水族館 (璃桜Ver)
璃桜Verは 璃桜の視点での物語です。
五年生の遠足はバスで水族館に行くらしい。
水族館と言えば、まだ幼稚園生だった頃に珍しく家族全員で行ったのを思い出す。
~*~ (六年前)
イルカショーの後お土産を買うために階下の売店にむかった。
エレベーターに皆で乗って降りていく。
沢山の人に押されて僕と桜子は奥に追いやられ両親と離れてしまった。
―― ちなみに姉のことを「お姉ちゃん」と呼んだ記憶が一度もない。
誰にも咎められなかったせいで物心つく前から「桜子」と呼び捨てだった。
桜子自身もそれでいいと思っているようだ。 ――
皆一階でエレベーターを降りていくのに僕たちは何故か動けず、そのまま地下に向う。
桜子が異変を感じてかそっと僕の手を握ってくれた。
ボタンの前にいた飼育員と思っていたのは海坊主という妖だった。
『あれ?なんで乗ってる?』海坊主が不思議がっている。
「降りられなかったのよ」桜子が強めに返答する。
『まぁいいか。今は急いでいるので後で地上に送るよ』そう吐き捨てるように言う。
地下に着き、暗い廊下をいった先にはアシカ?が出産中だった。
しかし、よく見ると背中に大きい傷がありかなり出血している。
『大丈夫じゃ。海禿がんばれ!』そう言って男は薬草を塗り止血を試みている。
「どうしたの?」
『出産のため海上に上がろうとしたら、人の船で背中が傷ついてしまたんだ』
子供は無事生れたが、母親の方は虫の息
男が呪文のように『がんばれ!』と唱えている。
僕と桜子も一緒になって「がんばれ!」と唱える。
すると僕らから霞のような妖力が抜けてアシカ?に移っていく。
驚いた顔で僕らを見つめる海坊主。
『これはアシカに似ているが海禿という妖じゃ。君らの妖力を吸ったように視えたが』
「そうなんだ。僕少し疲れたかも」
桜子はまだ海禿をじっと見つめていた。
背中からの出血が止っていた。
『海禿よ運が良かったな。この子らは其方達の命の恩人ぞ』
『ありがとうございました』海禿から微かな声が聞こえたような気がした。
『良かった助かった!ここは海の妖がくる病院みたいなとこじゃ
だが儂も年で妖力も衰えた。こんな大きな傷では助からんとこじゃった』
海禿が親子とも助かったみたいで僕も桜子もホッとした。
奥を見渡すと変わった魚達が沢山いた。
『もう大丈夫そうじゃ。君らを帰さないといけんな』
降りた時と同じエレベーターで地上に出る。
ドアが開くと目の前には心配顔の両親がいた。
「どこ行ってたの?迷子センターに行くとこだったわよ」
「ねぇお母さん。薬草のことをいろいろ教えて」
桜子の頓珍漢な答えに呆れ顔の両親だった。
後ろを振り返ると人の姿になっていた海坊主が「バイバイ」と手を振っていた。
明日のバス遠足は同じ水族館だ。また海坊主に会えるだろうか?
読んで頂き有り難うございます。
感想等いただけると幸いです。