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化け猫の転生恩返し  作者: 日向彼方
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森の頭

 東の森の入り口に小さな鳥居がある。

大部分が苔に覆われ、真ん中の高さにしめ縄が張ってある。

人が間違って入らないように取り付けられてあるのだ。


晴明とその森に入ろうとすると、

《 妖を統べる人の子か? 》

人の声ともつかぬ声がした。

その後、森に入れたのは我と璃桜様だけであった。

いつの間にか晴明は鳥居の下で眠らされている。

大きな樹の下に森の頭がいる。

その奥の洞窟に子供は二人ともいるという。

一人目の子は本当に迷って入り込んだらしい。

二人目の汐里は森の頭が呼び込んだようだ。

 森の頭は(ぬえ)殿だった。

我は八尺の化け猫の姿をとる。

『こちらは我が主人、鵺殿人さらいとは何のつもりか?』

大きな(ふくろう)(からだ)に人のような顔、足は猛獣だろうか?

周りには(やま)(わろ)木霊(こだま)が沢山いる。

《 先に禁忌を破りしは人である 》

何故(なにゆえ)の怒りですか?」

璃桜様が毅然とした態度で問う。

《 そなたに一度の機会を与える 》

足下にいた山童が手招きをして森の奥に進む。

璃桜様を背に乗せ後をついて行くと、山の中央付近は木々を倒され、

さらに広く深く掘られた穴に産業廃棄物らしきものが多量に捨てられている。

「これは酷い」

璃桜様も驚き、眉間に皺を寄せ考え込む。

“お頭様が一時森を空けた間のことでした。人が入り込み……”

《 多くの森の民が消えた。此を如何(いかが)する? 》

苦悩する璃桜様。

「先に子供を帰してください。時間はかかるかもしれませんが必ず…… 」

《 其方の額にあるものと首にある紅梅様の御守りを信じてやろう。

嘘を言えば災難を振りかざそうぞ! 》

子供達は眠らされており、まだ当分起きそうにない。

我が三人を背に乗せ森を出る。

鳥居にいる晴明を起こし、まずは子供達を病院に届け後藤刑事にも連絡を入れる。

そして、田山さんに一肌脱いでもらう話となった。

自治会の役員を務める近所の田山さんは化け狸だ。

もう三百年も人の姿に化け、人として生活している。

金儲けが大好きだが、妖達の為に便宜を計ってもいる。

――子供を発見したのはボランティア活動家の田山さん

産廃の穴に落ちた子供を救った功労者ということに ――


記憶があやふやになっている汐里殿に璃桜様が状況説明を行う。

「『君は少年の声がしたので見に行くと自分も誤って穴に落ちてしまった』」

言霊をのせてはいるが汐里殿に効いているのか不安になる。

「わかったわ。私うまく出来るわ」

不思議と物知り顔で何となく主人に対して不遜な態度だ。

一週間、田山さんはヒーローとしてメディアに引っ張りだこだ。

勿論メディアを利用させてもらい、森の危機を訴える。

そして、田山さんの息子は市議会議員として大活動している。

NPOが寄付を集い予想以上の資金を集め、一ヵ月も立たないうちに産廃の撤去を行った。

しかし、森は(けが)されたままだ。


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