緊急招集
【残酷な描写】殺戮・戦闘等の描写があります。
陰陽師宗家が大騒ぎになっていた。
とある神社の枯れた梅を掘り起こした際、根元から木箱に入った水晶が出てきたのである。
その神社が昔の文献を調べると悪霊を封じた物と書いてあったらしい。
よく見ると水晶に小さな傷が数カ所あった。
封印が解けるかもしれないと陰陽師宗家に連絡が来た。
水晶の修理・封印のやり直しを頼まれたのが、此に封印されているのは強力な悪霊のようだ。
九州の主要な陰陽師が佐賀の稲荷神社に緊急招集された。
もちろん倉橋家の宗家も晴明も また夏休みで帰ってきていた桜子も同行した。
璃桜様達が宗家に宝珠を取りに行ったが、皆がいなくて宝珠を今は渡せないと留守居役から言われてしまった。
一正様も璃桜様もそんなに急ぐ事でないと思っていたので、家に帰り寛いでいた。
しかし、漸く立って歩き始めた桜珠殿が人の声ともいえぬ低い声で語り出す。
「ときがない。いそげ。ぎょくをまもれ。でも、なぜいま……」
言葉の最後の方は自問自答のようだった。
それだけ言って、桜珠殿は事切れたように眠ってしまった。
何者かが桜珠殿の口を借りて伝えてきた大事だと悟った。
我も家族もこれは異常なことが起こるに違いないと感じる。
聡子が桜珠殿を抱きかかえ、泣きながら二人を見て頷いた。
宗家達が集まり封印を完全なものにするため、儀式を行っていた。
本殿には結界を張り、六人の陰陽師宗家達、その周りに晴明など十二人の陰陽師
またその周りに桜子など二十四人の妖力が強い者が水晶を囲んでいた。
しかし、なかなか水晶の傷は塞がらなかった。
逢魔が時、外側にいた者がいきなり宗家達を襲い始めた。
驚きと戸惑いで騒然となる。
晴明がその者を取り押さえた時、その者が聞き取れぬ強い言の葉を発する。
その言の葉を受け水晶が破裂し、悪霊が姿を成し結界をも壊し外界に飛び出した。
一正様が留守居役と話している間、璃桜様が勝手知ったるなんとかで蔵の鍵を開け宝珠を拝借した。
その足で青龍様がいる池へと向う。
急いでいるのに事故渋滞に巻き込まれて到着するのに四十分もかかってしまった。
晴明が捕まえた男は毒でも飲んだのか、もう息をしていなかった。
「あれはがしゃ髑髏ではなかったか?」
がしゃ髑髏は悪霊の塊で最強と言われる妖の一つだ。
宗家達が竹筒を取り出し、管狐を喚びだす。
「伝達せよ」
―― 緊急通達! がしゃ髑髏 復活。 戦闘に備えよ! ――
言葉を受け、管狐達ががしゃ髑髏が開けた天井から飛び立つ。
物語本編も後半となりました。
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