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精霊神
暑くなり始めた頃、璃桜様と東の森を訪れた。
玄白様もこの森に根付き、青々とした葉をいっぱいに広げていた。
漸く、玄黒様の所に遊びに行けたそうだ。
璃桜様が学校帰りに神社に立ち寄ると、玄黒様から『感謝する』という言葉と共に
大きめのどんぐりを預かったので、それを玄白様に持ってきたのだった。
木霊達も集まってきた。
木霊の姿は白い毛の生えた大きなマッシュルームのようだ。
玄白様に撫でられると木霊から木霊が生れた。
『玄白様のおかげで精霊達が増えそうです。ありがたい』
鵺殿が礼を言う。
「可愛い」
生まれたての木霊を璃桜様が撫でるとまた木霊が生れた。
驚くことに、その子は色が銀色のようで徐々に赤子の姿になっていく。
そして、璃桜様のことを『とと』と玄白様を『じじ』と呼び、
持ってきた大きなどんぐりをぱくりと食べた。
『玄白様と璃桜様の力を受け継いで精霊神の子が生れたようですなぁ』
鵺殿の嬉しそうな言の葉に森は騒ぎ、璃桜様は困惑の色を隠せなかった。
『二百年もすれば立派な精霊神になるでしょうにゃ』
我も言の葉を溢す。
璃桜様の口が開いたままだった。