両極端の魔物
(さて…まあ、やりますかね。)
そして会議当日…当日はちょっといつもより早く起き街へ向かった。シュウ君を回収するためである。何度も言うが、こういう場合魔物だけで処理するのは色々良くないのである。孤児院に行きシュウ君を早く回収した後…森の中に入る。シュウ君は「大丈夫?」って不安がっていたのでおんぶして私の体に縛り付けておいた。ツルで縛られる体験は本来恐怖だと思うが…シュウ君は慣れだろうか。逆に安堵している模様だった。
「シュウ君、ここで待つよ。」
「ここ?」
森の中である程度日光が当たる部分で待機している。ここを雄花達の集合場所にしていた。街道で集合すると人間がビックリしてしまう可能性があるからである。シュウ君も縛っておくのは良くないので地面に下ろしてあげる。少し待っていると植物から連絡が来る。
『姫様。雄花達が3名こちらに向かっております。襲う気配はなさそうですが…撃退するのでしょうか?』
「いや、今日はちょっとここで約束していてね。まあ、喧嘩吹っ掛けに来たりしないでしょう。」
『雄花ですのでご注意ください。』
「了解。」
少しすると雄花3人が私達の上の木から飛び降りてきた。まあ、やっぱり雲梯の原理なんだろう。
「人間か?!」
見かけ年齢12歳の少女…雄花だからオスなんだろうが…が警戒してシュウ君を見た。
「シュウか。まるでマイのボディーガードだな。」
ケリンさんである。見かけは20代初頭の女性である。見た目は。
「人間始めてみた!」
残りは6歳ぐらいの女の子だった。共通だが全員雄花である。男の娘と言うことは忘れてはいけない。
「マイです。わざわざ遠いところからすいません。」
「僕はシュウなの!お姉ちゃんの魔物使い!」
「なんだそれ。」
12歳の少女が声をかける。何度も言うが…以降ややこしいので言わないがこの女性、少女、女の子は全員雄花…オスである。
「面倒臭いのでお友達と言う概念で良いです。では行きますか。」
私を筆頭に全員で森を進み街道の側まで来た。最終警告する。
「皆さん。いよいよ人が住む街道に出ます。ケリンさんは知っているとは思いますが、人間は…まあ、シュウ君見れば分かると思いますが私達と似ている形です。ですのでなにもしなければ襲ってきません。万一声かけられたとしても相手が手を出さないならば手だけは出さないで下さい。シュウ君、手はずは大丈夫?」
「うん!任せて!」
シュウ君は魔物使いである。声かけられたら私の魔物使いと言えばそれで終わり。他は私の仲間だから襲いませんとか適当なことで誤魔化せば良い。また、それでも目立つと思うので…奥の手をミサさんから提示されていた。人気がない状況を見計らって全員街道に出る。12歳の少女は警戒心が強く、6歳の女の子は興味津々で回りを見ている。まあ、実年齢的にはどれぐらいなんだろう。300歳と30歳ぐらいかなぁ。当てずっぽうに言ったので実際は知らない。
「この道を進めば良いんだったか?」
「そうですが、流石に目立ちます。なので、待ち合わせをしています。」
ケリンが問うので私が答える。少しするとシュウ君が叫んだ。
「あ!馬車だ!」
このまま街に入り込むのは流石に目立つ。花の匂いも3人分有れば流石におとなしい魔物使いの魔物も何するか分からない。その為、貴族にアポとって彼らの馬車で乗り込もう作戦である。まあ、どうせ会議場所は伯爵家なんだしそれで良いでしょと言うミサさんであった。補足だが、彼ら3人がここまで来る際の移動中…魔物については逃げてきたとのこと。マイの昔の住みかは逃げても全部強力な魔物なので無駄である。しかしここいらは強力だったり違ったりとまちまちである。その為逃げると言う手段も使えるのであった。マイなら全部駆除するのだろうが…。
「これは皆さん。ようこそお出でくださいました。さてお乗り…」
「うん!」
「待て!罠かもしれないぞ!」
6歳と12歳が真逆の対応をしていた。
「ケリンさん。3人と言っていましたが、人選選びはどうしたんですか?」
颯爽心配なので聞いてみる。
「ああ、まずはおじいさまが俺を指定した。後は好きにとのことだったので…俺はもうおじいさまの場所に住んでいないからな。実際に住んでいる奴らの中で人に最も興味がある奴と一番敵対している奴をつれてきた。これならトントンだろう。」
うーん、極端すぎる!と思うがしょうがないか。私はあそこの住人じゃない。決めるのは彼らである。取り敢えずなんとか中にはいるとそこはどうやら6人席だった。そして中に既に2人待ち構えている。人数は7なので、私はシュウ君を膝に座らせることにした。まあ、足のような根っことは言えシュウ君程度で折れたりはしないだろう。触れている部分は勿論葉っぱで出来た擬似スカートである。勿論神経は通っているのであるが…花みたいに急所ではないので座られたところで体重かかってるなぐらいにしか思わない。それは数百キロとかが乗っていたら別だろうが…。
「お姉ちゃんのスカートゴワゴワするー。」
「まあ、葉っぱで出来てるからね。諦めて。」
「ちょ…人間を膝にのせるって…貴女雌花だけど許さないぞ?!」
12歳の雄花が言うが無視した。私の体が壊れないならなんでも構わない。
「この度は遠いところからわざわざ来てくださりありがとうございます。」
全員が乗り込み…馬車が出発すると中にいた女性…ムサビーネ夫人が挨拶した。
「ああ、構わん。下手にこっちも枯れ葉を出したくないだけだ。」
ムサビーネ夫人は若干警戒しながら会話していた。欲しい魔物が側にいる。しかし出来るならこんな戦々恐々とした状況で会いたくなかった。しかも調査するように命じたのは旦那達の会議で決まったことである。私は関係ないとは言えない。そしてシュウ君は…ムサビーネ夫人を見ると一瞬で目をそらした。
「はぁ。」
私はシュウ君を見てムサビーネ夫人を見た。ここで文句を言うのは場違いである。私はシュウ君の頭を撫でながら外を見るのであった。