もっと周り見ろよ、フク、こいつも悪気はねぇから許してやってくれ」

「……うん」

「本当にごめんね、ニックから話を聞いて、大人だと思ったんだ…」


 シュンとするワットをおいてニックが、

「気を取り直して始めるか」とワットに促すと、

「あぁ、台所に準備してるから、こっちだよ」


 案内された台所には、肉の他に色々な食材が置いてあった。

 ニックが干し肉の作り方を一通り説明してくれて、まずはそれぞれで、作る事になった。


 調べたレシピを元に材料を探していく、ニンニクやショウガを見つけ、他には…とウロウロしてると棚の中が光って見える。ワットに棚の中を見せてもらって鑑定したら、ハーブ類だったので使っていいか聞くと、驚かれた。

 ハーブは主に、お茶や薬の材料として使うから、料理に使う事はめったにないらしい。


 ボウルに材料を入れてると、興味を持ったのか、うしろからワットに覗きこまれ、「何を入れたの、他は?えっ、これ入れるの?……」離れない。


 自分は作らなくていいのか聞いたら、私の方が気になるからいいと、ならばと、ニンニクを潰してもらったり、生姜を切ってもらったりと手伝ってもらった。(いつの間にかニックまで、覗きこんでたのにはびびった。)


 漬け込み液が出来たから、肉を漬け込みワットに魔法で、肉に味を浸透して貰い、ニックが薄く切ってくれ(もうこれ共同作業やん)、半分に胡椒を振りかけ、魔法で乾燥してもらい完成した。


 結局二人は途中で作業を止めたから、出来上がったのはこれだけ、二人に作らないのか聞いても、味が気になりすぎて試食が先との事。


「「いただきます」」とふたりが食べるのを見て私も食べる。塩を入れすぎたのか、少し辛いけど、ハーブやニンニクのおかげで、獣臭さは消えてる。(成功かな?)


「なんだコレ、こんな干し肉…今まで食べた事ないぞ…」

「…うまっ」

「フクお前スゲーよ、どうやったらこんなの思いつくんだよ」

「…なんとなく?」

「まじかよ…」

「……なんとなくだって?それでこの完成度、頭の中を見たい、こんなに興味深い子がいるなんて、ねぇ他に思い浮かんだ事ないの?」

「……(いきなり豹変したー)」


 大人しいと思ってたワットにぐいぐい来られ、たじろいでると、


「落ち着け、フクが困ってるだろ」

「どうしてこんな事思いつくのか、ニックは気にならないのかい?」

「そりゃ気になるけど、ガキならではの先入観のなさなんじゃねーの?」

(残念、中身おばちゃんです)

「…先入観のなさか」


「それより今は干し肉作りだ、フクが何を入れたかワット見てたんだろう?」

「あぁ…それなら」


 ニックが話題を変えて、干し肉作りを進めて行く、時折意見を求められ、それに答えて調整してを繰り返し、ようやくレシピが完成した。


 干し肉作りで魔力を使いすぎたのか、ぐったりしたワットをベッドに寝かせ、ニックとワットの家を後にする。


「今日はありがとな、お前のおかげで良いのが出来たよ」

「ニックとワットがつくったんだよ」

「…お前がいなきゃ出来なかったよ」

「かんせいさせたのはふたりだよ」

「…そっか俺等も必要か…」

「うん」


「お前等のおかげで出来た干し肉、絶対に人気商品にするから見とけよな」

「たのしみにしてる」

「おぅ、干し肉成功させたら、次も頼むな」

「……え?」


(それは勘弁してください)



読んでくださり、ありがとうございます。

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