事故物件相談Ⅰ
この間引っ越しをした田村さんというお客さんから一正様に相談がきた。
「この部屋大丈夫って言いましたよね!
でも、夜な夜な小さいおじさんが部屋の中をウロウロしているんです」と
女性の部屋ということで桜子も伴い三人で夜に伺うことにした。
部屋を覗くと引っ越しの時にはなかった階段箪笥がベッドの横に置かれていた。
璃桜様が尋ねると、祖母の古い家が取り壊しになるので気に入っていたこの階段箪笥を譲り受けたらしい。
どうも気になる。
璃桜様が一つ一つ引き出しを開けると、引き出しの奥で泣いている妖を見つけた。
確かに、十五センチ程で小さいおっさんのように視える。
だが、頭には小さい角がちゃんとあった。家鳴りという子鬼の一種だ。
桜子が引っ張り出してしげしげと眺めている。
「これよ、本当にいたでしょ」田村さんが指を指して叫ぶ。
我と目が合うと家鳴りは驚いて更に大泣きを始めた。
《 ここはどこ?ロロが居ないの…… 》
どうやら箪笥を持ってきた時に仲間とはぐれてしまったらしい。
《 ずっと二人で一緒だったのに…… 》家鳴りはずっと泣いている。
「これは家鳴りと言う妖ですが、その箪笥に住んでいたみたいです。
害はあまりないですし、普通は視えないし」
璃桜様が説明すると、田村さんも興味が出たらしい。
「思い出した。小さい頃私が寝ていると、周りで騒いでいたでしょ?」
彼女の祖母の家は結構古いお屋敷だったらしい。
「熱を出したときに一人で寝ていたら数人の小人が布団の周りにいたよね。
《 熱下がれ、元気になれ! 》と言ってたでしょう。
お婆ちゃんちの座敷童だと思っていたわ」
ケケという家鳴りはまだ泣き止まない。
「ロロを探しに行こう!」桜子が声を上げた。