芸能人相談窓口Ⅱ
璃桜様が聞き耳を立て、生き霊の声を探る。
《 ごめんね、竣。怜を助けて…… 》
その生き霊が手を伸ばしかけてそう言って、すうっと消えて行く。
晴明が特別な和紙で作られた鳥型の式札を飛ばし、生き霊の後を追わせる。
『野分(台風)が近いから風が強い。我も共をしよう』
そう言って窓から飛び降り化け猫の姿となり式神を追う。
後ろで芸能人とやらが驚いた顔をしていた。
晴明もやれやれという顔をしている。
見なかったことにしよう。
意外とかなり遠くまで飛んで行く。
こちらは安芸(広島)の方角か?
雨風でヨレヨレとなった鳥型の式札が病院の窓に張り付く。
ここから念を送って璃桜様に届くだろうか?
―― 病室の中には命が消えそうな中年の女性
名は……山内高子
横にまだ幼き少女が泣き疲れて寝ている ――
『怜子を助けて……』
我を見つけてこの女性が一言を振り絞る。
晴明が芸能人とやらに女性の名を告げると
「自分と父を捨てた母だ」と憎々しげに呟いた。
我が式札を咥えて帰り着くと、
“明後日までコンサートがあるので、近いうちに行ってみる”ということになったらしい。
『間に合えばいいが……』我はそう言の葉を溢す。
式札は役目を終えて粉々になってしまう。
数週間後、あの芸能人とやらが晴明の神社に訪れ、璃桜様が呼び出された。
やはり母の死に目には間に合わなかったらしい。
そこで知らない存在の年の離れた異父の妹がいたことを知った。
その少女の父親は一年ほど前に事故で亡くなっていた。
誰も引き取り手はいないらしい。
マネジャーと彼と少女の三人で簡単な葬儀後を行った。
彼は悩んだが施設に行く間際、泣きじゃくる少女を手放せず引き取ることを決心。
「唯一の家族だ」
理由はそれだけで十分だ。
少女は新しい水色のランドセルを喜び、
彼も今では「お兄ちゃん」と呼ばれ、デレデレらしい。
やり手のマネジャーが、変な噂になる前にリークしたのだろう。
数日後、これは美談として週刊誌に載った。