決着
「な、なんだ?!」
その時、私をホールドしていたハンターがバランスを崩し、後ろに尻餅をついた。刃物が若干私の首を掠めたようなきがしたが、命に別状はなかった。ただ、私は重心が狂っている魔物。私も転倒する。その途端、私は誰かに両脇を掴まれた。
「おらよっと!」
マイ自身は誰に掴まれたかまだ把握していなかったが、栄光パーティーのリーダーハンターが私を危険区域から逃してくれていたのだった。私をホールドしていたハンターを見ると、足が凍って床に固定されている。
「貴様か?!」
もう1人のハンターが誰かに向けて走り出した。その先には栄光メンバーの最年少少女…とは言えども20歳手前っぽい実力派魔術師であるが…がロッドを構えていた。おそらく仕掛けたのはこの少女であろう。
「危ない!」
私が叫んだのと、某ハンターが誰かに殴られ壁に激突するのが一緒だった。殴ったハンターは同じく栄光メンバーの堅いが良い男性だった。
「全く、言ってるだろ。魔法を打つならもう少し遠距離にしろと。」
「仕方ないじゃない!これ以上見てられなかったんだもの!」
奥の方でそう言った口論が始まっていたが、下らない口論が出来るのも事が全て終わったと言うことを告げていたからであった。
「立てるか?」
「あ、はい。」
「首切れてるぞ?大丈夫か?」
「え?」
私は、何か掠ったなと言うところを触る。確かに何かがたれている。手につけてみてみると、うーん、水?水分であった。血ではない。やっぱり私は魔物なのだった。
「みたところ軽い切り傷だが…」
「え?マイさん!見せてください!」
咄嗟に、ミサさんが飛んできた。ミサさんの思考回路的にこんな希少種の突然変異体は何があっても傷つけてはいけないと言う概念らしい。
「あー、確かに切れていそうです。ただ、致命傷ではないと思うのでちょっと包帯を持って来ますね。」
「え…私は魔物ですし…そんなことしなくても…」
「ダメです!私が許しません。」
「あ、はい。」
気迫に負けてしまった。
「お、お姉ちゃん…う…う…」
シュウ君が顔をぐちゃぐちゃにしながらやってきた。と思ったらそのまま私にタックルするが如く抱きついた。
「お姉ちゃんーよかった、よかったよー殺されちゃう…か…うわーん!!!」
最後の方は意味不明であったが、私はシュウ君の頭を撫でてあげた。そして先ほどの涙点崩壊の点もあり、もらい泣き込みでまた涙するのであった。なお、マイとシュウが戯れあっている中、某ハンター2名は縄で縛られ連行されていった。さらに少しして、森から救出された2名もギルドに来たが…勿論、本来のシナリオ通り街道で襲われたとか言っていたそうであるが…彼らの証言が朝方に対し、守衛が見たのは夜である。更にその後の調べで連中が街道で襲われたなら、どうして彼らの歩いた足跡が森の中にあるのか等矛盾点もいくらか見つかり補導されるのであった。連中にしてみれば、どんなに相手を騙し切ったところでいつかはバレることは把握済み。そのため、ギルド内で威圧をしたり早く結論を求めたりとバレる前にトンズラしたかったようである。しかし、それを尽く妨害した人が1人いた。色々提案して実践していたシュウ君である。シュウ君的にはそんなことまで考えて行動なんてしているわけではないが、今回の騒動のMVPは誰がどうみてもシュウ君であった。
「お前達、すまないが良いか?」
私は首元を手当され、事の収集がだいぶ落ち着いて来た頃…そろそろお昼時なのだが…私はもう散々だーとばかりに椅子に座って机に体を伸ばし、シュウ君はまだ心が落ち着かず椅子でグスグス言っていたが…声をかけられた。
「あ、はい。」
私は体を机に伏せたまま声の主の方に向く。えーっと、あ、ギルマスだわ。
「なんですか?」
私は魔物である。ギルマスだろうがなんだろうが人間なのである。
「事情聴取をしたい。お前達も大分落ち着いたじゃろう。聞きたい事があるのじゃ。」
「ギルマス?まだ、この2人を疑っているのですか?!」
ミサさんが、受付の方から声を荒上げた。ミサさんの魔物オタクもなんとかした方が良いと思う。私としてはそれ以外の感想はなかった。まあ、そのおかげて助かったと言うこともあるのではあるが。
「はあ、お前は魔物のことになるとすぐにこれじゃ。全く。受付嬢は他にもまだいるじゃろう。だったら、お前も一緒に来い。お前もこいつらから多少は話を聞いたのじゃろう?」
「ええ。喜んで行かせて頂きます。」
実を言うとこのギルマス、見かけは怖いおじさんだが実際は仲間思いの優しいおじさんだったりする。それ故、このギルドのギルマスに就任したという経緯があったりする。私とシュウ君、後ミサさんはギルマスの後をついていき彼の部屋に入った。
「すまない。彼らの事情聴取をしたくてな。一回席を外してくれないか?」
中に数人別の人達がいたが、1人の女性を除いて全員出ていった。多分、秘書か何かだろう。