譲らない貴族
『姫様。雄花達が進展はないのかと煩い様ですが…何か連絡来ていますでしょうか?』
「え、知らないよ…。うーん、まあ、今日はシュウ君に会いにいく日だし…次いででギルド経由してミサさんに聞いてみますか。」
『よろしくお願いします。雄花達って煩いですよね。もっと姫様を見習って欲しいです。』
このマイという雌花。ストレスが溜まるとグチグチ植物に文句を言うような雌花なのであるが…どうやらそれはカウントされていないのか、それよりよっぽど煩いのか…それは誰にも分からなかった。そしていつものように子供達と遊び…縄跳びという、マイはジャンプできないのであるが…をやった後、シュウ君を連れてギルドに向かった。そしていつも通り依頼を見るか見ないかよく分からないが…机に突っ伏していた。
「シュウ君〜。」
「お姉ちゃん?どうしたの。」
「ミサさんに声かけるの忘れた。呼んできてくれない?」
「うん?わかった!」
自分の主人を平気で手駒の様に使うマイであった。確かにマイとシュウは魔物と魔物使いという関係からは程遠い状態だが…あまり主人を手駒にするのは良くないのではと第三者目線である。シュウ君がミサさんを連れてきた。
「マイさん。マイさんはそのポーズじゃないと生きていけない病気なんですか?」
「そう病気…助けて…」
「はぁ…マイさんやっぱり時折意味わかりませんね。」
「意味不明で結構です。」
「これはやっぱり重症ですね。」
ミサさんも愛想を尽かせるレベルであった。
「で、先日の襲撃事件について何か情報ない?いや、植物達が雄花が煩いとか何とかでこっちまでクレーム来るの。」
「それはまた…植物の声が聞こえるというのは時と場合によっては不便ですね。」
「そうでしょ?ミサさんも聞いてみる?」
「え?聞くこと出来るのですか?」
「今すぐ転生して私と同種で生まれ変わればワンチャン。」
「まず私が死ななければならない時点でアウトですね。」
「えー。」
「やっぱり重症ですね。シュウ君。自分の魔物がおかしくなったらギルドに連れてこないとダメですよ?」
「え?だってお姉ちゃんいつもギルドに来た時はこんな感じだよ?それに午前中はいつも僕たちと遊んでくれるもん!」
「はぁ。この魔物にこの主人ありという感じですかね。」
「ミサさん。何となく私とシュウ君ともに侮辱された感じがるので2首絞めて良いですか?」
「毎回思いますが、マイさんが言った絞めるという行動を全部カウントすれば…私は何回死んでいるんでしょう。」
「それですよ。それで死ねば植物と会話出来るかもですよ?」
「まずは私が死ぬという前提を取っ払って欲しいですね。」
ミサさんはため息をついた。そして…とんでもないことを話し始める。
「話を戻しますが…ギルマスが先日の事件について貴族に問い合わせたのですが…やっぱり何とかして彼らの拠点を開拓したいらしいです。」
「はい??」
私はびっくりして机から飛び上がってしまった。ちゃんと座り直す。
「あれ、ギルマスとちょっと話したのですが…今ここの街は財政難です。まあ、理由は伏せておきましょう。それで、そのうちの一つの原因がこの街、魔物と過ごせる街ということでかなり辺鄙なところにあるんですよ。それゆえ、荷馬車の人件費がバカにならないとかどうとか。」
「それと開拓との関係は。」
「なんでも貿易先の街と既に打ち合わせ済みみたいでですね。あの森を開拓して森を挟んで両側を走っている街道同士を連結したいみたいなんですよ。そうすれば貿易もより盛んになり人件費も削れる。貿易先も領土ですが…彼らの方も開拓に向けて既に動いているのではと思われます。」
「は?じゃあ、相手方は既に襲撃されてたり?」
「いえ、どうやら彼らの住処は私達の領土側の道にあるようで、まだ向こうの街は気づいていないと思われます。でなければ、こちら側のハンターが手を引いただけで一時的ではありますが収束とはならないでしょう。とは言えこのままでは時間の問題です。向こうの街へ連絡するとなるとルート的にほぼ一度王都を経由してグルって回る必要性がありますし。また襲ったとなれば…もう誰が攻めてきても容赦ないでしょう。」
私は頭を抱えていた。
「要はこっちの貴族ももうはいそうですがと開拓を中断出来ないみたいでして…。」
「もうバカしかいないの?もう本当に私知らないよ。勝手に潰れれば良いじゃん。」
私はもう匙を投げる状態だった。
「そこを何とか…とハンターギルドは推しているのですが…。」
「第一繋げるなら別に他でも良いよね。なんで、あそこに拘るの?」
「ちょうど、あそこは山と山の麓なのです。それゆえ街道として開拓するには一番都合が良い場所だとかどうとか。」
「やっぱり面倒臭い。匙投げるわ。」
「マイさん。何か案ありません?このままではこの街は愚か、相手の街含め大惨事なのですが…。」
「知らんがな。帰っていい?」
「ダメです。」
「お願いだから何か困ったらとりあえず私は止めて。私そんな便利な魔法使えないわよ。」
「マイさんって魔法使えるんですか?」
「無理でしょ。ドラゴンじゃないのよ。炎なんて吐けないわよ。むしろ魔法教えて欲しいわ。」
異世界と言ったら魔法だろう。マイは自分の固定概念を勝手に押し付けているのだった。確かに魔法を使える人間もいる。ただ、マイは勿論何をやっても不可能である。と言うより人間に酷似でこれだけツルを使って無双しているのである。欲張りすぎである。
理不尽に見舞われたこの状況。皆さんが主人公ならどうしますか?