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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
孤児少年の辛辣な一日
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伯爵夫人の叱責

(あーお姉ちゃん大丈夫かなぁ…)


 時間は遡り、マイがデレナール領からケリン達がいる森に向かった次の日…シュウはマイのことを心配しながら孤児院で生活していた。


(とにかく、お姉ちゃんは死なない!僕が信じないで誰が信じるんだ!)


 孤児院の午前中は本来は子供達の勉強時間である。マイが来るときはマイと遊んでいるがそれ以外は例えば文字の勉強とかそう言ったことをしていた。孤児院の子供は大抵がハンターになる。そのため、最低限の文字や数字が読めないと依頼すら受けれない。また、10歳を超えた時…金銭問題もあるが学校に行くと言う手段もある。勿論お金がない孤児達には夢の夢なのであるが、学校へ入学できる最低レベルの知識は入れてあげたい。と言うのがこの孤児院の方針でもあった。そして、昼になる。シュウはいつも通り昼食を食べていたのであるが…先生から手紙を受け取った。


「シュウ君。ムサビーネ夫人からの手紙みたいよ。」

「あ、教育訓練!」


 魔物使いは定期的にムサビーネ夫人が開く魔物使いの訓練に参加することが義務付けられている。ただ、いつ開催されるかは不明。そのため、こうやって開催日が近づくと手紙がくる。しかしこの手紙、どこかで迷走していたのだろうか…本来よりシュウに届くまで時間が掛かっていた。


「えーっと…次回の訓練日は…え、明日?!?!」


 魔物使い訓練は魔物使いと魔物がペアで参加するものである。そしてマイは昨日森の中へ出発した。要は明日マイがいるわけがない。


(どうしよう…お姉ちゃんいないよ…)


 植物に声をかければマイに連絡だけは行ったかもしれない…いやそれもないか。植物達は孤児院の周りを除きシュウではなくマイ優先である。途中で連絡は途絶えるだろう。移動中のマイに帰って来いなんて言うのはマイの行動妨害なのだから。颯爽シュウにも違う意味で地獄が迫っていた。シュウはどうしようもなくその日は不安に煽られながら過ごし、翌日孤児院の先生の許可を貰いギルド裏の中庭に行くことになる。先生達は勿論、シュウにマイがいないが大丈夫か聞く。本来当日は常にマイが孤児院にシュウを迎えにくる。本来手紙は講習の1週間ぐらい前には来ているのである。その為マイにもその情報は必ず届く。しかし、郵便物の不手際により今回はマイにその情報が届かなかったのであった。シュウはどうしようもなく先生達に大丈夫と嘘を言って講習に向かうのであった。先生方もまあ、そう言う日もあるのかなと素通りしてしまったのである。その結果…ムサビーネ夫人から雷が落ちた。


「では今日の講習を始めて…あら、シュウ君。マイさんはどうしたの?」

「あ…えっと…」


 マイも人見知りである。ただ、マイの場合初見は自分を偽る性格である。しかし、シュウはマイより酷かった。とりわけ、ムサビーネ夫人はデレナール伯爵夫人。とんでもないぐらい権力が高い。それゆえいつも怯えているのであった。


「シュウ。この講座は人間とそのパートナーとなる魔物が同時に受けて初めて授業となるの。連れてきていないなら授業にならない。今すぐ出て行きなさい。」

「え…でも…」

「言い訳は後でいくらでも聞くわ。さあ!」

「う…」


 シュウは何も言えず中庭を立ち去ることになった。シュウはギルドに戻りそのままずっと泣いていた。


「シュウさん。どうかしましたか?」

「…なんでもない。」


 ミサさんが機転を聞かせて声をかけてくれた。しかしシュウは応じることが出来なかった。


「えーっと、確か今日はムサビーネ夫人の…あ…」


 ミサさんは意外と頭がキレるタイプである。でなければマイをあそこまでいじり倒せまい。


「シュウさん。確かお手紙は先週には受け取っていると思います。マイさんに今日の講座のことを言わなかったのですか?」


 シュウは首を横に降る。ミサさんは腕を組む。


「マイさんに言うのを忘れたとか?」


 シュウは再び首を振る。ミサさんは再度考え込む。


「すいません。私も仕事が残っているので…シュウさん。ちょっと同僚に話してくるので待っていてもらえませんか?」


 ミサにしてみれば、大事な実験台の魔物使いである。ある意味理由は酷いが、放って置けないのであった。ミサさんは再びシュウの元に戻って来る。シュウの隣に座りシュウの頭を撫でてあげた。マイの様に。


「シュウさん。どうして泣いているのか…まあ、全く予想出来ないわけではありませんが…泣いているだけでは糸口になりません。落ち着いたらで良いので話してくれませんか?」


 シュウが落ち着くまで10分程度掛かった。シュウが落ち着いてくると、ミサさんはシュウに何があったか問い合わせる。シュウは全てを吐き出すかの様に全部を話した。


「あー、手紙の手違いか何かですかね…まあうーん…そう言う時もありますよ。」

「で、でも…う…」


 シュウにしてみれば途中経過もなんでもどうでも良かった。ムサビーネ夫人に怒られた。それだけが精神的大ダメージであった。マイも認めているが、あの夫人はかなり厳しい。実際、この講座も普段シュウはマイが側にいるから講座を受けれると言う感じなのである。マイは前世パワハラ上司に何度も当たっている。その為、ムサビーネ夫人はそれに比べればまだマシと言う感じなのである。ただ、シュウが怯えていることも知っていたので極力直接攻撃に当たらないようにマイは気を使っていたのであった。


「大丈夫です。世の中誰でも失敗します。マイさんが住んでいた森の中じゃないんですから、死ぬわけじゃないですし、あーあやっちゃったぐらいで大丈夫ですよ。」


 ミサさんはある意味でマイの理想像であった。要は何か言われてもふーん程度。失敗してもまあいいかぐらいの思考回路なのである。それゆえ逆にシュウが何故ここまで怯えているのかマイとは違い理解することが出来なかった。

 皆さんがシュウと同じ立場ならどう対応しますか?

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