ギルマスの判断
「マイさん。諦めてはダメです。このままではマイさんは連中に連れ去られるか殺されてしまいます。」
「え?!なんで?!お姉ちゃんなんで殺されちゃうの?!」
シュウ君がびっくり仰天して声を荒上げた。周りのハンターがチラッとこっちを見る。
「シュウ君の魔物さんは悪人になるように仕立てられているのです。」
「うーん?」
「皆んな私が人を殺したと騙されてるの。」
「え?!お、お姉ちゃん…」
「勿論していないよそんなこと。ただ周りが騙されてるだけ。」
「なんで?」
なんで?と言われても困る。私主観で言えば人間は馬鹿だから、で終わりである。問題起こした狂犬は殺処分である。理由は問わない。飼い主が犬に対し虐待をしていたとしても。それだけである。
「マイさん。あのハンター達は本当に植物と会話出来るのですか?私としてもちょっと信じられなくて。」
「出来るわけないじゃないですか。私のツルでそんなこと出来るなら直ぐにシュウ君やミサさんを会話出来るようにしますよ。植物達も言っていないことを言ったかのように振る舞われてカンカンですよ?お聞きさせたいぐらいです。」
まあ、今の観葉植物達の発言は私を悪人にしようと仕立てる人間共に対する悪態であるが。あるいは私を心配する声。打開策を考えてくれている植物達もいるが、まだ検討中らしい。というより、植物達はあくまで聞いた内容を伝達しているだけである。人間が簡単に出来る思考ということ自体が不可能と思われる。とは言え今更感ではあるが、植物達は生き物が発した鳴き声や言葉をある程度理解出来るとのこと。まあ、植物などそれこそ生きようと思えば何百年と生きれるし、世代交代とかもしている。発する手段はないが、聞くことなどいくらでも出来るのであった。最もこの前提条件にマイが疑問を抱き植物に聞くのはまだまだ先である。マイにしてみれば150年生きた上での常識となってしまっていた。
「でしたらやっぱり、彼らが植物と会話出来ないということを証明すれば良いと思います。そうすれば彼らの証明が全て嘘になりますし、一気に不利になるかと。」
「うーん。」
冷静に考えればミサさんのいう通りである。しかし、じゃあどうすれば良いか。それが全くわからなかった。植物に証明させることは不可能。私が誰かをツルで巻いてみて本当に喋れるようになるかみたいな検証をしたところで嘘八百で流されるだろう。現にシュウ君はそれをやられている。
「お前達。」
ギルマスから声が掛かった。私は構える。
「ギルマス!ギルマスは彼らの発言を信じるのですか?!」
ミサさんが仲介に入った。私は人見知りもある。しかもこの状況である。ミサさんがものすごく心強かった。
「彼らの言い分もある。今、ハンターを2人某森に行かせている。彼らを保護すれば何かわかるかも知れぬ。」
「奴らも彼らのグルですよ?それを信用するんですか?」
「それはわしがが決める。ただ、そいつらの証言も聞かないと判断が出来ぬのじゃ。」
ギルマスはあくまで公平を貫くようである。
「だったら私が代弁します。先ほど私が事情聴取しました。」
ミサさんが私の代わりに代弁する。まず襲撃時間が早朝ではなく深夜であること。場所も街道ではなく森の中。とりわけ、街道で襲ったのではなく森の中に入ってきて襲ってきたから反撃しただけと言うこと説明した。
「おいおい。何出鱈目なこと言っているんだ?」
ミサさんがある程度ギルマスに話をしていると、某ハンターが介入してきた。
「こっちには植物の証言があるんだぜ?そんなこと全部嘘だって文句言ってやがる。まあ、そんな魔物の意見聞くよりやられた俺らの仲間の方が信用度は高いだろう?なあ、ギルマスさんよ。」
「貴方こそ本当に植物の声が聞こえているんですか?マイさん曰く、貴方こそ出鱈目言っているって植物が激怒していると言っていますよ?」
「おやおやお嬢さん?魔物なんて人間からしてみれば害そのものなんだよ?それをわざわざ魔物の方を信じるっていうのか?ギルマス。その受付嬢クビにした方が良いんじゃないか?そんな受付嬢じゃこのギルド終わっちまうよ。」
追々わかることではあるが、ミサさんもムサビーネ夫人同様魔物オタクである。それゆえ、魔物に対する知識や異常行動における対処法…弱点や、死体解体するときの知識等がこのギルド内でずば抜けているのであった。ムサビーネ夫人とは違い誰かに教育するなんてことはしていなかったが、たまに裏でムサビーネ夫人の講義を聞いている時もある。この某ハンターらはそういう人さえも敵に回しているのだった。




