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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
「花」の危険性
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未知の脅威

「あ、そうだ。ギルドマスター。確かシュウ君に報酬とかなんか渡したりとかするんですか?」

「うむ?その様なことは言っていないが。」

「ミサさんがさっきその様なことを…」

「ええ。こんだけシュウ君頑張ったんですよ。何もなしじゃかわいそうじゃありません?」

「うーむ…」

「ということでお願いなのですが。」

「まだわしは何も言っておらぬが。」

「シュウ君が今住んでいる孤児院ありますよね。あそこボロいんですよ。なんとかなりませんか?」

「うむ?」


 私はシュウ君が住んでいる孤児院に結構通っている。食べ物とか寝床とか生活水準についてはまあ及第点としてオンボロすぎる点は気になっていた。


「あーそういえば、確かにあそこは古いらしいですね。私の友達も昔住んでたらしくたまに見に行くそうですが、私もその様なことを聞きました。」


 秘書の女性がそう呟いていた。


「一応聞いておくが、仮にギルドから助成金を出したところでお主らには何もメリットはあるまい。シュウ、お主は10歳を越えれば孤児院を卒業せねばならぬ。マイじゃったかの。お主に至っては森に過ごしていてそれこそ何もないじゃろ。なぜ、それなのにそこを心配するのじゃ。」

「さあ、なんででしょうね?私は魔物ですよ?人間に理解されては困りますね。」

「僕はお姉ちゃんに賛成!あそこ僕の第二のお家だもん。友達も出来たし、綺麗にしたい!」

「だそうですよギルマス。」


 ミサさんが追い打ちをかけた。


「…すまぬが、彼処はギルドの管轄外じゃ。その様なことをしては他のハンター達から反感を買う。」

「ハンターの一部は孤児院出身ですよ?」

「全部じゃないじゃろ。じゃが、お主らの気持ちは受け取った。形に出来るかわからぬが善処することだけは約束しよう。」

「ありがとうございます。」

「うむ。じゃあ、お主ら2人は下がって良い。あーそうじゃな。ちょっとしたお詫びを後でするから、ギルドの机で待っていたまえ。ミサ、お主はもう少しいてもらって良いかの。言伝等を頼みたいのじゃ。」

「わかりました。」


 マイとシュウが部屋から出た後、ギルマスとミサとで会話が続いていた。


「ミサ。あの少女。本当に魔物なのか?全くその様に見えなかったぞい。確かに報告は聞いていたが。」

「魔物ですよ。ちゃんと私をツル使って脅していたじゃありませんか。それにスカートは葉っぱでできていたと思いますが、あれ本人から生えている様ですよ。分解したことないので詳しいことは分かりませんが。他にも帽子被っていましたが、あの中には大きなオレンジ色の花がくっついています。」

「立ち振る舞いも魔物とはとても考えられぬものじゃったな。ミサ。度々聞いたかもしれぬが、やはりお主でも知らない種類なのかの?」

「ええ…ムサビーネ夫人もわからないとおっしゃっておりました。過去の文献を調べるというのも手ですが、私そこまでしたいとも思いませんし。」

「お主の性格でのぉ。」

「知っている文献は全部調べましたよ私だって!気になるじゃないですか!ですが情報0。これ以上調べようとしたら、趣味の範疇を超えてしまいます。」

「そうかのぉ。」

「マスター何か心配事でも。」


 秘書の女性が声をかけた。


「彼女がこの街におるということは、近くに仲間がいるのではないかと思っての。あれだけ我々と同じ考えを持つ魔物が複数いたとなると脅威以外の何物でもあるまい。」

「ちょっと待ってくださいギルマス!それではマイさんも危険生物と判断しているのですか?!」

「ミサよ。所々お主も抜けているのぉ。お主も知っておろう。魔物使いの中にはゴブリンを使い魔にする変わり者もいると。」

「それは知っていますが。」

「使い魔のゴブリンはちゃんと教育されておるから脅威ではない。じゃが、野生のゴブリン…特に団体で荷馬車を襲ったらどうなるか。被害の声も聞いておろう?」


 要はマイは問題ないが他はどうかという話である。人間だって全てが善ではない。悪もいる。マイ自身も自分が何者なのかまだ理解出来ていないのであるが…マイと同個体がいた場合人間に対し友好的なのか敵対的なのかで話が変わってくるのである。実際、もしユイやメイが生きていた場合、彼女達が人間に対してどういった立ち振る舞いをするかなど誰も分からない。


「それにあの魔物はおばあちゃんと言っていたが…彼女の祖母は我々人間に対して友好的じゃなさそうな話じゃった。それも考慮するとのぉ。」

「確かに。それを吟味すればなる早であの魔物について調査する必要性がありそうですね。」


 秘書の女性は冷静だった。まあ、普通に考えればそうなるであろう。マイが魔物に襲われる時、わざわざエンカウントを待ってから襲ってなどいない。先手で襲撃して仕留める。ギルマスの考えはまさにそれであり、的を射ているのであった。


「ミサよ。お主はマイと仲が良さそうじゃな。業務の範囲内で良い。出来るかぎり彼女から情報を集めてほしいの。また…あれを友好的というのはちょっと違和感があるが…とにかく彼女を敵に回してはいかん。万一があった時、彼女が我々の味方ならもし力的に脅威的な魔物でも会話という手段でなんとかなるかもしれないのじゃ。良いかの。」

「ちょっと責任が重い様な感じがしますが…というよりそれこそテイマーであるシュウ君の仕事の様な感じもしますけど…調べれる範囲で調べてみますよ。シュウ君にも言いますか?」

「彼はまだ幼すぎる。もう少し成長したら話すとしよう。今話しても事については理解出来まい。しかし、彼も子供とはいえ重大な責務を担ってしまっているのぉ。」


 マイはシュウを慕っている。逆も然り。この2人に亀裂が入ったり、どっちかに喧嘩を売ったりすれば未知なる突然変異の魔物軍団に襲われる可能性がある。まあ、そんなことよっぽどのことを起こさない限りあり得ないのであるが…ギルマスはその万一を警戒していたのであった。


「かしこまりました。ところで言伝の話がありましたが、それがこの内容でしょうか?」

「いや。言伝に対してはの…」


 言伝の内容に対しては、この後すぐマイとシュウに影響するのだった。私とシュウ君はギルマスに言われた通り、ギルドの椅子に座って待っている。私は呼ばれる前と全く同じで机に突っ伏していた。と言うよりこれが私の帝石になりつつある。人間嫌いと言うこともあり、ギルドの雰囲気自体があまり好きではないのであった。シュウ君はさっきよりは落ち着いた様子であったが、お腹をさすっている。少しもするとグーとなった。

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