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私が書いた、宝の地図  作者: つきまる
第1章 「僕」と「私」
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第3話 意識

 鈴木(すずき)さんと仲良くなる……。つい勢いでそう宣言してしまったが、正直、そんなことが僕にできるとは思えない。特に理由があるわけではない。ただ、何故か、そんな気がするのだ。



――翌日

 僕は、鈴木さんと仲良くなるために、まずは鈴木さんのことについて、知ることにした。

 以前のシャーペンの件で、鈴木さんは意外にも、かわいいものが好きということが判明した。ならば、そこから話を広げ、鈴木さんの好みを聞き出してみよう。

「おはよう、鈴木さん」

「おはよ〜」

「鈴木さんって、あんな感じのシャーペン使ってたんだね。ちょっと意外」

「ああ、あれはただ、シンプルすぎるのが嫌だったから買っただけ。ああいうのばっか買ってるわけじゃないよ」

「え、そうなんだ、てっきり好きなのかと……」

「別に嫌いでもないけどね」

 作戦を始める前に失敗した。鈴木さんは、かわいいものが好きというわけではなかったのだ。

 ここからどう話を広げようか考えているところで、鈴木さんが話題を振ってきた。

「そういえばさ、なんで私から借りたの? (はる)、男友達いっぱいいるじゃん」

 少し痛いところを突いてきた。

「鈴木さんのが良かった、とかじゃなくて、ただ、席が前だっただけだから。そ、それだけだよ」

 人に頼まれて借りた、と正直に説明するわけにはいかなかった。

「ふーん……私のが良かったんだ〜!」

「え、え? いや、だから……」

「正直に言えばいいのに〜、別に引かないよ?」

「ち、違うよ!」

 変な風に誤解されてしまった。しかし、現状特に困ることはないため、そういうことにしておいても、問題はない。

 と思っていたところに。

白宮(しろみや)〜、そんなに美織のペンが良かったの? 顔真っ赤じゃん!」

「ほんとだ! 白宮くんかわいい〜」

 鈴木さんの友達の工藤(くどう)さんと青山(あおやま)さんが、僕たちの会話に混ざってきた。

「……」

「ねぇねぇ愛羽(あいは)、もしかして……」

「へへ、白宮くん、美織(みおり)ちゃんのこと……」

「違う! それだけは! 違う!」

 流石に、ここまで誤解されてしまってはまずい。どうやって説明しようか。

「違うの? 陽?」

 そういって、鈴木さんは僕の目をじっと見つめた。

「う、うん。違うよ……」

「ふふっ、そっか〜、あれ、次社会だっけ?」

「そうだよ〜」

「あそっか、取りに行かないと」

「私たちもだ、愛羽」

「うん」

 鈴木さんたちは、この場から離れた。

 なんとか、誤解は解けた。だから、もう安心していいはずだ。そのはずだが。

 何故か、心臓がくすぐったい。まるで、誰かに触れられているかのようだ。



――数時間後

 美術の授業は、絵画室で行われる。班ごとに分かれて席に着くため、僕の隣の席には鈴木さんがいる。

 このチャンスを逃してはいけない。今まで、鈴木さんの作品に注目することがなかったため、それについて会話をすることがなかった。だから、今日は、鈴木さんの作品を見て、そこから話を広げることができる。

 今の僕たちの課題は「絵文字」だ。選んだ1つの漢字の1部に、その漢字の意味やイメージを組み込んで絵として描く、というものだ。

 となれば、どの漢字を選んだか、という質問ができる。

「鈴木さんって、漢字何にしたの?」

「猫」

「おお、かわいらしい。理由は?」

「それしか思い浮かばなかっただけ〜」

 本当にそうなのだろうか。普段の鈴木さんの少しのんびりとしたような様子だと、もう少し色々な発想が生まれて来そうだと思うが。

「陽は?」

「破」

「ふーん、流石中学2年生だね! かっこいい!」

「しょうがないじゃん! これしか思い浮かばなかったの!!」

「私と同じじゃん、まあそんなもんだよね〜」

 鈴木さんと、同じ。そう聞くと、何故か安心した。

「ちょっと見せて!……えー、すっごいボコボコじゃん。パンチしたっていう設定?」

「ま、まあ」

「なるほどー、流石中学2年生!」

「だから! そういうのじゃないって!!」

「ふふっ」

 工藤さんや青山さんに、かわいいと言われることは毎日のようにある。だから、からかわれるのには耐性が付いたはずだ。

 なのに、何故だろう。こんなにも、心が震えているのは。

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