植物との共生
おばあちゃんとはそう言ったたわいの無い話もしていた。話といえば、生まれた直後はおばあちゃん以外とは話さなかったし、それ以外の声も全く聞こえなかったが、年を重ねるごとにおばあちゃん以外にも色々な植物の声を聞くことが出来るようになっていった。問題はここらへんは草原、ちょっと離れると森林。どっちも植物だらけなので煩いことである。人間でいうところの常に人混みにいる感じ。勿論、私は草原にいるので足元以外草には触れないが声は四方八方から聞こえてしまう。
『姫様!今日もお花綺麗ですわ!』
『姫様?そっちの地盤は先日の雨で緩んでおります。お気をつけて。』
何故か姫様呼ばわりされるが原因はわからなかった。おばあちゃんに色々聞いてみると、
『声については慣れるしかないのぉ。今後の為じゃが、お主が自立した時に出会う植物達には全員じゃなくて良いから挨拶はしておくのじゃ。困った時に助けてくれるぞい。あー、後姫については妾も良くわからぬのぉ。お主が可愛らしいからだけかもしれぬ。ただあれじゃ。色々な植物から信頼されているということかもしれぬのぉ。』
確信持って言えることは、おばあちゃんは間違えなく何か知っている。ただ、教えてくれないだけということである。おばあちゃんはこういう事が多いからその時には「そのうちそのうち」と言い聞かせて流すことにしている。まあ、姫の件は置いておくにしろ、この植物達の会話はものすごく役に立った。例えば
『最近、北の方角にバトルウルフが巣を作ったそうよ?』
『あら、物騒ねぇ。爪を研ぐのに幹を引っ掻くんだって?』
『そうそう。あっちの子達も大変ねぇ。』
植物はそこらじゅうに生えている。それゆえ情報伝達がかなり早いのである。他にもとりわけ鹿が増えてきた頃、
『姫様!後ろの方に姫様を威嚇している鹿がいます!』
『姫様!もうちょっとツルを出す場所は前です!』
等々、死角情報や遠いところの情報を指示もなしに言ってきてくれるのである。これが私への鹿からの不意打ちを自動回避させていた。私に用がない時には別に『姫様!』とかは言わないので、それをもって私にとって特に重要な情報か否かを判断することが出来る。多分おばあちゃんの意図的にちゃんと交流しておけばこういう意味でも私を助けてくれるんだろうという思いなのかなぁと思った。
『394番目の子よ。そろそろ就寝時間じゃ。』
「はーい。」
寝るときはおばあちゃんの木の根元あたりで眠る。おばあちゃんの木は土が流れたのかどうかは知らないが、根元あたりにある程度の大きさの隙間がある。そこに入って隠れるように眠るのである。寝てる間に襲われたら溜まったものじゃないというのとおばあちゃんにも
『眠る時は妾が守ってあげるぞぇ。そうじゃな。入口は自分でツルを作って寝る前に塞いでおくと良いかもしれんのぉ。』
とか言われた経緯がある。ツルを操れないうちは入口開放で寝ていたが、ツルを操れるようになってからは寝る前にツルで隙間の穴を埋めて眠ることにしている。なおツルは、地面から生やした場合直接は私と繋がっていないため切れたりしても痛みは感じない。まあ、腕に巻き付いているツルも長く伸ばした場合は伸ばした部分においても痛みという概念はなかったため切れても問題ないと思う。そして生やしたツルは一度独立させても、取り除こうと自分のツルを地面に刺せば再度操る事も出来る。どういう原理かはわからないけど、おばあちゃんに
『魔物なんじゃからそういうものと受け入れた方が良いぞい。』