戦ってはいけない魔物
「あ、ちょうど良いところにちょうど良い魔物がいるじゃないですか!」
誰かがこっちへやってきた。声的に誰かはわかったので反発する。
「すいません。ここにいるのは男の子と女の子だけですよ。」
「女の子がそんな冷静な発言しませんよ。マイさん。」
「顔見ていませんが、ミサさんのその発言的に面倒事巻き込みますなんですよ。やめてください。」
「少なくとも机に突っ伏してないで顔上げてくださいよ。話はそれからです。」
「すいません。今私机に顔くっつけないと生きていけない病気なんです。」
「なんですかそれ?どんだけ私と会話したくないんですよ。」
渋々私は突っ伏したままミサさんの方を向いた。
「で、ご用とはなんでしょう。」
「ええ、今回のハンター達からの情報によると…詳しいことは企業秘密のため言えないのですが…現地で木の根っこに襲われたみたいなんですよ。で、その話が昔マイさんが1人で生活していた時のことを話してくれたことがあったじゃないですか。それと似てる様な気がしまして…。」
私は目を見開いた。単刀直入にいう。もし私の予想が的中しているなら関わってはいけない魔物である。
「一応聞きたいんですが、そのハンター達どこ行っていたんですか?」
「え、場所ですか?」
「はい。」
「あー、ちょっと待ってください。地図持ってきます。」
ミサさんが席を外した時、私は突っ伏している状態から普通に椅子に座り直した。
「お姉ちゃん…何か分かったの。」
「嫌な予感がするんだけど…私の直感が正しいなら、私のおばあちゃんと同じ種類の魔物にハンター達は喧嘩ふっかけたことになる。」
「どういうこと?」
「うーん、なんて例えれば良いんだろう。シュウ君に分かりやすく例えるなら…ドラゴンって知ってる?」
「うん!とんでもなく強いんでしょ!」
「そうそう。それ数匹にハンター達は攻撃を仕掛けたことになる。」
「え?」
シュウ君の顔が青くなった。ドラゴン…一頭だけでも倒すにはAクラスレベルのハンターが必須。しかも、彼らは知能が良い。仕掛けてしまったら最悪逆襲として人里を襲う可能性もある。まあ、ムサビーネ夫人の話を総まとめすると彼らも人間と会話出来そうだが…まあ、喧嘩売ってはいけない魔物である。勿論向こうが先に仕掛けたら太刀打ちするしかないが…。
「マイさん。場所聞いてきましたよ。」
ミサさんは地図を持ってきて大体の位置を教えてくれた。私は青ざめながら頭を抱えた。地獄の始まりである。
「マイさん。どうしたのですか?具合悪いんですか?」
「はぁ…ミサさん。愚痴って良いですか?」
「ええ。」
「なんで私が人間の犯した罪を全部背負わなければならないんです?勝手に全滅してくれませんか?私達シュウ君連れてここから出て行きたいんですけど。」
「え?どういうことですか?」
私はため息しか出ない。
「ちょっと前に…おそらくですが…その位置らへんに済む魔物達から連絡があったんですよ。来て欲しいって。話を聞く限り私と同位種みたいですよ。来て欲しいとのことだったのでなんだろうと思っていたのですが…原因どう見てもこれじゃないですか!」
連中のことである。どうせ私が人間と生活しているとバレているに決まっている。勿論ハンターが何処から来たかなんか植物に聞けば一発だろう。それこそ行きたくなくなってきた。私行ったら殺されるんじゃね?そういった推論を2人に話した。
「え?お姉ちゃん何処か出かけるの?」
「あ、まだ言っていなかったわね。うん。1週間前後あけちゃうかもしれないけど…ちょっと我慢してね。」
「えー。僕も一緒に行きたい!」
「うーん、ダメよ。絶対危険だし…第一移動中の森に人間が食べれる食べ物があるという保証はない。シュウ君も一回体験したでしょ。森の奥からこの街に行くときにどれだけ酷い目を見たか。私1人なら平気だけど、シュウ君連れて行くということはシュウ君また同じことになるよ。しかも前よりゆっくり行こうと思うからそれだけで餓死ね。」
「ううう…」
シュウ君は落ち込んでしまった。
「とはいえ、マイさん1人で行かせるのはどうかと…大丈夫ですか?」
「大丈夫云々の前に大丈夫なわけないじゃない。私人間と生活しているのよ。そして、人間が彼らの住処に攻撃したんでしょ。私何しに行くの?殺されにでも行くのかしら。」
「ではやっぱり護衛とか…」
「護衛は人間でしょ。もっと私が危険になるんだけど…情報まだ入ってこないけど…と言うより向こうも細かいことは話せないとか言っているけど…彼らの敵連れていったら更に私の立場おかしくなる。」
「では魔物使いの魔物とかはどうでしょう。彼らならば人間では…。」
「私のおばあちゃん、住処の側に来た魔物一掃していたって言わなかったかしら。」
「………」
ミサさんも黙りこくった。要はこれぐらいとんでもないことをハンター達はやってしまったのであった。
「マイさん。すいません。この件について、ギルマスの判断を仰ごうと思います。いや…マイさんいなかったらそれこそ総動員で…ハンター達全員でそこの場所に仕掛けに行くところになっていたかもしれませんよ。非常に助かりました。」
ミサさんは考え事をしているかの様な顔でギルマスの部屋に向かった。私は机に広げられた地図の上に再び突っ伏した。私の未来が見える。いや、今更感であるが行くと言う回答を撤回すると言う手段もある。ただ、この状況でそれをやったら…私がおばあちゃんだったら本当に私の事を敵と判断するだろう。敵地に侵入した仲間がそっちの方が自国より住みやすいからそっちに住み着きますーと言っている様なものである。敵認定確定である。
(選択肢はないんだろうなぁ…)
無視して殺されるのを待つか、九死一生をかけて指示された襲撃現場の内部へ行くか二択であった。地獄は目と鼻の先ではあるが…ミサさんが戻ってきた。