「花」VS 孤児院の子供達
(鬼が走り始めたわね。さて、とりあえず私以外は早く全滅して貰おうかしら。)
別に逃げる側を妨害する気はないが…鬼役が誰かを捕まえれば捕まえるほど逃げる側は不利になる。とはいえ、私はツルを柔軟に扱い鬼に狙われたら足元を束縛したり、木に登ったりして捕まらない様にしていた。卑怯と思われそうだがそんなことはない。私は魔物だし…私はあくまで植物の魔物。一応歩けるが走ることが出来ない。要はツルを使った巧みな技術がなければ真っ先に捕まってしまう。かなりのハンデである。特に後半戦は鬼が7人とか8人とかすごいことになる。挟み撃ちとかも普通に出来る。子供相手とは言え、今後万一対人戦とかになったらと考えた時にこの鬼ごっこは私にとっての完璧な修行なのであった。
(うーん、今日はやけに全滅するの早くない?)
植物との会話を元に誰が鬼かを判断しているがもう既に全員捕まっている模様。言わば逃げる私VS孤児院の子供全員である。シュウ君もこの時ばかりは自分の魔物とか関係なしに襲ってくる。まあ、本人たちは鬼ごっこを楽しんでいるだけだが…。
(やっば…もう挟み撃ちだし。)
既に前に3人、後ろに2人である。私は走れない。颯爽詰み…ならば私はこの150年間魔物の巣窟で生きれるはずはない。手から伸びるツルを地面に刺し、全員束縛する。束縛と言ってもさっきも言ったが足をツルで掴む程度だけど。一応補足だが、両手のツルを地面に刺せば複数のツルを同時に地面から出し操作出来る。とはいえ、数が多いと所謂マルチタスクとなり制御が困難になる。そのため、側にいる子供から2人ずつ妨害していった。
「むむー、ツルに邪魔されるー!」
子供達からクレームが来るが知ったことではない。さらに私は地面に刺したツルを引っこ抜き、側にあった街灯にツルを伸ばし結びつけツルを短くする。体が浮かび、囲まれた窮地から脱出した。
「そんな簡単に私は捕まらないよー。魔物を舐めちゃダメだよー。」
一応私のルールで束縛した子供も私がある程度離れたら解放してあげると言うものがある。まあ、鬼同士でツルを解くのもありだが…。そうしないと、全員束縛して私の無双になってしまうのでしょうがない。別にこれは対人実戦ではない。そんなことしても何にも面白くないからね。互いに。まあ、子供達に魔物は人間とは違って脅威なんだよ?と教える意味も私なりに考えて実施しているのではあるが…マイは束縛や逃げる以外にツルは使わない。別に子供達をツルを使って半殺しにしようとか、食べてしまおうとかそんなことはしていない。その為、このゲームで子供達が魔物が危険であるという認識を教えるのには無理があるが…。むしろ、マイが一緒に遊んでくれるのが原因で魔物は人間に親密というよく分からない概念を植え付けていたりするのであるが…マイは把握していなかった。
「むむー、皆んな!作戦会議だ!今日はお姉ちゃんを捕まえるぞー!」
「おー!」
なお、勝率だが私の無双…ではない。子供15人以上を同時に相手にするのである。とりわけ私は子供達に怪我させないように微調整とかもしている。それ故逃げ切るのは簡単ではないのである。ただ私はいつも自分に言い聞かせていた。彼らに負けているようでは今後生きていけないと。森で強敵にあったら殺されると。人間とやり合うなんてことがあったら終わりだと。野生の本能として生きるために必死であった。最もここまでハンデがある状態で逃げ切るなど空を飛べる魔物とかでない限りどんなに強力な魔物であっても難しい。子供への怪我させる攻撃はダメ。逃げれる範囲も孤児院の中庭範囲内のみ。マイはしかも走れない。タッチされてしまったら負けである。力ずくで振り解くと言うのは鬼ごっこが成立していない。ただ、それだけ難しいことをやっているとはマイは微塵も思っていなかった。
『姫様?子供達の作戦お伝えしましょうか?そろそろ準備完了みたいです。』
「いや、大丈夫。ネタバレは面白くないからね。」
『了解しました。無茶はしないでくださいね。』
「怪我させる気ないから平気。」
『姫様にですよ。』
植物に心配されているようであるがまあいつもの事なので無視した。
「よーし…じゃあ行くよー!」
5人の子供達が走って突っ込んできた。私は後ろにある木に向けてツルを伸ばし逃げていく。一応これもハンデだが…ツルの長さを調整していきなり空中に行かないようにしている。そんなことしてしまったら誰も私を捕まえられないのでしょうがない。
(おっと…。)
木に私がぶら下がっているが、下に来た子供達は木にも登って来てしまう子がいた。落ちたら危ない。その為、私は街灯っぽいものにツルを伸ばし雲梯の要領で移動していく。
『姫様。そちらにも子供が待ち構えていますよ?』
「了解。」
どうやら先回りしている子もいるようである。何度も言うが、これは1VS1じゃない。私VS孤児院の子供全員である。私は街灯と木の枝の間で自身を止めて真ん中ぐらいで地面に降りる。なお、私は重心が狂っている魔物である。体に対し頭が重い。その為、急に飛び降りたりしたら転倒してしまう。今回も同じだった。花に直接ダメージは与えたくないので、転倒と言っても尻餅程度であったが。
(うーん、この体不便よねぇ。)
子供達が何人か一気に攻めてきた。彼らも容赦がない。私は腕を後ろ側に向けツルを伸ばした。そっちにも木がある。木の幹にツルを結びつけ体を引っ張っていく。
子供は皆んな元気ですねー(棒)