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私が書いた、宝の地図  作者: つきまる
第1章 「僕」と「私」
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第6話 宝物

 女の人が、朝倉(あさくら)さんに声をかけた。恐らく、同級生だろう。

結希(ゆき)……ちゃん」

 知り合いなのだろうか。

「結希ちゃん〜! こんなところで会うなんてね! 何しに来てるの? あれ? もしかして……あ、やっぱり! 凜々(りりこ)ちゃんだ! 久しぶり!」

 どちらも朝倉さんと知り合いのようだ。

 そこで、僕は気付いた。朝倉さんの知り合いに、僕と一緒にいることが知られたら……

「久しぶり」

(はな)ちゃん、そっちの男の子って……」

「4組の白宮陽(しろみやはる)さん! 白宮さん、最近頑張ってることがあって、気分転換に一緒にここに来たの!」

「あ、え、こんにちは、白宮です」

「……なるほど。あ、私、5組の川島(かわしま)結希! 華ちゃんとは小学生の頃から仲良いんだ。よろしくね」

「1組の田村(たむら)凜々子です」

「よ、よろしくお願いします」

 知られてしまった……が、朝倉さんが事情を説明してくれたため、特に問題はないだろう。

「白宮くん、ちっちゃくてかわいいね〜!」

「ほんとだ、かわいい。よしよし」

「んえ?!」

 この人たちも、こういう感じなのか。

「でしょ! 目とかめっちゃかわいくない?」

 あ、朝倉さん?!

「え〜、ほんとに男の子?」

「4組のマスコットキャラクターは白宮くんか」

「……」

 こうやって言われることには慣れていると思っていたが、まさか朝倉さんまでそうだったとは思わなかった。どうすれば良いだろう。

「あ、そうだ、華ちゃん、私たちも一緒に行動していい?」

「もちろん! 白宮さんも、いいかな?」

「え、ま、まあ、朝倉さんがいいなら」

 気分転換ということを貫き通すことができるなら、問題はないのだろう。

「白宮くん、私の名前、覚えた?」

「え、えっと、田村さん?」

「田村凜々子」

「田村、凜々子さんね。覚えた!」

 田村さんは、少し不思議な人だ。

「よ〜し、じゃあ、出発! 華ちゃんたちはどこ行こうとしてたの?」

「えっと、私はCDショップ行きたいな〜って。白宮さんはどこか行きたいとこある?」

「あるけど、先にCDショップに行こう」

「了解、CDショップね、どこだっけ、あっちかな?」

「多分そう」

「よし、行ってみよ!」

 随分と、賑やかになった。川島さんも田村さんも、悪い人ではなさそうだ。

 朝倉さんも先程より楽しそうに見えるし、これでいいのだろう。



――CDショップ

「それじゃあ各々好きなの見よっか!」

「結希、あっち行こ」

「じゃあ私、あっち行くね! 白宮さんは?」

「うーん、朝倉さんと一緒に行ってもいい?」

「いいよ! おすすめ教えてあげる!」

 2人ずつに分かれた。少し前と同じ状況だ。

 鈴木(すずき)さんが好きな曲を知らないため、特に買いたいものがないが、朝倉さんのおすすめも少し気にはなる。

「白宮さん、MIDNIGHTってバンド知ってる?」

「あ〜、名前は聞いたことあるかも」

「そっか、あ、今流れてる曲! これがMIDNIGHTの曲!」

「へぇ……」

 優しい雰囲気の曲だ。アコースティックギターの音色が綺麗で、じっとしていると涙が出てきそうだ。『僕が知らない僕こそが、本物の僕で』……

 しばらく曲を聴いていたが、何故か、この歌詞だけが、頭から離れなかった。

 ……

「白宮さん、ただいま! ……さっきの曲、好きだった?」

「え、ああ、すごい夢中になってた……」

「『マリオネット』っていう曲だよ。日本語でどういう意味だったかは……忘れちゃった」

「ありがとう、帰ったらちゃんと聴いてみる!」

「自分の好きな曲を他の人に気に入ってもらえるのって、こんなに嬉しいんだね」

 やはり、そういうものなのだろうか。

「結希ちゃんのところ行こっか!」

「うん」

「あ、華ちゃん!」

「結希ちゃん、ごめんね、ちょっと遅くなっちゃって」

「別にそんなにじゃない? じゃあ次は……」

「結希、そろそろお昼ご飯の時間かも」

「あ、もう? じゃあご飯食べる?」

「そうだね! 白宮さんは、お腹空いてる?」

「うん、丁度いいと思うよ」

「あ、結希ちゃん、ちょっとトイレ行ってきていい?」

「は〜い」

 ……この状況は、もしかして。

「ねえ、白宮くん」

「は、はい」

「……」

「……?」

「うん、そっか」

 何か、あったのだろうか。


「華ちゃん、『宝物』、見つけられたんだ。良かった」


 ……宝、物?

「え、なんですか、そ……」

 訳が分からず川島さんの顔を見ると、その目には、涙が浮かんでいた。

「白宮くん、かわいいから、自信持っていいんだよ」

「た、田村さん……」

 この人たちから、何か、特別なものを感じた。

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