雌花の限界
(だから面倒事を投げつけるなと言ってるでしょ!)
聞いていた…わけではないが、植物からの報告を聞いてマイはカンカンだった。マイは孤児院で光合成中。ずっと日光を浴びて癒されていた。今日は子供達に「何するのー」と言われても無視…というよりシュウが「お姉ちゃん疲れてるから僕と日光浴ー。」とマイを守っているのであった。シュウ君もマイのことを心配して昼食の時間を除きずっとマイのそばにいた。マイはここ数週間でストレスマッハであった。人間と同族の戦争から始まり、その後は雄花達からのクレーム対応。後は今日の会議についての伝達役。これだけやってるのに何もない。それによるストレスと疲労が顔に出ていた。それを察知出来たのはもちろん一番くっついているシュウであった。マイは前世自身に見合った仕事が出来ず過労が溜まり鬱になっている。まさに同じ状況だった。書類を作れというお題に対し、日本語さえ書ければ誰でも文字は書ける。ただ、得意な人はとっとと終わらすが、苦手な場合は結局お手上げだったり長時間残業になってしまう。それと同じ状態。結局マイの性格では何処の世界であっても同じ運命なのである。
「お姉ちゃん。大丈夫?」
シュウ君目線では孤児院に戻ってからどんどんマイが不機嫌にブツブツ言っていることが分かった。植物から現状報告が勝手に流れて来てしまうという問題もあるが…もう全員が我儘の言いたい放題でありこれ終わってるなとしか思っていなかったのであった。勿論じゃあマイは客観的に物事を判断出来るか?と言われればそんなことは無い。第一マイ自身、狩りしたく無いからわざわざ効率が悪い光合成を貫き通しているのである。ただ、それに対し誰も文句を言わないからストレスはない。これを例えば花の蜜大量生産しろとか言われれば、強制的に魔物狩りをせざるを得なくなり一瞬でプッツンであろう。言わば関心ないし、自身に関係がないからこそ客観目線で物事を見れているのであった。
「はぁ…だいじょばない…どうしたものか…。」
マイだってこんなことお手上げである。第一、マイは前世そこら辺の社会人。政治なんか知らない。予算云々も知ったことではなかった。
「植物さんからお話聞いているの?」
「うん…ただ皆んな誰も妥協しないから喧嘩しているだけ。聞いてるだけでストレスが溜まってくる。」
マイは共感することが比較的得意というかそういう性格している。要は皆んなのイライラ、ストレスに振り回されてしまう。植物達は殆どがそんな揉め事をしない。光合成をして生きているだけ。だからマイもその影響で心が安定している。しかし、今はクレーム対応におまけに会議について考えろとまで来た。マイはボロボロであった。
「お姉ちゃん!だったら僕も考える!お姉ちゃんのためにも僕だって考えるんだもん!」
「うーん…まあ、関係ないとは言えなし…放っておいたらシュウ君の命にも関わるからね…」
「え?!」
シュウはびっくり仰天であった。
「え?じゃないわよ。うーん、そうね…まあ、シュウ君が知らないところで人間と魔物とで殺し合いしているの。このまま放っておいたら殺し合いの場所がこの街になる。そしたらシュウ君も殺し合いに巻き込まれるんだよ。」
シュウ君は唖然としてしまった。そして、意味がわかると更に顔色を変えてしまった。マイはシュウ君のそんな顔を見たくない。ただ、もうマイ自身が限界なため心の声が漏れつつあった。
「ヤダヤダ!なんで殺すの!だってお姉ちゃんは魔物だけど僕と仲良いじゃん!」
「シュウ君も昔、魔物に狙われたんでしょ。シュウ君。私が例外なの。全ての基準を私にしないで。」
マイは孤児院で子供達と一緒に遊んでいた。例えマイにとって理不尽な内容でも、シュウ君と一緒に…というもっとうで、後は対人戦も兼ねて参加していた。そのやり方が、シュウを含め、孤児院の子供達には魔物と人間も仲良く一緒に生活出来るという非現実を教育してしまっているのであった。
「うーん…で、でも…今お姉ちゃんが悩んでいることには変わりないもん!僕はお姉ちゃんを守るんだ!だから何でも話して!」
マイは考えた。まあ、ストレス溜まったら誰かに吐き出せというのは前世からの教訓である。こんな滅茶苦茶な事態シュウ君が対応出来るわけないが話すだけなら良いだろう。
「うん。じゃあ、私が知っていることを噛み砕いて話すね。別に聞いているだけで良いよ。本来はシュウ君が知るべき内容じゃないんだから。」
「うん!」
それからマイはシュウへことのいざこざを話した。まあ、簡略化したら…人間がマイのお兄さんの土地を開拓したい。ただ、お兄さん含めそのおじいさんも含め反対派が多数。ただ、人間と交流したい魔物もいる。迂回ルートという手は費用問題で現実的じゃない。まあ、そんな内容だろうか。他にも知っていることは話したと思う。
「うーん…うーん…」
まあ、シュウ君は8歳の男の子である。政治問題に首を突っ込むのは早すぎるし…と思っていたが、とんでもない返答が返ってきた。




