食「人」植物
「あ、出来心でもう一つだけ聞いていいですか?それが終わったら私は仕事戻ります。」
「良いですよ。暇ですし。」
「先ほど人間駆除とか言っていたじゃないですか。あと、さっきシュウさんを食べようか迷っていたとか。マイさん人間食べれるんですか?」
「うーん、食べれるんじゃないですか?体は拒絶反応起こしそうですけど。」
私は前世人間である。人間を殺すことさえ躊躇してしまう。食べることなど出来るとは思えなかった。
「でもマイさんが仮に私に噛み付いたとして…私を食い殺すようなイメージが全くないんですよ。マイさんの口ってどう見ても私達と変わらないじゃないですか。狼とか蛇ならなんとなくイメージは付くんですが…。」
「あー、そういう意味ですか。だったら簡単に食べれますよ。私なら。」
「え?」
「うーん、何か実演するものが欲しいですね…そこら辺になんでも良いので死骸とかあります?」
「そこら辺にあったら困るものを要求しないでくれませんか?」
ミサさんは待っててくれと立ち上がり、奥の方に行ってしまった。しばらくしてミサさんが戻ってきた。
「このギルドの奥に魔物の解体場があります。そこにある売れない残骸なら使って良いと言われました。」
「なんでも良いですよ。ただし、小さめのでよろしくお願いします。」
実演すると言ったものの、大きすぎるものでは間違いなく花から蜜が溢れる。小さいものなら平気だろうという判断である。
「解体場なので匂いはきついかもしれませんが…そこはご理解ください。」
ミサさんに続いて魔物解体場に入る。私はどうやら匂いについては人間より退化している様であり…そこまで酷い目には遭わずに済んだが…シュウ君はダメだった。
「う…くさい!」
「シュウさん大丈夫ですか?」
「お姉さんは平気なの?」
「私は慣れてますからね。マイさんは?」
「あー、私どうやら匂いには鈍感みたいです。」
「ほうほう…匂いは鈍感鈍感っと…」
「何メモっているんですか?」
「マイさん観察日記です。」
「絞めて良いですか?」
「良いじゃないですか。私マイさんの様な魔物見るの初めてなんですから。研究させてください。」
「子供の自由研究ですか?!私を実験台にしないでください。私はモルモットではありませんよ!」
結局シュウ君は断念ということでギルド内で待ってもらう事になった。
「どれ使います?あそこにあるものならどれでも良いとのことです。」
おそらく魔物だっただろう肉片が散らばっていた。見ただけで吐き気がしそうであるが…私は魔物だからかあまりそう言った概念は無い様であった。まあ、森の中でも死骸はたまに見るし。
「うーん、じゃあこれにしましょうかね。」
私はおそらく小さめの魔物だった腕を掴む。直接触るのは気が引けたのでツルを伸ばして巻き取った。
「あーそれは子供オークの腕の一部ですね。で、それをどうするんですか?」
解体現場の中には現在進行形で解体作業をしている人達もいる。受付嬢だってこんな場所にいれば目立つのに見かけ10歳の女の子が体からツルを伸ばして魔物の残骸を巻き取っていれば残念ながら注目の的になるのであった。なお、ミサさんは性格上からたまにここに顔を出すらしい。オタクといえば良いのか研究熱心と言えば良いのかは謎であった。
「これをこうやってですね…」
左のツルで掴んだ腕の残骸を右のツルを伸ばしてぐるぐる巻きにしていく。
「まあ、こんなもので良いかな。見ていてくださいね。」
私が残骸を吸収しようと意識すれば、巻き付いたツルの内側のツルから消化液が出てくる。勿論、外からは見えないが。獲物が小さいためあっという間に消化は完了。花の蜜もちょっと増えたぐらいである。
「はい終了。食べ終わりました。」
「え?どういうことです?」
「ツルから直接吸収したんですよ。あー私この塊自分で展開する勇気がないので確認したければミサさん勝手にやってください。」
今回は私は自分の腕のツルから直接魔物を吸収したが、本来であれば地面から伸ばしたツルで固定した魔物を捕食する。そのため、食べた後の残骸はツルグルグル巻きで放置である。中がどうなっているかは見たくないので放置であった。私はツルでグルグル巻きの状態のものを再度解く気になれない。おそらく中は消化液まみれだろう。そんな状態のもののツルを巻き取って再度体につけたくない。私は両手のツルを手の辺りのところで噛み切った。肩から直接生えているツルは引っ張るという意味での強度は強いものの切るという事象には弱いのである。というより、肩から直接生えているものは普段腕に2-3周巻き付いている。そんなゴツいものであれば逆に困るのである。反対に、地面に突き刺し地面から出したツルはそれこそ変幻自在であった。
「これですか。分解しても?」
私から切り離した事により下に落ちた物体…ツルでグルグル巻きであるが…を見ながらミサさんは言った。
「大丈夫ですよ。ただ、私もこの中がどうなっているのかよくわからないので慎重に分解してください。念の為ですが…直接触るのはやめた方が良いですよ?」
「そうですね。丁度解体メンバーもいますし、興味本位で分解してみますか。」
ミサさんは数人を呼んでツルの物体を解き始めた…が、すぐに問題が生じた。
「おい、ちょっと待て!ナイフが溶けたぞ!」
解体メンバーの1人がツルにナイフを刺して切り開こうとした時、そう言った声が聞こえた。実際ナイフを見てみると刃先から泡が噴き出しており、如何にも溶けた又は溶けてます状態であった。
「どうやら、中は強酸性状態みたいだ。酸に溶けにくい機器を持ってこい!」
酸に強い金属も色々存在する。魔物解体ではそう言った魔物とかも解体したりするのであろう。彼らは機材を変更し再び作業を開始する。実を言うと、専門の機材を使っても機材を大分傷めてしまった様ではあるが…まあ、そう言うこともあるだろう。そしてツルを分解してみると…中は所謂消化液以外何も入っていなかった。
「うーん、なるほど…この液体も採取できます?」
「まあ、採取する道具はなくはねえが…俺がみた中でもかなり危険な分類だぞこれ。大丈夫か?」
「取り扱い厳重注意ということにしておきましょう。」
ミサさんも魔物の研究となると社畜を使う側になる様である。私は横目でため息をついていた。それを見ていたミサさんは横目で私に言った。
「要は相手を巻き取って直接溶かして吸収するんですね。」
「ですね。人間でも簡単に食べれそうでしょ?私は偏食なので人間は食べたくないですけど。」
「そうですね。つくづく思いましたが…世の中知らなかった方がよかったこともあるということですか。」
「どういうことですか?」
「こっちの話です。」
見かけ10歳の女の子の主人公です。ただ、そこらの人間より簡単に人間を始末出来る女の子みたいですね。