子供の発想
「あ!わかったー!」
口論が続く中、誰かが喜んだような声を上げた。またまたシュウ君である。
「シュウ君。どうしたの?」
私はもう頭の中でどうやったら分からずやの人間共を全員殺せるかといった無理ゲーを考えていた。
「お姉ちゃんだけが植物さんと会話出来ることを示す方法ー!」
頭の切り替えに少々時間が掛かったが、シュウ君が何か思いついたらしい。
「ほう?なんだい坊主。まあお前の魔物がやらかしたことだから是が非でも魔物を守りたいという気持ちもわからなくはない。だがな、俺は既に植物と会話出来るんだぜ?今更そんな証明する意味はねぇ。それより早く責任取って謝罪しな。そうすれば罪はまだ軽くなるかも知れねえぜ?」
「シュウ君。どうやってやるの?」
こいつらの手口はいわゆる精神攻撃である。シュウ君はまだ6歳の男の子。変な傷を付けられる前に話を進めたい。
「目隠しだよ目隠し!お姉ちゃんとそのお兄ちゃんどっちも目隠しするの。それで僕が触れたものを当てるゲーム!ここにも植物が生えてるから植物の声が聞こえるなら見なくてもわかるはずだよ!」
なるほど。私はシュウ君を見直した。6歳児だからなんだ。子供だから発想できる着眼点というのもあるではないか。どっちにしろ、シュウ君は私の魔物使い。私が6歳だからと変な固定概念で軽蔑していたことを申し訳なく思った。
「シュウ君。それはナイスアイデアです。さあさあ、早速やってみましょう!ねえ、ちょっと目隠しできそうなもの取ってきて!」
ミサさんがすかさず食いつき話をそっちに持っていく。ギルマスは状況判断ということか、何も言わなかった。かくして、簡単なタオルっぽいものが2枚用意された。私はシュウ君をツルから解放する。私がシュウ君をツルで縛る理由は心配性だからである。ユイやメイと同じ道を歩ませたくない。だから勝手にどっか言って欲しくない。というただの我儘だった。
「魔物は信憑性が欠けるからな。俺が目隠ししてやる。」
某ハンターの1人が私の目をタオルで隠した。かなりキツく締められたので、危うく手を出してしまうところだった。
「俺の仲間も俺がしめていいよな。ここのハンター連中は信用おけん。魔物に対して甘すぎるからな。」
「流石にそれはエコ贔屓も良いところだな。俺が代わりに締めてやる。」
私は見えないが、誰かが反論していた。植物に聞いてみると、栄光メンバーのハンターらしい。ミサさん同様、彼らも私に肩を貸してくれているようである。私は魔物。前世も虐めやパワハラを受けていた経験の元、人間なんて誰も信用出来ないが…逆はどうなのだろうか?心の中に若干戸惑いが隠せない自分がいた。
「ちゃんと隠したー?」
シュウ君の声が聞こえる。
「大丈夫。」
「ああ。」
私と栄光の1人が返答する。
「じゃあ…まずはこれ!」
シュウ君が何かを言った。
「ねえ皆んな、ルールは分かっている?要はシュウ君が触ったものを教えて欲しいんだけど。」
『了解致しました。椅子に触っておりますね。』
「ありがとう。シュウ君。それは椅子?」
「…椅子だな。」
「え…そ、そう正解。じゃあ、次はこれは?」
「次は何に触れてる?」
『机ですね。』
「机だそうです。」
「…机だな。全く、こんな子供じみたことやってて意味あるのか?」
「う…じゃ、じゃあ…これ!」
「次はどれ?」
『姫様。シュウ殿は自分の服を掴んでおります。』
「シュウ君。服掴んでるけど、それであってる?」
「おい!服掴むのは反則だぞ?坊主、分かってるのか?え?」
「ううう…」
しばらくこのゲームが続いていくが、何故か相手のハンターはちゃんと当てていく。ただ私もそこまで馬鹿ではない。色々かませを入れて見る。
「じゃ…じゃあこれは??」
シュウ君の焦りが感じ取れた。シュウ君も想定外なんだろう。
「私が答える前に先に貴方が答えてくれませんか?いつも貴方後手ですよね。私の解答復唱してませんか?」
「あ?いよいよお前俺がちゃんと植物と会話できていることが分かって怖くなってきたか?まあそうだよな。お前しか会話できないと過剰意識を持っているんだ。気持ちもわからなくねえ。で?ほら、ちゃんと会話出来てるなら答えれるだろ?それとも植物たちが愛想尽かして教えてくれなくなったか?」
「いえ。ただ、私が答えた後ばっかりだと流石にギルドメンバーも不審がるかと。」
「そうだな。じゃあ、空き瓶か?」
「シュウ君。それはギルドに置いてある箸だよね。」
「そう!箸!」
「…なんだよ。植物さんよ?機嫌損ねないでくれ。嘘の情報は良くないぜ?本当は?あー箸か。すまねえ、今植物達がこんなくだらねえゲーム飽きたって言い始めてよ。機嫌損ねて嘘のこと言い始めてるぜ?やめたやめた。」
私には見えないが、相手のハンターはタオルを解こうとしたらしい。