食事と蜜の因果関係
「だそうなので、いきなり奢ると言われても…」
「そんなこと言ったら私一人で銀貨3枚でどこか食べるってなっちゃうじゃないですか!それはおかしいから強引にでも連れて行きます。」
「ええ…」
私が戸惑いの顔をするとミサさんが追加で発言した。
「まあそんなかたくるっしくなくて食べに行きましょうよ。孤児院には後で外食しましたでよくないです?」
「うーん…」
「じゃあ私がギルマスから文通貰って来ます。それで終了です。ちょっとお待ちくださいね。」
ミサさんがさっさと行ってしまった。元気なものである。
「お姉ちゃんどうしたの?」
シュウ君が悩んでいる私の顔を見て思ったのか聞いてきた。
「あー、何でもないわ。元気だなーと思って。今日の朝の事件で私はクタクタなのに…。」
シュウ君は特に何も言わなかったが、やっぱり私を心配してくれているのだった。ミサさんが颯爽と戻ってきて手紙をシュウ君に渡す。
「シュウ君?今日孤児院戻ったらとりあえずこれ渡してね。あれ、お昼は?とか聞かれたらこの手紙読んでとか言っておけば大丈夫よ?」
「うーん?分かった!」
シュウ君は相変わらず事の事象が良く分かっていないようではあるがまあミサさんはこれで十分と思ったらしい。
「さて二人とも?どこ食べに行きたいですか?今日は私の奢りですよ!」
(ギルマスの奢りってさっき行ってなかった?)
「あ!僕ピザ食べたい!前先生が言ってたの!」
「よし、じゃあこれで食べれる最良の場所行きましょう!個人評価だからそこはよろしく!」
ミサさんの個人評価と言う単語が物凄く引っ掛かったが選択肢はなさそうなので行く事になった。まあ、ミサさんの休憩時間で食べに行ける範囲内である。ギルドからはそれほど遠くない場所だった。私もシュウ君も文字はまだ完璧と言うわけではないし、内容もよくわからないのでミサさんがメインで食べ物を注文していった。
「あーそう言えば、私ちゃんとしたもの食べたことないんだけど大丈夫かな。」
私は植物の魔物。食べなくても生きていける。実際のところツルから消化液を出して吸収したことはあるが口から接種したことはほぼ無いに等しい。食べても大丈夫なのだろうか?
「え、今までどういった食生活なのですか?」
「食生活と言うか…私植物だから光合成してれば生きていけるから。長く生きてるけどちゃんとした食事したこと無いと言う。」
「え…えええ!もったりないですよそれ!じゃあ、今日は思う存分食べていってくださいね。」
ミサさんは驚きの態度である。
「僕もお姉ちゃんと一緒に食べたい!」
「え、シュウ君は孤児院で食べるとき一緒じゃないのですか?」
「だってお姉ちゃん。お昼の時間になるといつも外に行っちゃうんだもん。」
「え、マイさん?そうなんですか?」
「ミサさん。私は孤児院の子供じゃないんですよ?食べ物なんて準備されていません。強いて外行って光合成が食事かな。」
「あー、なんだかそれって寂しいですね。」
「うん!」
「そうかなぁ…」
魔物の感性なのか前世の人間嫌いと言う思考からなのか…考え方が私と残り2人で違っているのであった。とか話しているうちに3種類の円形のピザが来た。
「ミサさん?大きくないですか?これ食べきれます?」
「銀貨3枚分ですからね。」
「普通全部使います?」
「奢られた分は全部使うが私の流儀ですよ?」
私なら人間だったとしても食べれる範囲で頼んで残りマイポケットなんだけどなぁ。まあ、人によってはお釣りを返す人もいるだろう。まあ、個性なので突っ込まないでおく。それからと言うもの消化試合が始まるわけだが、ちゃんと私も食べることは出来るらしい。人生初の口を返した食事である。まあ、結構前にラズベリーを1つ口に入れた記憶はあるが…生き物として空腹を満たすという意味での食事は初となる。最も、空腹ではないのだが。本当に空腹になる時は死ぬ時ではないだろうか。それは良しとして食べ物を食べた際気づいた点が2点あった。ある程度食べたからこそ気づいたものである。
(…いくらでも私食べれる?)
本来人間であれば食べれば満腹になる。そして食べれなくなる。この概念がなければ胃袋は破裂してしまう。しかし、私にはどうやら満腹という概念がないらしい。食べてもお腹が満たされるという様な感覚は…全くないかと言えば違うのであるが、とにかくこれ以上食べれないというのはないのである。じゃあ、永遠に食べれるのかというとそんなことは無かった。
(え…花の蜜が…生成されてる?)
私の花の蜜は光合成とかをしている過程で無意識のうちに作られる。とはいえ、蓄えは有限。例えばシュウ君に蜜を渡せば量は減る。おばあちゃんが昔、この蜜は私の動力源の様な話をしていた。それもあるため蜜を100歩譲って誰かに渡すにしろ、空になるまでは渡すことはしない。そして、ある程度日数が経つと元の量に戻る。そんな感じである。溢れかえってしまうときがいくらかあったがその時は放っておくと自ずと標準値に戻るのである。まあ、その時は私の野生の本能だろうか…光合成をしばらく意図的に行わなくなったりするのであるが…。とまあ、本来であれば微量の変化のため意識的に気づく様なものではないのだが、私が食事をすると蜜が生成されているのが分かるレベルで量が増えていくのである。
(このまま食べ続けたら…漏れる!)
大物の魔物をツルから吸収する時と同じ状況であった。ただ、違うことがある。ツルから摂取する際は私は制御が出来ない。吸い尽くすまで花から蜜が漏れようがどうなろうが吸い続ける。しかし、口から摂取する際は自分の意志で止めることが出来た。要は食べなければ良いのである。
(満腹の概念が人間の時の構造と違うのかな?)
腹八分目という言葉がある。どうやら私は口から食事をする時には意識的に食べる量を制限しないと、花から蜜が漏れる…人間で言うところのおねしょをしてしまうと言うことが分かった。満腹という概念がないため、今後美味しいからと言って食べたいだけ食べれば食べれるが大惨事になる。肉体的にではなく精神的に…そういうことであった。
結構複雑な構造をしてますよね、主人公。