地縛霊
そこの家の前に泣いているおばさんが立っていた。
『十年ほど前からずっとそこにいる。地縛霊らしいが、君の力でどうにかならんか?』
「は?」怪訝な顔の璃桜様。
『もうすぐ、この家は取り壊されるらしい。そしたら、あのおばさん悪霊に
なっちまうんじゃないかな?』
「五郎さんが声かければ?」
『だめなんだ。『悲しい』としか言わん、あのおばさん』
璃桜様が話しかけるが、やはり『悲しい』としか言わない。
『この家でなんかあったみたいだな。それから調べてみてくれんか?』
浮遊している五郎を見上げ璃桜様が尋ねる。
「ねえ、なんであのおばさんのこと気にするの?」
『なんかお袋に似てるかな……って』五郎は苦笑いし、悲しい顔をした。
仕方が無い、璃桜様は五郎の提案にのることにした。
まずは、この家のことを晴明叔父さんに相談する事にした。
十年前強盗殺人事件があり、夫婦二人が殺された。
たまたま、押し入れで寝ていた三歳の女の子だけが助かったらしい。
犯人はもう捕まっていた。他にも強盗をしていて無期懲役で刑務所の中だ。
家族会議となった。
ここ数日で気付いた事がある。
時折、おばさんが小さな女の子を目で追う仕草が見られるのだ。
「娘に会いたいのかな?」璃桜様が思案に耽る。
「そうに違いなか!子供はいくつになっても尊い」
一正様の想いは深い、と思う。
今はおばさんの弟さんが引き取ったらしいが、今の転居先が不明らしい。
晴明の知り合いの刑事に問い合わせをしたら、当時の新聞のコピーをくれた。
子供の名前だけはわかった。
さすがに警察にも、これ以上今の個人情報を検索したものは教えられないと断られた。
藤木(おばさんの旧姓)月輝
「名前珍しいよね。私に任せて」
桜子が胸を叩く。
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