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化け猫の転生恩返し  作者: 日向彼方
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雛人形

 毎年三月には聡子の実家でお雛祭りをする。

聡子の実家は古くからある神社のため、お雛様も大きくかなり古い。

もしかしたら二百年は経っているといわれている。

どこかのお姫様のものであったらしい。

「このお雛様怖い」

帰り際、桜子が毎回呟く。

《ちぇっ!》舌打ちが聞こえる。

振り返るとお雛様の目がこちらを睨んでいる。


八百萬(やおよろず)の神々を(まつ)る我が国らしく、自然には数多くの神々が居る。

また、長く大事にされた物にも神が宿るとも言われている。

その一つが(つく)喪神(もがみ)だ。

昔はとても、大事にされていたようだが今はただの薄汚い人形にすぎなかった。

顔も目が吊り上がり、怖い印象しかない。

『もういやだ。この中で私だけが付喪神なんぞになって、話し相手さえいない』

お雛様が泣きながら、悪態をつく。

昔はきっと大事にされていただろうに。

「泣かないで。可愛い付喪神でいて、決して悪鬼になんてならないで」

璃桜様の心からの願いだ。

『暗い箱に閉じ込められて寂しいし、この時期だけ出してもらえても

 その子に毎年怖いだの可愛くないだの言われて気分が悪い』

「暗いのは嫌だよね……」璃桜様が独り言ちる。

それを見ていた桜子が走り去っていく。

『ほら、あの子は私を嫌っているじゃない』

悲しみと怒りとで闇を呼びそうな気配だ。

「そんなことないよ。きっと……」璃桜様も言い淀む。

暗い雰囲気に飲み込まれそうになった時、宗家と晴明がやって来た。

しかし、付喪神になったお雛様の処遇に皆困ってしまった。

暫く(しばらく)して桜子が息を切らせてもどってきた。

大きなケースに造花の桜の花を敷き詰めて持ってきた。

「今までごめんね」

桜子が抱きしめる。

お雛様は驚き、一気に空気が浄化される。

「ここなら寂しくないでしょう?」

優しく花を敷き詰めたケースにお雛様を大事に入れる。

「綺麗よ」桜子が微笑む。

つられて微笑んだお雛様はとても可愛かった。

今ではテレビのついている宗家の居間がお気に入りのようだ。


拙い言葉の羅列ですが、感想をいただけると幸いです。

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