通り魔事件Ⅰ
【残酷な描写】事件・怪我等の描写があります。
最近、若い女性を狙った通り魔殺人事件が三件も起こっていた。
そして昨日、桜子の友人安藤真希が事件に巻き込まれた。
夏がもどったのかと思うほど蒸し暑い雨の日だった。
放課後、桜子と別れた後事件に巻き込まれたらしい。
晴明の知り合いの後藤刑事が事情を聞きに家に来た。
ニュースで流れる友人の名前にさすがの桜子も元気がなかった。
一日中泣いていた桜子だったが、次の日には
「犯人は私が捕まえる」と宣言し、璃桜様を連れ出した。
家に行くが"真希"はいなかった。
まだ遺体も警察から帰ってきていない。
次は璃桜様を現場に連れて行くと、彼女はそこにいた。
殺されたままの姿で、自分の殺された場所を見つめていた。
怒りで少し赤黒い闇を纏い真希は立っていた。
「真希」桜子が抱きしめる。
『あぁ』
闇から浄化され、苦しみから解放された真希がいた。
『私……殺されたの?』
「どうしてあの暗い道を……」桜子は悲しみで声にならならい。
『あのね、雨が酷くなってきたから、暗い路地だけどつい近道なので通ちゃった。
勿論事件のことも頭の隅にあったんだけどね……』
―― 雨 ――
話の最中、後藤刑事にばったり会った。
もしかしたら璃桜様達を付けていたのか?
「なぁ、事件協力してくれないか?晴明は仕事で帰ってくるの明後日なんだ」
初めからそのつもりだったのではないだろうか?
もし桜子や璃桜様がここに来たならば頼むつもりでいたのでは?
「わかった。ねぇ真希、事件のこと覚えていること全部話して」
『雨が酷くなって……だから足音もわからなくて、そしたらいきなり背中に“どん“って……
たぶん刺されたのね。背中を沢山刺されて……振り返った時には去って行く青いレインコートしか
見えなかった』
璃桜様が後藤刑事に彼女の話を伝える。
後ろにいたもう一人の若い刑事の顔が真っ青だ。
―― 青いレインコート ――
幽霊に匂いは無いが、生きている人間や妖なら匂いを辿る事はできる。
それが出来ないのは、雨だ。雨が匂いを消した。
たぶん他の事件の日も夕方から酷い雨だった。
「真希さんここにいるのは良くないから、
『自宅に帰った方が良いよ。きっと家族が待っているよ』」
璃桜様が言霊をのせて諭す。
『うん。ありがとう』そういって彼女は人型の妖狐・春の案内で家族の元に飛んでいく。
若い刑事に運転させ後藤刑事に他の事件現場まで案内して貰う。
一件目の現場に行くと、被害者の女性が放心状態で立っている。
まだ闇落ちはしてないようだ。殺された人は闇に飲み込まれやすい。
「大丈夫?事件の事わかる?」桜子が優しく問う。
『事件?』
「貴女は事件に巻き込まれて亡くなったんだ」璃桜様が応える。
『事件で亡くなった?私死んだの?』
「はい。まだ犯人が捕まらないので僕らが亡くなった方の話を聞きに来たんです」
『ごめん。何もわからない。仕事の帰りに雨が降ってきて……』
―― また 雨 ――
彼女はここでずっと何を考え込んでいたのだろうか?
「これからどうします?」璃桜様が優しく尋ねる。
『?』かなり戸惑っている。
璃桜様が紳士のように手を差し出して
「家まで送りましょうか?」というと初めて彼女が笑った。
璃桜様の差し出した手を掴むと彼女を包む霧が晴れ、動き出せるようになった。
彼女は喜んでスキップでもしそうな足取りだ。
『あっ!たぶん刺された後、「違った」って言われた気がする』
歩きながら突然思い出す。
『私が振り返った時、そう……確かにそう言ってたわ。じゃ、ありがとう』
暫くして彼女は一人で走って消えていく。
二件目の現場に被害者の女性はいなかった。
常世に逝ったか?あるいは自宅にいるのか?
そういえばもうすぐ結婚を控えていたとニュースで見た気がする。
彼のところかもしれない。
今日は遅くなったので残りは次の日にということになった。
拙い言葉の羅列ですが、感想をいただけると幸いです。