芸能人相談窓口Ⅰ
今日は不本意ながら猫用リュックに入れられ、男性アイドルグループ“FDI”のコンサート会場に来ている。
西日本を中心とした人気急上昇中のグループだ。
今日は化粧をした桜子までついて来ている。
多少五月蠅かったが、初めての経験に少しだけ感情が高ぶった。
桜子は勿論、璃桜様まで顔を紅潮させている。
コンサート後、二人は会議室に通された。
そこには和服姿の晴明が一人待ち構えていた。
陰陽道家では時々芸能人の相談を受けていると聞いてはいた。
外からまだ歓声が聞こえてくる。
マネジャーが一人の青年を連れてきた。
「僕は大丈夫だから……」逃げようとする男性。
「いえ、一度だけでも……」
マネジャーに無理矢理引っ張られてこの部屋に連れてこられたのは、今見ていたアイドルグループの一人である高原竣という奴だ。
『出してにゃ』
リュックのボタンを外してもらい、外に出て軀を伸ばす。
場違いな猫の登場に怪訝な顔をする二人。
アイドルを見つめる桜子の目が♡になっているのが面白い。
晴明が名刺を出しながら
「ご紹介いただいた陰陽師・倉橋晴明です」と挨拶する。
キラキラするものには何かしら霊が寄ってくる。
元気なアイドルには沢山の霊が周りにくっついている。
晴明が鞄から大幣などを取り出し除霊の準備を始める。
「今から除霊を……」
晴明が言う前に、我が『ギャー!』と一喝すると散り散りに取り巻きの霊達が去って行く。
「俺がするより早いな」晴明が憎々しげに呟く。
我は得意げな顔を璃桜様に向ける。
この少しだけ片方の口角を上げる璃桜様の微笑みが我は好きだ。
部屋の隅にいた生き霊がまた近づいてくる。
「この霊ですね」晴明が尋ねる。
少し霊感のあるマネジャーから
「なんか特別な感じがする霊が最近ずっと憑いている」と宗家は相談を受けていた。