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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
同位種からの警告
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伝言

「取り敢えず、伝言って何?」

『はい。ここからかなり離れたところなのですが…そこに姫様と同位種が住み着いております。事情については内密とのことなのでお伝えできないのですが…姫様にぜひお会いしたいとのこと。要は来て欲しいということですね。』

「…は?」


 色々突っ込みたいが、一番のツッコミは私と同位種がいると言うことである。一応だが、私の認識の限りおばあちゃんの子供は私以外全滅している。それ以外全く知らないので…おばあちゃんとは別に同じ様な団体がいるということだろうか。


「うーん、色々気になるけど…それって私みたいな容姿なの?」

『ほぼ同じです。』


 ほぼ?どういうことだろう。人間同士も顔付きが人によって違う。そういう意味だろうか。


「だったら私の方に来るとか出来ないの?」

『姫様。姫様のおばあさまはお亡くなりになったとお伺いしておりますが…相手方もその様なお方とのことです。姫様が向かうしか方法がないかと。』


 マジか。確かにそれなら文句を言いようがない。おばあちゃんは私が生まれた時には既に木であった。自力で動くことは不可能。相手はおばあちゃんみたいな魔物ということか。


(うーん、大丈夫かなこれ。)


 疑念点が私の頭を過ぎる。単刀直入に言う。おばあちゃんは私達子供を守るため部外者は駆除していた。それをやられたら溜まったものじゃない。目的地に行く前に死んでしまう。私は端的にそのことを植物に伝えた。


『はい。ですのでお返事というのはその内容になります。姫様が行くという返事をすればおそらくは襲ってこないかと…。』

「うーん…まあ、私と同じ魔物というのは気になるし…取り敢えず行ってみますか。期間的には往復どれぐらいだろう。」

『姫様の実力的に、ツルを使って無理のない範囲で移動するとなれば往復1週間程度でしょうか?勿論姫様の疲労回復による調整も必要になります。お身体優先なので1週間で往復する必要性はございません。』


 前世ではスケジュール管理必須でちょっとズレたら大量の残業であった。今回の話では気楽にどうぞである。まあ、場所を確認した限り…山の上というわけではないが明らかに森の中。魔物はいっぱいなのでどこが気楽なのか教えてほしい。


『ではその様にお伝えしておきます。出発は如何いたしますか?』

「明日でいいんじゃないかな。今日は午後シュウ君とお散歩したいし。」

『デートですね。応援しております。』

「うるさい!」


 シュウ君は人間、私は魔物である。更にシュウ君は魔物使い、言わば私の主人にあたる。まあ主人なんてこれっぽっちも思っていないが第三者目線ではそんな感じである。これは誰がなんと言おうが…たとえ本人達が願おうが…変えることは出来ないのであった。


(全く…とはいえ、私が人間として生まれていたら…うーん、まずこんなに生きていないしなぁ…後互いに幼すぎでしょ。まず私が10歳の立ち回りしていないし。)


 デートという言葉に翻弄されていたが、後ろから声がかかった。


「あ、マイさん。休憩中でしたか?」


 孤児院の先生の1人だった。


「ええ…まあそんな感じです。」

「そうですか。ちょっとお伺いしたいのですが。」

「はい。」

「マイさんって、子供達と遊ぶ時普段からあんな感じなんですか?」

「えーっと、今日の鬼ごっことかですか?」

「はい。」


 確かに今日は鬼ごっこであったが、別に他のこともしている。第一この孤児院見ただけでわかる通りオンボロ。室内の壁と床の隙間から草が生えてしまっているレベルである。その草に人間の文字を教えてもらったりしているので私としては助かっているのであるが…。まあ、そんな感じで普通に人手不足であった。そう言ったこともあり、私が孤児院に来た時には私が孤児の面倒を見るという意味不明な文化が発生している。魔物だから給料0で使い倒せる。差別なのであった。


「今日ちょっと仕事が落ち着いていたので、子供達の様子を見ておりましたが…ちょっと過激過ぎません?」


 鬼ごっこの初めの頃は鬼1VS私含めた皆んなであった。要は普通の鬼ごっこである。しかし、最終的には私VS孤児院全員。私は気に登ったりツルで足だけであるが束縛したりもする。子供達もそれに引きつられ木に登ったりとまあ…安全第一かと言えばそんなことはなかった。


「うーん、私にしてみればあれでもかなり手加減しているんですけどね。」

「マイさんもマイさんですよ。逃げる時マイさんに付いているツルを使っている様ですけど…体が地面擦ってる時ありません?擦り傷付いていそうでこちらも心配です。」

「あー、まあたまに怪我したりしますが…それは私の話ですし、あれぐらい森の中だったら全然大丈夫ですよ。森の魔物とやり合ったりしたら一歩間違えれば怪我ではなく死です。それに比べれば全然。」


 孤児院の先生と私の考えは違っていた。簡単に言えば人間と魔物の考えの違いである。人間にしてみれば、まあ運動すれば怪我することは仕方ないとしても…極力そう言った大怪我のリスクは抑えたい。対して私にしてみれば、そんなもの怪我云々ではない。森はもっと何百倍も過酷という考えである。


「そうですね…まあ、ここは孤児院です。子供達が大怪我するのは避けたいですし、それはマイさんも一緒です。もう少し、安全な風にしていただけると幸いなのですが…。」

「と言われてもなぁ…。」


 じゃあお前やれよ!とは言えないマイであった。それが言えるなら前世鬱で苦しんでいないだろう。先生方の事情も理解している。既にギルドマスターやムサビーネ伯爵夫人にはこの孤児院なんとかしろと報告しているのだが…ギルドでは「孤児院に募金を」みたいなポスターが貼ってあることは知っているけど…やっぱり財政難なのだろうか、改善はあまり見られていなかった。とりわけ私は時給0、言わばサービスで仕事をしている感じである。それ故、ちょっとでも自分のために…ということで子供達と遊ぶ時には私の修行に付き合ってもらうという風に弄っている。そこまで叩かれてしまうとやる気も削られてしまう。


「検討だけしておきます。」

「ありがとうございます。」


 そんな感じで先生は去っていった。私は「はぁ…」とため息つきながら、前世と同じ道辿りそう…私は魔物として自由に生きれるんじゃなかったっけ?と苦渋するのであった。そして午後、私はシュウ君とデート…ではない!お散歩を楽しむことにするのであった。

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