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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
「花」の危険性
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「花」の苦悩

「うんうん。やっぱりシュウ君は私の癒しだわ。他の植物の意見無視して助けた甲斐はあったわね。」

「やっぱりマイさんシュウ君にベタ惚れですよね?」

「うるさい!本気で絞めますよ?!」

「おー怖い怖い。あ、そう言えば気になっていたのですが、お二人はどう言った経緯で出会ったのですか?ほら、森で助けたとか前言っていた様な気がしますが…さっきの話と言いギルマスとの話と言いマイさんシュウさんを見つけて直ぐ助けた様には聞こえなくて。」


 ミサさんの質問は結構鋭かった。


「あー、もう大分過去になっちゃいましたしシュウ君にも聞かせても問題ないと思うのでぶっちゃけますが…植物達はシュウ君助けること反対だったんですよ。私だって、人間恐れていたので放っておいたり食べちゃった方が良かったかなと初めの方は思いましたし。」

「そうなんですね。それでしたら私からは受付嬢としてお礼をしないといけませんね。」

「え?」

「私だって、同じ人間が魔物に食い殺されるとかそんなのは嫌ですよ。マイさんはシュウ君を助けてくれた恩人というわけです。」

「うーん、まあ私の気まぐれだからなぁ。感謝されても困るんだけど。」


 前世が人間でなければ私はシュウ君をどうしたのであろうか。放っておいたのか、殺したのか…全く想像出来なかった。


「お姉ちゃんは優しかったもん!僕はお姉ちゃんに会えて今でも嬉しいんだよ!」

「優しいねぇ…私はこの優しさあまり好きじゃないけれど。」

「良いじゃないですか。優しくて何が悪いんです?」


 私は無言だった。優しさは時に身を危うくする。魔物になった今も慈悲で相手を助ければ相手は私を食い殺すだろう。前世だって、上からの仕事を安く請け負った結果鬱になって苦しんでいたのである。まあ、それは優しさより甘さや立ち振る舞いの問題であるのだが、マイが気づくことはなかった。しばらくして食事が終わる。シュウ君及び私が食べきれないピザはミサさんが平気で平らげていた。この人こそ満腹という概念ないのではないだろうか?


「ところでこんなにゆっくりしていて良いのですか?午後も仕事あるのでは?」

「うん?あーそうね。じゃあそろそろ戻りますか。あ、ちょっと待っていてね。お会計済ませてくる。」


 ミサさんが会計を済まして戻ってきた。私たちは立ち上がる。


「ご馳走様でした。」

「いえいえ、それなら今度ギルマスに言ってくださいな。あ、そうだ聞き忘れたことがあった。ちょっとギルドまで付き合ってくれないかしら。」

「え、まあ構いませんが。シュウ君もくる?」

「うん!」


 シュウ君は孤児院の子供だが、こんなに振り回して良いのだろうか?若干疑問が湧くがまあ万一があればミサさんに全部責任を押し付けよう。そう考えている私であった。帰り際にミサさんが話しかけるが、その前に突っ込みたいところがあった。


「ミサさん、なんでそのコップ持ってるんですか?」


 お店にあったコップのうち誰も口をつけていない私の蜜が入ったものをミサさんは何故か持って来ていた。


「え?あ、もちろん研究用よ。」

「研究?」

「あら?私が色々な魔物について興味があること覚えていないかしら。」

「覚えてはいますが…それ何か解析するんですか?」


 一応言っておくが、ここは私の前世とは違い科学技術が発展しているというわけではない。解析ってどうやってやるのか非常に気になる。


「まあ調べ方は秘密です。個人的趣味ですし。ただ、どう見ても見たことがない魔物が作った花の蜜…とっても美味しかったけど。どう言った効果があるとか気になるじゃないですか。」

「効果ですか…まあ、そう言われると私自身も興味はありますが…何もないと思いますよ。」


 その蜜を飲んだら切断された腕が再度生えるとか…死にかけた病人が完治するとかそういった能力はないだろう。いや、むしろあって貰ったら私が困る。絶対狙われるわ。


「まあまあ、別に変な事に使ったりしないから平気よ。」

「ふーん。まあ信じておきましょう。」


 その言葉を言うということは変な事に使うんだなと思った私であった。それと同時に渡したことを後悔した私がいた。


「で、聞きたいことってなんですか?」


 既にギルドに着いてしまったのだが、気になったので聞いてみる。


「あーそうね。そろそろ休憩時間終わりだけど…ちょっと待っててくれないかしら。」


 ミサさんは受付の方へ言ってしまった。残された私たちはギルドの真ん中あたりで待っている。


「シュウ君。どこか座る?疲れてない?」

「うんうん!大丈夫!お腹一杯!」

「そう。それは良かった。」


 たまに思う。私はシュウ君を満腹にさせてあげることが出来ない。今日もギルマスの奢りだし、普段は孤児院で生活している。もし私にその様なことが出来たらば…多分森を降りることなどなかっただろう。私はシュウ君を助けた時、ユイやメイのことを考えていた。結局2人とも私の目と鼻の先で死んでしまったのである。シュウ君においても私は結局1人では何も出来なかった。これで良いのだろうか…。

 たかが魔物が考えることじゃない気がするけど…。

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