侵入
「マイさん。申し訳ありません。ギルマスについてもこの件はどうしようもないとのことで…マイさんは彼らが言う通りその場所に行ってきて貰えないでしょうか。本当に申し訳ありません。」
ミサさんが土下座して謝罪していた。現場に居合わせている他のハンターや受付嬢…神父だろうか、回復魔法をかけている人たちもいる…も何事かと私達の方を見ていた。
「はぁ…人間如きが魔物に頭を下げると言うのはどうなのかしらねぇ…。」
「本当に…本当にお願いします!」
ミサさんは必死だった。プライドなんてもうどうでも良い。マイが動かなければ何が起きるか全くわからないのである。マイは突然変異体の魔物としてギルドでは認識されている。その仲間に喧嘩売ったのである。最悪この街が破壊される。ミサさんはそこまで考え苦しんでいた。
「じゃあ一つだけお願いしていい?」
「はい。なんなりと。」
「万一があったら、シュウ君の面倒見てあげてね。ちゃんとした生活を送れていないなら天国なり地獄なり私がいたとしてもこの街ぶっ壊すから。」
「ええ…それぐらい朝飯前です。」
「はぁ…行くわよじゃあ。行けばいいんでしょ行けば。シュウ君、ごめんねしばらく会えないけど…最悪もう二度と会えないけど…シュウ君と過ごしたこの数年楽しかったわよ。」
「ヤダヤダ!」
「と言われても…」
「お姉ちゃんは絶対死なないもん!今までもそうだったもん!だから絶対生きて帰ってくる!僕との約束!」
「シュウ君。…分かったわ。血眼でも帰ってきてやる。だから安心して待ってなさい!」
「うん!」
そうして私の一人旅がまた始まるのであった。とはいえ、出発は明日にした。今日はこの後シュウ君を孤児院に帰し…拠点で光合成したりしながら回復。明日の為に備える。今回私は森の中を移動である。移動中も光合成出来る範囲でしたい。それゆえ服は邪魔なので置いて行くことにした。帽子については防臭効果がある。普段は蒸れてしまうのと光合成の邪魔なので森の中では脱ぐことが多いが…移動中に魔物に襲われると面倒臭い。そのため、移動中は付けることにした。そうすれば帽子を外す休憩中を除き魔物に見つかりにくくなる。それだけでも時短になる。それだけを意識した上で移動開始である。まあ、時折植物達から魔物アラートがなるが、怒り任せで全員束縛していった。私から半径2km以内にいる私に気づいた或いは戦闘を仕掛けようとしている魔物全員駆除対象である。相手の事情や慈悲は一切ない。そこら辺は優しさより魔物としての本能が勝っていた。疲れたら光合成で回復。シュウ君いないので食べ物の心配もない。ただ、光合成がある程度出来る木漏れ日が差し込む場所がないとどうしようもないので…地面は森のため何処も腐葉土だから問題ない…そのルートは植物に調べさせながら着実に無理のない範囲で目的地へ向かった。そして、まあゆっくり移動ということもあり3日かかったが…目的地近傍まで到着した。
『姫様。ここからかなり離れていますが…どうやらハンター達もこの辺りを拠点にしてウロウロしている様です。おそらく、姫様が警告した内容はまだこの辺りの人間には届いていないのでしょう。彼らもかなり警戒していますので、関わらない方がよろしいかと。』
「分かった。方向さえ教えてくれればそっちには行かない様にする。」
どうやら打倒木の魔物ということでハンター達も屯している様である。これ本当に私立場ないな。なんで人間と生活なんてしているだ私。目的地にある程度近づいた時警告がなった。
『姫様!それ以上先は姫様の同種の縄張りになります。土足で入れば攻撃されるでしょう。まずは挨拶し、入る許可をもらった方がよろしいかと。』
「分かった。どうやって挨拶すればいいの?」
『姫様の方で入る許可を依頼すれば我々が伝言形式でお伝えにあがります。』
「じゃあそれで。」
『了解しました。少々お待ちください。』
待っている間に、射程範囲内に人間が1人入ろうとしているという情報が流れた。私は木に登り、対象を発見するかしないかというか感覚で人間を束縛した。何かしら声が聞こえたが無視である。木の根っこで背骨がおられるよりはマシだろう。
『姫様。許可が降りました。入ってきて大丈夫とのことです。』
「分かった。襲ってこないんだよね。」
『大丈夫です。ですが、姫様も場所とかの情報は既に流れております。お気をつけて。』
「了解。」
そして私は敵地へ乗り込むのであった。少々ツルを使って雲梯のように進んでいくと…昔見慣れた風景が広がっていた。まあ、当時の場所より草原の範囲が狭いのと…周りにそこまで強力な魔物がいないこと…後は街道に近い側に人間が屯しているぐらいだろうか。そして、草原の中央には…おばあちゃんに比べると一回り小さいが枯れ果てた木が立っていた。まあ、おばあちゃんと同じなら枯れてはいないだろうが。更に歩きながら木に近づくと…なんと、私と同じ様な姿の魔物が、7人もいるではないか!大きさは小さいと人間換算で6歳ぐらい。大きいと20歳超えているんじゃないかという大人っぽい魔物もいた。全員頭に花を乗せ…色はマチマチである。全員女性から女の子であった。私が近づくと全員がこっちを見る。




