事情聴取
「お前達はここに座ってくれ。」
ギルマスが座るテーブルの前には垂直方向に向かい合わせでソファーが置いてあった。真ん中にテーブルがある。普段会議とかで使うのだろうか?私とシュウ君は隣り合わせで腰掛けたが、ミサさんは私達の後ろに立っていた。
「相変わらず仕事熱心じゃな。座りたければ座っても良いぞ?」
「いえ、私は立っている方が性に合っていますので。」
受付嬢だからだろうか。彼女も大変だな。
「じゃあまずはな…わしから謝罪をさせてくれ。」
「え?」
ギルマスが私達に頭を下げたのである。私はびっくり仰天である。
「何故、ギルドマスターである貴方様が私達に頭を下げなくてはいけないんですか?」
あまりの驚きに口調が変な風になってしまった。私こんなキャラじゃないんだけど。
「いや、本来であればあの様な嘘…もっと早急に気付けるはずじゃった。だが、魔物と人間という関係上なかなか判断が出来なかったのじゃ。お主らはまだハンターではないが、既に真面目に魔物使いとその魔物として真面目に学んでいると聞いている。それなのに信じてやる事ができなかったことをハンター一同の代表として謝罪させてほしい。」
あの事件の時、私はギルマスが敵になるとして認識していた。まあ所詮は人間だからな。そういう認識である。その結果でこの謝罪をされたところでだからなんだではあるが…まあ、今回はしょうがないだろうという結論にすることにした。
「大丈夫です。元々私は人間なんて信用してません。おばあちゃんにもそうやって学んで生きて来ました。だからこうなるのは仕方ないことですし、その責任を誰かに押し付ける気もないです。」
「…その割にはシュウ君には懐いているんだけどねー。」
「うるさい!絞めますよ?」
私はツルを伸ばし、ミサさんの首元に伸ばす。ミサさんは私達というより私を弄るのが面白いらしい。そのため、私はちょくちょく脅しをかけるのだが、それすらミサさんは楽しんでいるのであった。
「おいおい、やめんか!」
「気にしないでください。私達の挨拶です。」
「どんな挨拶じゃ。」
「うっぷ…」
シュウ君から若干笑い声が漏れた。彼はさっきから脅された恐怖や私が殺されるのではまたは連れて行かれちゃうのではという恐怖と戦い続けてきて…まあズタズタであった。
「あら、シュウ君。ようやく笑いましたね。じゃあ、もう少しマイさんにチャチャ入れようかな。」
「すいません。ギルドマスター。このアホ受付嬢をクビにしてください。」
「ずいぶん我儘な魔物じゃのお。ホッホッホ。」
少し時間がかかったが、大分さっきまでの緊張感が解けてきた。ようやく本題に入る。
「さてそろそろ本題に入っていいかの。大体他のハンターから話は聞いておるが…一体何があったのじゃ?」
私とミサさんが事の経緯を事細かに話して聞かせた。秘書の女性はそれをメモしている。ある程度話すと女性はギルマスに声をかけた。
「他者からの情報等を聞く限り矛盾点はないと思われます。あの罪人の話を除いてですが。」
「了解じゃ。」
「あ、あとギルマス。今回の大手柄はこのシュウ君ですよ。この子の発想力がなければ連中の巧妙な嘘を見抜くことは困難でした。そこを評価してそうですね…ハンターとして何か優遇出来ませんか?」
「ミサよ。シュウはハンターではない。話を聞く限り確かにその評価は間違えないとは思うが…」
「え…僕、何も出来なかったよ。だって、お姉ちゃんの後ろにずっと隠れてばっかりだったし…怖かったし…お姉ちゃん殺されそうになった時何も出来なかった…」
シュウ君はまた涙目である。私はシュウ君を撫でる。
「いやいや。シュウ君いなかったらそれこそ私死ぬか連れ去られていたから。本音言って、私は趣味本意で貴方を森で助けただけなんだけど…まさか良い意味で100倍で返ってくるとは思っていなかったから。私の好感度100ぐらい上がってるからね?」
「え…?」
「シュウさん。シュウさんは気づいていないかもしれませんが、マイさんが貴方に巻き付いているそのツル。巻く回数が2周ぐらい増えていますよ。それだけ貴方はマイさんのために頑張ったのです。そこは誇るべきですし、魔物使いの良い鑑ですよ。ねえギルマス。」
そういえば、私シュウ君に巻き付けているツルの巻き数確かに増えてるわ。まあ本音は、これ以上危険な目に合わせたくない…ユイやメイの二の舞にはさせないと更に心に刻みつけただけなのであるが…見方によってはそうなるらしい。
「その着眼点を持っているミサがわしは怖いが…良いかシュウ。お主のその体格で奴らと戦っても勝ち目などあるわけない。じゃがの、お主はお主なりに出来ることをやって…その結果、お主の魔物を守り通したのじゃ。それは誇って良いことじゃしその結果もしっかり出ておる。お主じゃからこそ出来たことじゃ。どうやら、6歳の子供が魔物使いということを聞いて心配しておったが、余計な心配じゃった様じゃの。」
「魔物の私がいうのもアレですが、シュウ君想像を遥かに超えて優秀です。ねー。」
「え…ええ…」
シュウ君は顔を真っ赤にした。かわいい。