気晴らしのお散歩
時は1週間ぐらい遡る。マイが雄花に振り回され、ギルドにも振り回されていた頃…シュウにとってみれば不満の日々であった。まあ、自分の魔物なのに自分を構ってくれない。いや、それよりもマイとミサがギルドで色々口論しているが全くついていけない。それが不安であり不満であった。しかし、それを見兼ねたマイが3人でマイの拠点で森探索しようと誘ってくれたのである。今日はその当日であった。
(まあ、気晴らしには良いかな。)
休戦とは言え一歩間違えれば全面戦争行きである。そう言った悩みを抱えていたマイであったが…とりあえず、私自身からシュウ君を誘ったので…と言うこともあり、若干楽しみで孤児院へ向かうのであった。
「シュウ君いますか?」
孤児院の扉を叩きながら声かけする。
「はいはいー。今開けますね。」
孤児院の先生が扉を開けてくれたので中に入ってみると…なんかいちゃいけない女性がいた。
「あら、先にお邪魔しています。」
「ミサさん?なんでここにいるんですか?」
「え?今日は3人でマイさんの住処にお邪魔する約束でしょ?」
「ですが、なんでここなんですか?ギルドに迎えに…」
「遊びに行くんですからオフですよオフ。どうせマイさんのことなのでシュウさんを先に迎えに行くのですからここで待っていたと言うわけです。」
実際、ミサは受付嬢の服を着ておらず…ハンターとまでは行かないが軽装備をしていた。弓を持っている。
「ミサさん?一狩りしに行くんですか?」
「いやいや、マイさん。マイさんの住処は森の中でしょ。何かいたら撃ち落とさないとダメですからね。」
「うーん、私の拠点魔物滅多に来ないんだけど…と言うより弓使えるんですか?」
「弓ご存知なのですね。大丈夫です。小刀も父から借りてきました。万一があればハンターの模擬戦を見ているので対応して見せます。」
あ、ダメなやつだ。期待しないでおこう。見てなんでも出来るなら誰も苦労しないわ。
「あれ、シュウ君は?」
「ちょっとシュウさんは他の子供達の面倒を見ているようですよ。シュウ君より若い子供も出てきたみたいですし。」
シュウ君はまだ8歳であるが、孤児院は最長9歳までである。10歳になると卒業するための準備を経て卒業となる。まあ、大抵はハンター登録やら必要最低限の衣食住が出来るようにフォローして貰って卒業となる。それ故…シュウ君は孤児院のなかでは後輩の方が多く面倒を見る側に回りつつあるのだった。
「そう言えば、マイさんも子供達の面倒を見ているとかどうとか?」
「見てますけど…未だになんで見ているか謎なんですよねぇ。」
マイはあくまでシュウ君に会うために来ているだけである。ただ、マイは見た目10歳。子供達にして見れば一緒に遊びたいお姉ちゃんなのであった。中身は150歳超えたおばあちゃんなのであるが…なお、マイの同族換算では150歳などまだ赤ちゃん相当である。
「別に見るのは良いですけど…給料欲しいです。」
「見た目に反して言ってることは大人と言う違和感があります。」
「ミサさんの5倍は生きていると勝手に思っていますよ。」
「だったら言えば良いじゃないですか。そうすれば…」
「魔物にお金払う人間いるんですか?来るなと言われますよ。そんなこと言ったら。」
「まあ、それはそうかもしれませんが…私だったら食って掛かりますね。」
マイは色々考えて言っているもののこう言うことについては中々言えない性格なのである。言えるのであれば前世鬱で苦しんだりしないだろう。逆にミサさんは思ったことは誰構わず言うタイプなのであった。
「あ、お姉ちゃん!ごめん、遅れた!」
漸くしてシュウ君が奥の方からやってきた。
「あ、全然大丈夫。問題なし。」
私は結構時間に厳しいタイプであるが、私に対してであり他に対しては関心がなかった。流石にすっぽかされたらキレるが…。
「では行きましょうか。いやー、マイさんの住んでいるところってもう数年立入禁止じゃないですか?もしかしたら貴重なものが生えているかもとワクワクしているんです。」
「別に欲しいものがあったら持っていって構いませんけど…それでハンターが私の住みかに侵入を始めたら侵入者全員殺しますからね?あと、ミサさんも同罪ですよ?」
「あー、まあそうなっちゃいますか。まあ、有ればそのとき考えます。」
実を言うと禁止区域に特別なものが生えているんじゃないかと言う変な噂が少しずつ沸き始めているのではある。とは言え、マイが住み着いているのも殆どのハンターが知っている。この変な噂が煮えたぎるまではまだまだ時間はかかるのであった。とのことで移動を開始する。
「おや、珍しい組み合わせだね。どこかお出掛けかい?」
守衛を通るときに男性に声をかけられた。
「うん!お姉ちゃん達とお散歩!」
「そうか。まあ気を付けてな。…ハンターはいなくて平気か?街出るとたまに魔物が出るが…。」
「うん!お姉ちゃん達がいるもん!」
「答えたくなければ良いがどこ行くんだい?」
「お姉ちゃんの家!」
「家?だったら街中じゃ…」
「私の拠点ですよ?」
「ああ、マイさんのか…って、森のなかじゃないか?!おいおい大丈夫か?」
「私も魔物ですし、シュウ君の魔物ですよ?指一本触れさせません。」
「私もこれでもちゃんと武装してきたので平気です!」
ミサさんは武装…というか軽装装備なんだよなぁ。かえって心配だが無視する。
「まあ、取り敢えず気を付けてな。危ないこと有ればすぐに逃げるんだぞ。」
守衛はあくまで街を守るのが仕事。出てしまったらあーだこーだ言うことは出来ないのである。
(うーん、まあどう見ても心配になるよなぁ。)
8歳の男の子と、10歳の女の子と20歳ぐらいとは言え魔物と戦えそうなオーラ皆無の女性が街道を歩くのである。まあ、街道に魔物が頻繁に出ることはハンターのお陰で無いが…盗賊云々がいるかもしれないが…まあ、第三者目線で充分かは微妙だった。ここは日本ではないのである。まあ、取り分けなにもなく拠点に向かう森の入り口に来た。




