ハンターの策略
「本当にその主張あってる?ちゃんとマイさんには正しいこと言ってるみたいよ。というより、植物が声出しているならマイさんも貴方も同じ声聞こえるでしょ。」
ミサさんからも突っ込みが入る。
「あ?うるせえな。なんならおら、今指図しているガキがその魔物と事前打ち合わせしてるってこと考えられねえか?」
今回の最終ミッションは私が植物と会話出来る云々の話ではない。このハンターが本当に植物と会話出来るかである。まあ、シュウ君はそこまで考えていないであろうが、今の発言は目的をズラす戦法である。もちろん誰も気づかない。
「そうだな。だったら他のハンターが合図をしてみたらどうだ。」
ギルマスから公平の意見が飛んできた。
「じゃあ今度は俺がやる。さっきまでこの魔物のテイマーがやっていたんだ。俺がやってもいいよな。」
某ハンターの仲間が発言した。
「かまわぬ。」
「じゃあいいか。俺は机、椅子、皿の順に触るぜ?」
こいつは馬鹿か?
「じゃあまずこれは…」
「植物さん、何さわ…」
「皿だな。」
「正解だ。」
は?植物は丁度私に『皿』と言うことを発言している最中だった。当たり前だが、植物の会話による情報網は光速を越えれない。要は触り始めたところで速攻答えれるわけがない。私は再度怒りに燃え始めた。私とシュウ君は別に事前打ち合わせしていない。だが、間違えなくこいつらは事前打ち合わせしているのである。
「次はこれだ…」
「椅子だな。」
「正解だ。」
「おいおい、植物と会話出来るならなんで俺より早く答えれないんだ?」
「すいませんが、触れるか触れないか微妙なところで答えを言われましても…植物が話す前なのですが?」
「はぁ。植物は既に答え言ってるっちゅうの。お前こそ本当に聴こえているのか?」
予め言っておく。ここには既に何人もハンターが何事かと見物している。そして誰もが疑問に思っているはずである。子供が先に物に触れていた時は触れた後タイムラグがあり私が答えすぐその後にハンターが答えていたことを。逆にハンターが物に触れたときには触れるか触れないかで既にハンターが答えていたことを。見物人が答えがわかる前に答えていると言う不自然さである。
「じゃあ次は…」
「机じゃね?流れ的に。」
どこぞの興味を持ったハンターが面白半分に言った。
「違うんだなぁ。これだよこれ。お皿。」
もう目的が滅茶苦茶になってしまっていた。別に次にハンターが触るであろうものを当てるゲームなど誰もやっていない。しかし、ゲーム内容がそうなってしまっていた。これこそ某ハンター連中の狙い。目的を有耶無耶にしてしまって、植物と会話云々の検証を終わらせてしまいたいと言う焦りかつ冷静な対処であった。私は既に喋る意欲すら無くして黙認してしまっている。植物に聞く前に相手が答えてしまう。これこそまさにサクラであった。
「うーむ。もう良い。これでは拉致があかぬ。お前達どちらもその布を取りなさい。」
ギルマスがいよいよ愛想をつかせて終わらせに入った。シュウ君が一生懸命考えて彼らの「植物と会話出来る」と言う嘘を見抜く手段を考えたのだが、完全に有耶無耶にされてしまったのである。
「で、どうだ?俺らが植物とちゃんと会話出来ることは分かったか?わからねえならまあしょうがねえが、少なくともその魔物はテイマーが降りた途端何も喋ってねえ。やっぱり何かしら打ち合わせしていたんだと思うぜ?」
「ギルマス!貴方は平等な方のはずです。今のやりとりを見ればわかるでしょう?どっちがちゃんと植物を会話出来ていたかどうか?…ギルマス?!」
ギルマスも様子を見て確信しているだろう。前半は明らかにハンターがただ復唱していただけだと。後半は誰がどう見てもハンター連中のお芝居であったと言うことを。と言うより、それが出来ないならギルマス失格レベルである。しかし、ギルマスも悩んでしまっていた。明らかにハンターらが小細工しているのはわかる。しかし、確定的な証拠がない。もっとこう、某ハンターらが誰がどう見ても全員を騙そうしているという根拠が欲しかったのである。
『姫様。姫様の拠点の方から情報が入ってきました。どうやら、姫様が捕獲していた人間達が解放されたとのことです。彼らの言い分は詳しいことは分かりませんが、おそらくここにいるハンターと口実を合わせる内容なのでしょう。こっちに向かっているとのことなのでお気をつけたほうがよろしいかと。』
既にこの場は荒れてしまっている。ここで、私を狙った連中が介入してくれば話は更にややこしく且つこちらが不利に働くであろう。それは分かっている。だが、これ以上の打開策が現状ない。と思ったのだが…
「うー、じゃあこんなのはどう!」
シュウ君がまた何か閃いたらしい。私はまた同じになるのではないか?いや、シュウ君のことだ何かしら糸口を出してくれるんじゃないか?半信半疑で聞いてみる。
「どうしたの?」
「うーん、あ!お兄さん、お姉さん…あと、あ、いたいた。お兄さん!」
「あ?」
「どうしたの?」
「なんだ?」
シュウ君が私の発言を無視して指名したのは栄光のメンバーの男女1人と某犯人ハンターの1人であった。
「ちょっとこっちきて?それでね、手を繋ぐの!」
「あ?クソガキがまた何だ?お前はもう罪人だ。誰も…」
「いいじゃない?何をそんなにイライラしているのよ。」
シュウ君が何を考えているか全くわからないが、シュウ君を筆頭に左側に女性1人、右側に栄光と某ハンター1人ずつ手を繋ぐ。




