32/73
番外編 ー変化ー
これはまだ八重郎の時、一正様が主人だった時のお話です。
まだ我が名が“八重郎”であった頃、初めて晴明の妖狐に会った。
人型から妖狐に変化するのを間近で経験した。
その夜、目を覚ますと幼い璃桜様が苦しい声を出している。
晴明の妖狐の変化に感化されたのだろうか?
自分でも驚くことに寝ぼけて八尺の軀になっていて、璃桜様のベッドを枕にしていた。
尾も長く伸び綺麗に二つに裂けている。
部屋が我が軀で充満する。
「八重郎!」
主人の奇声にあっという間に小さき黒猫の姿に戻る。
転生出来るようになって変化したのは初めてであった。
驚いている主人にこちらも恐る恐る近づくと、優しく撫でて抱きかかえてくれた。
「大きな妖になれるのか?」
『初めてだにゃ!』変に上擦った声が出た。
「そうか……」
それから先は何も言わない主人だった。
信頼は崩れていないと思うが、焦った我は次の日から訓練し三日で自由自在に変化出来るようになった。
桜子様と璃桜様は大きい姿の双尾のモフモフがお気に入りのようだ。
しかし、もっと早くに変化出来ることが解っていれば……
今更か。




