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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
植付けられた恐怖
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兄弟姉妹の所存

 と言われてしまったので深く考えないことにする。実際人間の時だって、脳が体に命令して動かしてはいるが具体的に脳みそが筋肉を引っ張ったりしていない。どうなっているかはあくまで推論でしかないんだから、考えるだけ無駄な感じはしている。そして今の時間帯に戻り、ある日の夜…寝付いた頃、過去100年間のトラウマな夢を見ることになった。生まれて少しして気になっていたことがある。それはおばあちゃんがよく言う『394番目の子』である。要は年上の兄や姉が393人いることになる。でも誰とも会ったことがない。おばあちゃんに聞いてみると、


『そのうちじゃ。。。』


 とたぶらかされてしまった。そして、そのうちは意外に早く、私が生まれてから半年足らずで来ることになる。おばあちゃんの木の上の方につぼみが出来て花が咲いたのである。


(私と同じ!)


 おばあちゃんの木は何故か葉っぱが一つもない。花も咲いていない。どうやって生きているのか全くわからないが、ただいつもちゃんと喋ってくれるし生きているんだろう。そしてその象徴でもあるかのように花がひとつ咲いている。


(私の妹?弟かなー。早く会いたい!)


 数日待っていると、その花は知らないうちに下に落っこっていた。


(どうなるのかなぁー)


 とワクワクしているとおばあちゃんから声がかかった。


『394番目の子よ。すまぬ。その花を上に向けてはくれぬか?』

「え?」


 よくよくみると、落ちた花は咲いている部分が下を向き、木と繋がっていた部分が上になっている。


『妾も初めは気づかなかったのじゃが、花が上を向いていないとお主のように体を作れないみたいなんじゃ。初めての子から24番目の子までは発育しない理由がわからなくてのぉ。気づいたら枯れてしまっておったわい。』


 マジか!とりあえず、花を拾い上げ花を上向きにしてあげる。何も起こらない。


「何も起こらないよー。」

『大丈夫じゃ。姿勢さえ正しければ自ずと体も出来る。大体1日ぐらいかのぉ。』

「じゃあ待ってるー!」


 と言うことで、当日は次の日をワクワクしながら寝た。そして翌日起きてみると…花が落ちた場所には何もなかった。


「おばあちゃん!昨日のお花は!」

『うーむ。妾も丁度起きたばっかりでのぉ。見張りの植物の話によると深夜に成長しきってしまったようでの。そのまま森に行ってしまったらしいのじゃ。』

「え!で、でも、森の奥って…」


 おばあちゃんは何も言わなかった。要はそう言うことなのだろう。おいおい聞いた話だと、おばあちゃんも勿論眠るが魔物がこの草原に侵入してこないかは色々な植物が年中無休で監視しているらしい。もし近づいた場合どうしているのかはよくわからなかったが、その監視がここの草原を安全地帯にしているとのこと。次に花が出来た時には丁度深夜におばあちゃんから落ちてしまったらしく、私がおばあちゃんに言われて花を上に向かせてもそのまま枯れて行ってしまった。それを考えると、多分私の兄や姉にあたる393人の子供は全員死んでいるのではないか。そう思わざるを得ない状況であった。


『妾も幾らか話を聞くのじゃがのぉ。聞いた範囲ではお主以外生きていたとしても行方不明なのじゃ。』


 行方不明ということはどこかで生きているのではないか?そう私は期待することにしたが、その思いも打ち砕かれることになる。おばあちゃんは大体年2回ぐらい花をつける。そして数年経った時、


『お主は妾の401番目の子じゃ。良いか?この草原から出ては行かんぞぇ。草原の外は魔物で一杯じゃ。生まれたばかりのお主では食べられてしまう。』

「おおおーーー。」


 遂にちゃんと成長した私の弟?妹?後輩?なんでもいいや!とにかく枯れることなく誕生したのである。私は嬉しさのあまり走れないのに走って顔から草原に突っ込んだのを覚えている。


『394番目の子よ。何をしているのじゃ。お主の花は美しいんじゃ。そんなお転婆娘では先が思いやられるのぉ。』

「いいのー!それより、妹!弟!」

『うーむ。妾の子は全員同じような子じゃからのぉ。』


 実際に生まれた子に会った時体つきが全く同じであることに気づいた。顔はいわゆる「可愛い」。人間も体つきは男女を除けばあまり変わらないから多分顔や頭に付いている花ぐらいしか違いはないのかなぁ。と思った。で、そこまでは良かった。生まれた私の…以降妹とするけど…妹は草原を抜け木々の方に入ってしまっていった。


(え?!なんで!おばあちゃん危険って言ったじゃん!)


 慌てて追いかけようとしてまた走ろうとし、転んでしまった。


「ちょっと、待って!」

『394番目の子よ。もう良い。』

「え!」

『401番目の子はまだ未熟のようじゃ。どうやら妾の声も聞こえていなかったように思われるのぉ。』

「え?!だって私は生まれた時おばあちゃんの声聞こえたよ!」

『…お主だけなのじゃ。今まで、上手く生まれて成長した直後に妾としっかり会話出来たのはのぉ。』


 話を聞くところによると、上手く成長できても会話が出来なかったらしい。今の妹はすぐ森の奥へ行ってしまったが、別の子では立ち往生する子もいたとの事。しかし、数日の間に皆んな森の方に行ってしまったらしい。まあ私も、おばあちゃんに声かけられなければよく分からず森の方に向かっていたし、人のことは言えない。


『森へ入ってしまったら分からんのじゃ。草原から少し離れたぐらいなら他の植物に聞けば大体の状況はわかるがのぉ。上手く切り抜けたという情報も稀には上がるがの。その先までの情報は入って来ぬ。』


 稀ということは他は大体死んでしまったのだろう。植物の伝達網的に探せば奥地に行っても分かりそうな気はするが、分かったところで未熟児を森深くに投げ込んだ形である。聞きたくなかったのかも知れない。


(それにしてもどうして私は生まれた直後におばあちゃんの声がわかったんだろう。。。)

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