桜子の決心
【残酷な描写】事件・怪我等の描写があります。
すねこすりも川向こうに消えていった事しかわかないと言う。
恐怖で動けなかったらしい。
他の妖にも男について尋ねるが誰も知るものがいない。
彼らの多くも雨は嫌いで、雨の日は寝座からほとんど出てこない。
「あっ!」桜子が大声を上げ、近くの川に向い走る。
「権兵衛!」と桜子が叫ぶ。
もう一度大声で叫ぶ。
《どうされました?》
川下から大男が出てくる。河童の権兵衛だ。
他の妖達が一斉に逃げ出す。
後藤刑事も何かを感じ、後退る。
「この間うちに来た日、何か変なこと感じなかった?」
《こないだの雨の日ですか?》
権兵衛が魚を持ってきた日が三番目の事件の日だった。
《あぁ!あの日は気持ち悪い感じで、遠回りしたんです。
それなのに、悪霊に出会っちまいましたが……》
「悪霊?」
《悪霊が人に憑依してる感じです》
「その男の事わかる?」
《えぇ。二・三日前にも見ましたよ。
なんか気になって後をつけました。
川向こうの用水路で軀を洗って、すぐ横のアパートに入って行きましたよ》
河童の後を皆で追い、用水路までたどり着く。
《血の匂いが充満して、川獺などがイキリだっているんで気をつけてください》
権兵衛が注意を促すが、我が睨むと川獺達が脱兎の如く散っていく。
アパートの前に“生きていない女性“が怒りそして怯えて立っている。
璃桜様が後藤刑事に資料を見せて貰う。
「あの人は二番目の女の人だ」
璃桜様が近づくと女性が三〇二号室を指さし、『ストーカー』と呟く。
璃桜様が状況を後藤刑事に話す。
幽霊によって犯人が解っても捕まえる事は出来ない。
自転車置き場に青いレインコートが干してある。
「このレインコートだけでは、他の証拠がないと逮捕は難しいかな」
後藤刑事も頭をかかえる。
《そいつが捨てた包丁に人間の血の臭いを感じたんで
拾って橋の下に隠していますけど》
権兵衛がぼそぼそと語る。
「でかした!権兵衛」
桜子に褒められて権兵衛は嬉しそうだ。
包丁が見つかった。
「これが証拠品になれば良いのに……」
後は後藤刑事に任せるしかない。
数日後、桜子と璃桜様は犯人が捕まったので来て欲しいとの連絡を受けた。
会議室に通される。
レインコートや包丁がちゃんと証拠になったらしい。
そこには仕事を終えて帰ってきた晴明がいて、陣が書き込まれた紙を広げていた。
この会議室には晴明・後藤刑事と若い刑事・副署長あと我らがいた。
そこに拘束衣を着せられた犯人が連れてこられ、陣の中に座らされる。
額には悪霊が男から逃げ出さないように護符が貼られていた。
晴明が護符を剥がし、四縦五横に切る所作で九字を唱える。
「臨・兵・闘・者……」
悪霊が暴れ出し、男が奇妙な声を発する。
男の軀から出てきた悪霊を我は紅き右眼を開き退治する。
犯人の男は気絶し、倒れ込んだ。
事件の経緯はこうだ。
一人目は間違い殺人で二人目が本当に狙っていた女性。
ストーカーしていた彼女が結婚すると聞いて逆上したらしい。
男が満足した時悪霊が憑依し、三・四人目を殺して更に力を増したらしい。
「悪霊がいなかったら真希は死なずにすんだのかなぁ」
一連の事件を経験して、深く考えていたのは桜子だった。
そして、宗家と晴明に宣言する。
「私、宗家を継いでもいいわ」
桜子は次の日から学校帰りに宗家に立ち寄るようになった。
本気であるようだ。
後をついていく妖狐姿の春がとても嬉しそうだ。
拙い言葉の羅列ですが、感想をいただけると幸いです。