子供のぶっ飛んだ発想
「じゃあじゃあ、魔物さんと人間さんでお店を立てちゃうのは?」
は?どうやったらそんな案が出る?
「だってだって、僕とお姉ちゃんはこうやって会話できるんだよ!だったらお姉ちゃんの仲間と人間さんとでお店を立てて物を交換し合えば仲良くなれるかなと思ったの!仲良くなれればお兄ちゃんもそのおじいちゃんも納得してくれるかも!」
とんでもない案である。まず、今からそんな物を作ったって開拓案は進んでしまっている。人脈形成という意図だろうが、間にあわない。しかし、そのとんでもない案がマイを動かし始めた。
(お店ねぇ…。そう言えば、あそこの魔物達食糧難とか言っていたわね。だったら2街の貿易の中間地点として村でもたてて更にそこに彼らも混ぜてもらう。私達と人間は似た様な形なんだから、違和感ないんじゃないかしら。)
建てる場所はおじいさまの拠点からある程度離れた場所ならまあ頑固親父も許容範囲だろう。そこに人間に興味がある雄花を派遣すれば良い。食糧難を打開出来る可能性があるとか言えばあのおじいさまも動きそうである。子供が餓死するのを容認する親はいないはず。例え魔物でも。
「シュウ君シュウ君。仮にそれを実行するとして…じゃあ、人間達は何をすれば喜ぶと思う?魔物達は人間から食糧を分けてもらうとかあると思うけど。」
シュウ君の発想が面白い。とりわけ既に会議の内容から逸脱しまくっているが…別の視点で見るのは良いことであった。
「うーん…あ、これ!」
「うん?」
シュウ君は私に巻きつかれているツルを指差した。
「お姉ちゃん色々これで作れるじゃん!何か使えないかな?!」
「ツルか…。」
確かにワンちゃんあった。試しにツルでイメージした物を作ってみる。花はついていないが、ツルでできた花冠もどきが出来た。シュウ君に被せてあげる。一応補足だが、私のツルは生きている。要は地面から繋がっていなければいつかは死に乾燥してしまう…が、そう言えば前世畳があった。別に乾燥したって使えるではないか。別に魔物討伐に使うのは私達ぐらいである。
「お姉ちゃんの冠だー。」
変な意味で聞こえるが本人にはそんな意図はなかった。ただ、この案は頑固親父を動かすのに使えそうである。あのおじいちゃん木が分かったと言えば人間反対派のケリン達も右に倣えにせざるを得ない。
(あれ、後は費用問題で全部いけるんじゃね?)
私はシュウ君に寄りかかる。何となく安らぎの場が欲しかった。
「お姉ちゃん大丈夫?」
「うーん、後気になるのは開拓ルートよね。最適ルートは魔物の住処を直接縦断してしまう。それはどうやってもダメ。だけど迂回するのは山があるから辛いんだって。お金もかかるし。」
「じゃあ山を掘っちゃう!」
「は???」
バカか。山の形を変えて平地にとか言っているぞこの子。
「だってだって、魔物訓練の時にモグラさんがいたもん!ほりほり!」
魔物使い教育訓練時はムサビーネ夫人がその時に適した魔物達を呼ぶ。そして、私達はモグラの様な魔物に当たることが多かった。まあ、連中は地面の中で生活することが多い。地面の中には私の花の匂いは到達出来ない。森の中で地面から襲ってくる魔物はたまたま地上に出たか、元々は地上だが、襲う時には地面地下からという魔物である。それゆえ私は襲われにくく、一緒に授業を受けることが多かった。なお、魔物使いの女性は畑を耕すのに便利とかという理由で世話しているとのこと。まあ、逆転の発想であった。
(穴掘りか…山の形を変えるんじゃなくてトンネルなんてどうかしら。そうすれば、その上ならば彼らの住処を脅かすことはないだろうし…費用も減るのでは。)
魔物使いは少ない。とはいえ、例えば今の私の様に同種がいる場合、魔物使いとその魔物経由で仲間を集めると言った荒技が出来ることがある。勿論魔物使いと魔物は直接会話は出来ない。それは私達が例外。だが、魔物が街中で暴れない様にとしているこの訓練が、魔物使いと魔物の結び付きを強化している。それを使えばトンネル掘りもいけるのではないだろうか。費用面も魔物使いのみに払えば良い。私も今現在貰っている費用は0である。まさにブラックではあるが…集団でやるとしても人件費は指示している少数の魔物使いだけで良いのである。
「だそうよ。ケリンさん。シュウ君がとんでもない発想をしてくれたわ。それに私が現実に可能な範囲で改良しておいたから、その方針はどうか聞いてちょうだい。」
私は植物に意見の伝達を託すと、シュウ君に寄りかかり日光浴をしながら眠ってしまった。