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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
孤児少年の辛辣な一日
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キレた受付嬢

「うーん、困りましたねぇ。マイさんが遠征先で死ぬとは考えられませんが…もし死んでしまっていた場合これではマイさんにこの街を破壊されてしまいます。」


 勿論死んでしまったらそんなこと出来ない。そんなのミサだって知っている。ただ、このお手上げ状態の時…マイなら何をするんだろう…ミサはそれを考えていた。


「そうですねぇ。シュウさん。まだここにいますか?」

「…うん。」

「わかりました。ちょっと離席しますね。」


 ミサはこの場を離れる。シュウは伯爵夫人に怒られたことを反復するかの如く心で復唱してしまっていた。このままではシュウは心が壊れてしまう。シュウの心の支えはマイであった。…いや、もうこれ自体が色々おかしいのであるが…。少しすると、ミサが戻ってきた。


「シュウさん。そこで座っていても埒があきません。折角ですのでもう少し、空気が美味しいところに移動しましょう。」

「うん…」


 と言って、連れて行った場所は中庭であった。


「あ…お姉さん…そっちは…」

「大丈夫です。もう授業は終わっていますよ。」

「で、でも…」


 ミサの行為は得策ではない。トラウマの場所に連れて行ってどうする。ただ、ちゃんと意図はあった。そこにはムサビーネ夫人がまだ待っていた。ミサさんは講義を暇な時は後ろで聞いている。ムサビーネ夫人には暇な時は聞いても良いかちゃんとアポは取ってあるのでいつでも参加できた。


「あ…先生…」


 ムサビーネ夫人のことをこの講義の時は全員先生と呼ぶ。


「あら、ちょっと帰るの待ってほしいと言うのはそう言うことだったの。」

「ええ。何があったのかは…まあ、本人にも聞きましたし大体予想は付きますが…彼にも事情があります。ちゃんと説明を聞いてあげてください。」

「そうね…あの時は時間がなかったし…言い訳ぐらいは聞いてあげようかしら。」

「え…えっと…」


 シュウ君は黙ってしまう。ミサさんはこれはしょうがないんじゃないかと思い代弁することにした。


「まあ簡単に言うと、手紙の連絡が遅れてマイさんと日程が合わせれなかったみたいですよ。ムサビーネ夫人の気持ちもわかりますが…シュウ君怯えちゃっていますよ。何を言ったらこうなるんですか?」

「うーん、魔物連れて来ていないなら受講出来ないから出ていけと言っただけよ。」

「そうですか。」


 シュウは…マイは知っているが、と言うより似たもの同士と言うやつか…かなり心がデリケートである。マイの場合はただそれを隠そうと気を強くしているだけ。ミサは結構鈍感であり、ムサビーネ夫人に至っては伯爵夫人ということもあり鈍感はおろか傷つける側だった。その為、何がいけないのか夫人に至っては全くわからないのである。


「と言うより私としてはね。」


 ムサビーネ夫人がシュウを見つめながら言う。シュウはさらに縮こまってしまう。


「そう言う言い訳も誰かを経由じゃなくて自分から言って欲しいんだけど。マイが貴方を庇っているのは知ってるけど…この際はっきり言うけど、あの魔物この子に甘すぎよ。立場逆転しているじゃない。本来は魔物は人間に指揮される側。貴方達の関係はどうなっているのよ。」


 実を言うとムサビーネ夫人はシュウ君に嫉妬していた。主に2点。1点目が何故マイという突然変異体を見つけることが出来ないのか。マイ達を初めて講義で指導した時からマイの同族を絶対テイムしてやると誓っていた。ただ、未だに見つけるどころか情報すらないのである。更に2点目として、マイとシュウとのやりとりについてである。ムサビーネ夫人はシロという知能が高い魔物含め全て主従関係で従属させている。しかし、マイとシュウにはそのような関係は全くない。シュウはマイを信頼し、逆も然りなのである。その関係を自分は作ることが出来ない。その悔しさも嫉妬の原因であった。


「お…お姉ちゃんは…」

「何よ。」

「お姉ちゃんは…僕を助けてくれた恩人だもん!…ヒーローだもん!…お、お姉ちゃんを…お姉ちゃんを…バカにするな!!!」


 シュウ君はムサビーネ夫人の発言に対しマイをバカにしたと思ったらしい。シュウ君自身も急に大声を出してしまったこともあり…まあ既に涙流しながらなのであるが…また引っ込んでしまった。


「うーん、収集付きそうにないですね。ムサビーネ夫人。これは受付嬢としての報告ですが、マイさんしばらく帰って来ませんよ。どうせここにはシュウ君しかいませんのでぶっちゃけますが…貴方達貴族が原因でね。」

「え?」

「目的については私も知りませんが、あの森にハンターを派遣する様依頼したのは伯爵様ですよね。掲示板に通知が貼ってありましたし。確かあの森一帯を開拓するために大量の人員が必要且つ魔物がいた時の魔物駆除でしたかしら。あそこにはマイさん曰く、マイさんの同族の魔物が住み着いているらしいです。それ故ハンター達は彼女らにやられて怪我人や死人が続出中ですよ?」


 ムサビーネ夫人の顔色が青くなった。


「マイさんも既に住み着いている魔物達に呼び付けられて行ってしまいました。多分あの子自分が死ぬのを覚悟して行っていますよ。だから敢えてシュウ君を置いて行ったのです。危険に巻き込まれないように。もし万一、マイさんが死んだ場合…マイさん呪ってでもこの街破壊するって言ってましたね。私ももしマイさんが死んでしまった場合、生涯永遠と貴方達貴族を呪い続けます。」


 マイが言ったことはシュウ君に何かがあった時なのではあるが…ミサさんは途中から怒りで捏造してしまっていた。ミサは時と場合には相手がギルマスだろうが貴族だろうが関係なしに食ってかかる悪い癖がある。それが今回ばかりは良い意味で効果があった。


「な…わ、私は…」


 ムサビーネ夫人が今度は震える番になってしまった。


「まあ、そうですね。しばらくマイさんとシュウさんはこの講座に呼ばない方がよろしいのでは?シュウ君もこんな感じで怯えちゃっていますし、多分このこと知ったらマイさんブチギレますよ。何するかわかりません。まだマイさんは意味不明なところも多いので。シュウ君。話が脱線してしまいましたが…とりあえず、しばらくはこの講座お休みになると思うのでそんなに怯えなくて大丈夫ですよ。」

「う…うん…」


 最終的に軍配を挙げたのはミサさんであった。そして、この内容は植物達もちゃんと聞いている。マイへ情報が直行するのであった。

 普段キレないタイプがキレると怖い。

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